「インフルエンザって何?」シンプルに理解するインフルエンザの基本

インフルエンザの名前の由来

「インフルエンザ」という名前は、イタリア語の「influenza」から来ており、直訳すると「影響」を意味します。この名前は、かつてこの病気が星の影響で起こると考えられていたことに由来します。

インフルエンザの流行とみられるものが紀元前にも記録があり、その後も現代にいたるまで幾たびもの流行がありました。

インフルエンザと風邪の違い

インフルエンザは、毎年冬に流行する呼吸器感染症の一つです。この病気は、インフルエンザウイルスによって引き起こされ、高熱、咳、筋肉痛などの症状を引き起こします。特に、高齢者や持病を持つ人々には重症化しやすく、合併症を引き起こすこともあります。一方、風邪はのどの痛みや鼻水が中心で、全身症状は少ないです。インフルエンザは風邪より悪質な感染症です。

症状 かぜ インフルエンザ
症状の始まり 徐々に 突然
発熱 まれ よくある
痛み わずかな よくある
悪寒 めったにない よくある
だるさ 時々 よくある
くしゃみ よくある 時々
鼻づまり よくある 時々
のどの痛み よくある 時々
胸の不快感、咳 軽度から中等度 よくある
頭痛 まれ よくある
引用など

風邪かインフルエンザか?症状の違いをまとめ、https://www.familiesfightingflu.org/flu-facts-what-is-flu/から翻訳して引用

インフルエンザの合併症

大多数の人々はインフルエンザに感染した場合、咳が長引くことはまれにありますが数日から1週間程度で回復します。しかし、一部の人々はインフルエンザの結果として合併症を発症し、これにより生命を脅かす状態や死に至ることがあります。

軽度の合併症の例としては、副鼻腔感染や耳の感染があります。重症の合併症としては、肺炎が挙げられます。これはインフルエンザウイルスの感染だけでなく、インフルエンザウイルスと細菌の共感染によっても発症することがあります。

その他の重症の合併症には、心筋炎(心臓の炎症)、脳炎(脳の炎症)、筋炎(筋肉組織の炎症)、多臓器不全(例: 呼吸器と腎臓の不全)などがあります。

インフルエンザウイルスの感染は、体内での極度の炎症反応を引き起こすことがあり、これにより敗血症(体の感染に対する生命を脅かす反応)が発症することがあります。

インフルエンザは、慢性の医学的問題を悪化させることもあります。例えば、喘息の患者はインフルエンザに感染すると喘息発作を起こすことがあり、慢性心疾患の患者はインフルエンザによってその状態が悪化することがあります。

リスクが高い人々

一部の人々は感染した場合に重症の合併症を発症するリスクが高まります。

これには、65歳以上の人々、特定の慢性的な医学的状態(例: 喘息、糖尿病、心疾患)を持つ人、妊娠中の人、5歳未満の子供(特に2歳未満)が含まれます。

インフルエンザの流行のパターン

インフルエンザは、日本では、11月から5月にかけての冬季に流行し、特に1月から3月がピークです。しかし、夏季にも発生することがあります。インフルエンザは世界中で数百万人の感染者を出し、数万人の死者を出すことがあります。特に、新しい型のインフルエンザウイルスが出現すると、パンデミック(世界的な大流行)を引き起こすことがあります。

インフルエンザウイルスは湿度と温度に弱いため、秋から冬にかけて流行します。そのため北半球と季節が逆の南半球では4月から9月にかけてインフルエンザが流行します。

インフルエンザウイルスの特徴

インフルエンザはウイルスに感染することによっておこる病気です。インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3つの型があり、特にA型とB型が流行的に広がります。A型は、HAとNAという糖蛋白を持ち、これらが免疫の標的となります。A型ウイルスは、数年ごとに大きな変異を起こすことがあり、これが大流行の原因となります。新しい糖蛋白の変異に対して上手く体の免疫が働かないためです。また、ウイルスは毎年のように少しずつ変化するため、流行が繰り返されます。

