保険証の有効期限迫る!薬剤師が語る新時代の医療パートナー、マイナ保険証

マイナ保険証を活用されているでしょうか?令和6年12月2日より従来のカードタイプや紙の保険証は新たに発行されなくなります。今手元にある保険証はその有効期限または最長翌年12月1日までが最後となり、保険確認がマイナ保険証に一本化されます。

まだまだ賛否両論なマイナ保険証ですが、マイナ保険証を活用することで薬局で受ける調剤の快適さ、また安全性にメリットがあるので解説します。

マイナ保険証の普及は、患者にとっても医療従事者にとっても医療の質を向上させる大きな一歩となり患者にとってより良い医療の環境が整備されると思います。

保険証はまだ使えるけど、カウントダウン開始!

いよいよマイナ保険証が本格始動です。経過措置期間は各保険証により異なりますが最短であと8か月、最長で12か月です。

2024年12月2日以降、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」への移行が進められ、現行の健康保険証は新たに発行されなくなります。ただし、既存の健康保険証は以下の期間まで使用可能です。

表:2024年12月以降の保険証の有効期限

対象者 保険証の利用可能な期間
協会けんぽ 中小企業のサラリーマン 有効期限が記載されていない場合2025/12/1まで
健康保険組合 大企業のサラリーマン 有効期限が記載されていない場合2025/12/1まで
共催組合 公務員 有効期限が記載されていない場合2025/12/1まで
国保(国民健康保険) 自営業者、年金生活者、 非正規雇用者等 2025/7/31または2025/8/31
後期高齢者医療保険制度 75歳以上 2025/7/31または2025/8/31

なお、転職や引っ越しなどで保険資格が変わった場合や、保険証の有効期限が過ぎた場合、マイナ保険証の利用登録を行っている方はマイナ保険証での受診が必要となります。マイナンバーカードを持っていない方や、マイナ保険証の利用登録をしていない方は、保険者から送付される「資格確認書」で受診が可能です。

また医療機関でマイナ保険証の受付機が壊れていた時のために資格情報のお知らせも携帯するとなお良しです。

詳細や最新情報については、デジタル庁を「よくある質問:マイナンバーカードの健康保険証利用について」ご参照ください。

初めてかかる薬局での待ち時間の時短、薬剤師とのやりとりの快適さ

かかりつけでは無い薬局を利用する時に、そこの薬剤師に自分の治療履歴などに関して色々聞かれ、また自分のことを一から話さなければならないのか・・・と億劫に感じたことはありませんか?

薬局にてマイナ保険証で受付をして情報提供に同意すると、これまでの処方箋による調剤の履歴が薬剤師と瞬時に共有できます。後の述べますが直近のものは見れないものの、過去2か月分以前のものは共有できます。

薬局サイドからすると、従来は複数の医療機関を受診している患者の調剤歴を把握するには時間がかかり、場合によっては確認のために患者に聞く必要がありました。マイナ保険証の利用によって、こうした情報が薬剤師に一括ですぐ届きます。調剤履歴の情報が薬局のPCにドンと一括で入ってくるので、薬剤師側のメモをする、医薬品の情報を調べるなどのチェックにかかる時間が短縮されます。

薬局での待ち時間が軽減されるので患者にとっては大きなメリットです。

実は薬の取り揃え以上に、飲み合わせに気を付けなければいけない薬を調剤する時にはここに時間がかかってしまいます。併用薬の情報収集をふくめて”調剤”なので安全性のためここをカットできない事情があります。処方箋に基づく調剤作業も効率化されスムーズな対応が可能となります。

薬剤師は調剤歴からさまざまな情報を読み取り、本当にしなければいけない質問にしぼった対応ができます。

最近こんなことがありました。初めて来局した患者さん。お薬手帳を持っていないし持ったことがない。ところが、マイナ保険証による情報提供に同意したので調剤履歴が見れました。他の病院から処方された眠気覚ましを今まで飲んでおり、今回は効き方が違う初めて飲む眠気覚ましが処方されました。ここで診断名が分かり、繰り返し同じ系統の薬を飲んでいたのが分かるのでそれ前提で話をすすめたので会話ができました。前回までの薬との効き方の違いと注意点について患者さんにとって新しい情報に重点を置くことができました。

分かっていることは繰り返し聞きたくないはずですから、時短にもなり安心安全な対応ができたと思います。スムーズに対応できたと思います。

マイナ保険証での情報共有は調剤だけでなく診療記録と検診データも

マイナ保険証の特長は、処方箋による調剤履歴が複数の医療機関や薬局をまたぐ情報が時系列で保存されている点です。

診療記録の一部が参照できることも、お薬手帳とは大きく異なるマイナ保険証の特長の一つです。診療記録には 放射線治療、在宅療養 の一部、透析、手術、短期滞在の入院などがありこれらも記録されます。また40歳以降の特定検診も記録されるので血液検査等を含めた経過が確認できます。共有される情報を以下の表にまとめました。

