薬の値段が毎年変わる理由とは?調剤報酬改定の背景を解説

 薬局でもらう薬の値段が毎年変わる理由について、疑問に思ったことはありませんか?この記事では、医療を受ける時にかかる値段が変わる背景やその影響について詳しく解説し、患者や医療機関にどのような影響を与えるのかを解説します。

医療は大きくわけて二つ

 医療は、保険適応となり最大で3割負担となる保険医療と、保険適応とならず全額負担となる自由診療に分けられます。

 保険適応となる医療にかかる料金は、法に基づき厚生労働大臣が決めます。具体的には、保険適応となる治療などの項目と点数を決めます。点数は1点10円で計算され、保険ごとの負担割合で自己負担が課されます。

基本は3割の負担です。公費や助成により自己負担はより少なくなります。

診察、治療、調剤の値段は2年に一度変わる

診療報酬とは、医師が行う医療サービスに対して支払われる料金のことです。例えば、診察、手術、検査などの費用が含まれます。

調剤報酬とは、薬剤師が薬を調剤する際に支払われる料金のことです。薬の調剤、服薬指導、薬歴管理などの費用が含まれます。

診療報酬と調剤報酬は、日本の医療制度を支える重要な料金体系です。これらの料金は、経済状況や医療技術の進展に対応するため、2年に一度見直されます。この見直しは、政府が行い、適正な医療費を維持しながら、質の高い医療サービスを提供するために行われます。

薬の値段は毎年4月に変わる

薬価とは保険調剤の際に計算される薬の値段のことです。
この薬価は厚生労働省が決めています。

薬価は毎年4月1日に代わり、これを薬価改定と言います。

薬価改定は薬価調査を基に行います。この調査では、製薬会社や薬局からデータを収集し実際に取引される価格と薬価を比較して、新しい薬価を決めます。

薬の製造原価や流通コスト、需要と供給のバランスなどが考慮されます。

基本的には薬価が下がりごく一部の薬価が上がります。

高齢化の影響は大きくなりつつある

 医療費全体は、国民全員が歳をとることでどんどん増えていきます。老いにより様々な病にかかるようになり医療費がかかる為です。その自然増より医療費の伸びを抑えるため、各種報酬と薬価の改定が行われます。

 <医療の見直しをしていく理由、給与の圧迫保険料の増加>


 行き届いている治療の報酬は減らして、行き届いていない治療には報酬をつけます。医療を受ける国民の健康を守ろうという取り組みと言えます。

が、高齢化による医療費の自然増は許さないので、医療が高度になる反面、医療従事者の雇用を増すほどの報酬は付いてきません。

令和6年度の社会保障関係費は前年度(36.9兆円)から+8500億円程度の37.7兆円。経済・物価動向等を踏まえつつ、社会保障関係費の実質的な伸びを高齢化による増加分に収める方針を達成(年金スライド分を除く高齢化による増は+3700億円程度、年金スライド分の増は+3500億円程度)

令和6年度社会保障関係予算のポイント 財務省HPより

調剤報酬改定の影響 ~患者(利用者側)は良いことが多い~

 調剤報酬改定は、患者にとっては費用は大きく変わらず医療の質が良くなることが期待されます。

一部の紹介状が必要な医療機関を除き、どこに受診しても3割負担以下で治療や投薬を受けられます。
海外に比べて非常に手厚い状況です。

 近年起こった変化として、

 マイナ保険証により過去の治療薬の履歴を薬剤師に知らせることで、薬の飲み合わせをよりチェックしてもらえます。そのことで注意が必要な医薬品に関しての説明を受けやすくなること、在宅医療の相談など薬局で受けられるサービスが広がりつつあります。

 一方、医療機関にとっては、調剤報酬改定前と同じことをしていては収入が減少する可能性があります。

 医療機関は調剤報酬が増額されたサービスや新しく報酬がついたサービスを行えばこれを最小限にできます。医療機関はサービスの向上に努める必要があります。ただし国内の多くの産業が直面する人手不足は医療についても例外ではありません。人件費は高騰しつつあります。加えて各種コスト上昇分を吸収するだけの調剤報酬を稼ぐ必要があり、より高いレベルの人材が求められ、これまでにない組織の改革を迫られることになります。

 制度の進歩についていけず、、廃業あるいは譲渡する医療機関も出てくるかもしれません。

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