ちなみにHA(ヘマグルチニン)とはインフルエンザウイルスが人の細胞に侵入するときに働く蛋白質で、NA(ノイラミニダーゼ)というのが人の細胞内で作られてしまったインフルエンザウイルスが人の細胞を飛び出すときに働く蛋白質で、この二つの蛋白質の特徴がウイルスの分類に使われています。

インフルエンザの感染経路

インフルエンザウイルスは、感染者の咳やくしゃみによって飛沫として放出され、他の人々がこれを吸い込むことで感染します。また、ウイルスが付着した物に触れた後、手を顔に持っていくことで感染することもあります。

インフルエンザの予防方法

インフルエンザの予防には、以下の方法があります:

  1. ワクチン接種:毎年のワクチン接種が最も効果的な予防方法とされています。
  2. 手洗いと咳エチケット:日常的な手洗いや、咳やくしゃみをする際のマスクの使用など、基本的な衛生習慣を守ることで感染リスクを低減できます。
  3. 人混みを避ける:流行期には、できるだけ人混みを避けることが推奨されます。

インフルエンザの治療薬

インフルエンザの治療には、以前は対症療法が中心でした、2000年から翌年にかけて、A型とB型の両方に効果があるノイラミニダーゼ阻害薬(ザナミビル、オセルタミビル)が医療用医薬品として発売されました。これらの薬は、早期に使用することで症状の軽減や病期の短縮が期待できます。

解熱や鎮痛をする時は、小児にはアスピリンや特定の非ステロイド系解熱剤の使用は避けるべきで、アセトアミノフェンがより安全です。重症化する場合、抗菌薬の使用や専門医療機関での治療が必要となることもあります。

現在は、短期間で済む飲み薬、吸入する薬、点滴がありいろいろなインフルエンザ治療薬があります。

過去の流行

1900年ころから科学的な調査が残っています。

流行の特徴日本国内感染者数国内死者数
1918スペインかぜ(H1N1)が出現。世界で甚大な被害2400万人39万人
1957アジアかぜ(H2N2)が発生65万人5700人
1968香港型(H3N2)が発生13万人1000人
1977ソ連型(H1N1)が発生不明不明(少なかった)
2009新型インフルエンザ(A/H1N1)の世界的流行(パンデミック)約2400万人約1900人¹
2013A/H7N9ウイルスが中国で初感染1568例616例²
2017A/H3N2ウイルスが主に流行約3000万人約3500人³
2019A/H1N1pdm09ウイルスが主に流行約1300万人約2000人⁴
2020新型コロナウイルス影響でインフルエンザ流行少なし約6万人約100人⁵
引用など

インフルエンザ流行まとめ、 (1) インフルエンザ過去10年間との比較グラフ(第41週 10/27更新). https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-V813-idsc/nap/130-f1u-10year.html. (2) 世界のインフル死者数、年29.1万─64.6万人=米疾病対策センター. https://jp.reuters.com/article/influenza-estimates-idJPKBN1E80VS. (3) 「インフルエンザ死亡数」は何を意味する? 感染が死因でなく …. https://www.asahi.com/articles/ASPD37GG6PD3TIPE016.html. (4) IASR 43(11), 2022【特集】インフルエンザ 2021/22シーズン. https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flu-iasrtpc/11625-513t.html. (5) インフルエンザに関する報道発表資料 |厚生労働省 - mhlw.go.jp. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html.

世界のとりくみ WHO、CDC、厚生労働省の見解

過去にない新型インフルエンザのパンデミックが世界的に警戒されています。当時の世界人口の三分の一が感染したと言われるスペイン風邪のように世界中で大きな被害を出す恐れがあるからです。

新型コロナウイルスのパンデミックが2019年に起こったばかりです。

世界保健機関(WHO)やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)、日本の厚生労働省などの機関も、インフルエンザの予防や治療に関するガイドラインを発表しています。これらの機関は、インフルエンザの流行を予測し、適切なワクチンの提供や、感染拡大を防ぐための対策を提案しています。

まとめ

インフルエンザは、毎年多くの人々を苦しめる感染症ですが、適切な予防策を講じることで、感染リスクを大幅に減少させることができます。

特に、ワクチン接種は最も効果的な予防策とされているため、毎年の接種を心がけることが重要です。

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