表:マイナ保険証で医師・薬剤師に届く情報

閲覧できる期間 内容 備考
医療機関名、受診歴、診療年月日、診療行為名など 2022年6月以降のデータ 診療行為名は、 放射線治療、画像診断、病理診断、医学管理等、在宅医療のうち在宅療 養 指導管理料、処置のうち人工腎臓、持続緩徐式血液濾過、腹膜灌流、手術(移植・輸血含 む)、入院料のうち短期滞在手術等基本料が対象 入院中の情報は一部であり全てではない
調剤の履歴 2022年9月以降のデータ 医療機関・薬局名、 調剤年月日、医薬品名、成分名、用法、用量 な ど 医療機関ごとの飲み合わせチェック機能はない
特定検診情報 2020年度以降5年分 受診者情報、特定健診結果情報、質問票情報、服薬・喫煙歴等、メタボリックシンドローム基準の該当判定、特定保健指導の対象基準の該当判定 特定検診はメタボ検診とも呼ばれ、40~74歳が対象であり、若年者の記録はない

薬局の薬剤師にとってはこれらの情報は長らくブラックボックスであり聞かないとわからないポイントでした。検診データなども含めた幅広いアドバイスも期待できます。

知られたくない受診歴等がある人などはお薬手帳を医療機関ごとに分けがちで、医師や薬剤師にもう一方を見せないことで薬の飲み合わせを見過ごす危険性もあります。

マイナ保険証なら他人に知られたくない治療歴も、検診で得た検査値もわざわざ持ち歩く必要はありません。マイナ保険証に対応した医療機関の専用のPCでしか情報は参照できませんし、医療従事者には守秘義務がありますので、マイナ保険証で安全に伝えられます。

お薬手帳では患者自身や家族が記録を保管する必要があります。もちろん室内や外出先での紛失の危険性もあります。手帳を薬局に持って行き忘れることもあるでしょう。

体に合わない薬があった人は特にマイナ保険証を!併用薬チェックに役立つ

薬剤師が患者の情報を迅速に把握できることで、薬の飲み合わせが悪いものや再投与が禁忌となる薬についての安全確認がよりスムーズに行えるようになります。マイナ保険証により調剤の履歴が薬局のレセコンに入ります。レセコンに入っているプログラムを動かせば、すぐに飲み合わせに注意が必要な薬の組み合わせがないかチェックできます。

新患アンケートや過去の聞き取り情報を元にアレルギー反応があった薬を把握しておけば、それもレセコン(薬局の調剤用のプログラムの入ったパソコン)でチェックできます。薬物のアレルギー反応は二回目以降の服用で特に症状が重く出ることが多いので安全性が高まります。

加えて過去に効果がなかった薬を再度処方されるリスクが軽減されるため、患者の治療効果が高まります。マイナ保険証➡レセコン➡薬剤師という一連のチェックによるこのシステムによって、重複投薬や併用禁忌の薬剤の処方を防ぐだけでなく、過去に服用した薬で副作用が発生した場合などの情報も簡単に確認できます。

特に、高齢者や慢性疾患を持つ患者のようにたくさんの薬を併用するケースでは、マイナ保険証による情報提供同意はオススメです。お薬手帳が補助的な役割を果たす一方で、マイナ保険証があれば薬剤師は患者の過去の処方情報をより網羅的に把握し、必要に応じて医師と連携することも容易になります。

マイナ保険証の弱点をお薬手帳との併用で補い最強ツールへ

ではマイナ保険証にて情報提供に同意すれば、リアルのお薬手帳が不要と思われる方もいらっしゃるかもしれません。が、今のところお薬手帳も持つのがオススメです。各ツールの特徴を下記にまとめました。

表:マイナ保険証とお薬手帳の情報のすばやさ比較

ランキング 情報のすばやさ 医療機関との情報共有のしやすさ お薬に関連した追加機能・情報量 費用
1位 お薬手帳 即時 手書きやコピーになるが可能 追加機能はないが書き込めば情報量は増やせる 手帳代は有料のこともある
2位 電子お薬手帳 即時(QRコード読みよりか連携機能なら) しづらい 血圧記録・服用時間アラート・オンライン指導アプリ機能等メーカーごとに特色があり追加機能が豊富 無料がほとんど
3位 マイナ保険証 当月分は見れない、かつ先月分は11日まで見れない デジタルデータで大量かつ即時連携可能 なし、だが高額療養費制度が即時利用できる(上限額以上は窓口負担無くなる) 無料

マイナ保険証の弱点として電源喪失やシステムトラブルに弱いことが挙げられます。つまり、受付できる端末やシステム全体が動いていることが前提とされているところです。病院や薬局のマイナ保険証の受付装置が故障している場合や、災害でそもそも電気が通っていないときは利用ができません。

もう一つのマイナ保険証の弱点は、情報の速報性がお薬手帳に劣る点です。

マイナ保険証で見ることができる調剤の履歴は11日以降に前月分が見られるようになるサイクルで更新されますので、当月の分は見ることができません。

つまり、前月いっぱいから10日までの分はマイナ保険証では見ることができず、当月分は全く見ることができないということになります。

実は電子処方箋にて調剤をしてもらった時はすぐに見ることができますが、電子処方箋の普及率がまだまだ低いので情報が遅いのは弱点と言えるでしょう。

今のところ筆者が思う最適解は、お薬手帳は使い続けてマイナ保険証を利用することです。

直近の情報はお薬手帳で、過去分はマイナ保険証を参照するという使い方が今はおススメです。電子お薬手帳が各社から提供されています。その中には調剤履歴をすぐに電子お薬手帳に共有するサービスもあります。お薬手帳+電子お薬手帳+マイナ保険証があれば今のところ穴はないでしょう。見過ごせないのはこれらのサービスはほぼ全て無料である点です。

使って金銭的には費用は生じず、利便性や薬物治療でのメリットが多いにあると感じています。
参考↓

マイナンバーカードの健康保険証利用について|厚生労働省HP

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