眠気防止薬を安全に使うためのポイントと仕事中の対策

眠気防止剤

製品名 エスタロンモカ内服液 エスタロンモカ12
特長 コーヒー風味の内服液 エスタロンモカ錠にビタミンB6とB12を追加して用量上げた製剤
有効成分 <30ml1本中>カフェイン水和物 150mg、チアミン塩化物塩酸塩 10mg、ピリドキシン塩酸塩 5mg、グリセロリン酸カルシウム 20mg、ニコチン酸アミド 15mg、タウリン 1,000mg <2錠中> 無水カフェイン200mg、チアミン硝化物(ビタミンB1硝酸塩)5mg、ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)5mg、シアノコバラミン(ビタミンB12)7.5μg
包装 20ml2本 20錠
効能効果 眠気・倦怠感の除去 睡気(ねむけ)・倦怠感の除去
価格リンク
用法用量 成人(15才以上)1日1回1瓶(30mL)を服用してください。 次の1回量を1日2回を限度として服用してください。 服用間隔は6時間以上おいてください。 [年齢:1回量] 成人(15才以上):2錠 15才未満:服用しないこと
規制区分 第3類医薬品 第3類医薬品
使用上の注意 1.次の人は服用しないでください  (1)胃酸過多のある人。  (2)心臓病、胃潰瘍の診断を受けた人。 2.本剤を服用している間は、次の医薬品を服用しないでください  他の眠気防止薬 3.コーヒーやお茶等のカフェインを含有する飲料と同時に服用しないでください 4.短期間の服用にとどめ、連用しないでください 1.次の人は服用しないでください  (1)次の症状のある人。 胃酸過多  (2)次の診断を受けた人。 心臓病、胃潰瘍 2.本剤を服用している間は、次の医薬品を服用しないでください  他の眠気防止薬 3.コーヒーやお茶等のカフェインを含有する飲料と同時に服用しないでください 4.短期間の服用にとどめ、連用しないでください

眠気防止薬を安全に使うためのポイントと仕事中の対策

眠気防止薬の正しい使い方と安全なポイント、仕事中の眠気対策を薬剤師がわかりやすく解説します。副作用や受診の目安も紹介します。

眠気防止薬の基本と安全な使い方

眠気防止薬は、夜勤や長時間運転、急な眠気など、どうしても眠気を抑えたい場面で一時的に使われるお薬です。主成分として最も一般的なのが「無水カフェイン」で、市販薬には1回あたり100~200mgの無水カフェインが含まれていることが多いです。
軽い眠気には100~200mg、夜勤などしっかり目を覚ましたい場合は200mgが目安とされています。効果は通常3~6時間ほど持続します。

ただし、15歳未満の方や妊娠中の方には市販の眠気防止薬の使用は推奨されません。カフェインは食品にも多く含まれているため、そちらの摂取も含めて過剰にならないよう注意が必要です(EFSA, 2015)。

安全に使うためには、1日の総カフェイン摂取量を400mg以下、1回の服用量は200mg以下とし、服用間隔は6時間以上空けることが大切です1。ただし医師により処方された場合はそれ以上の用量で使う可能性もあります。妊娠中の方は1日200mg以下に抑えることが推奨されています。が、少なければ少ないほどより安全でしょう。


また、連続使用については製品ごとの添付文書やガイドラインに従い、連用は最長7日間、できれば週3回以内にとどめましょう。午後2時以降の服用は夜間の睡眠に影響を与えるため、できるだけ午前中や昼過ぎまでの使用がおすすめです。

眠気が続く場合は医療機関へ

もし眠気が2週間以上続いたり、日常生活に支障が出ている場合は、単なる一時的な眠気だけでなく、睡眠障害などの病気が隠れている可能性も考えられます。
また、いびきや無呼吸がある方、自動車事故歴がある方、あるいはカフェインを400mg以上摂っても効果がない場合も、早めに医療機関にご相談ください。睡眠専門の外来か心療内科、精神科のいずれかを受診してください。

カフェインの副作用と濫用リスク

カフェインには動悸・血圧上昇・不安・手の震え・不眠などの副作用が見られることがあります。特に500mgを超える過剰摂取では、これらの症状が出やすくなります。まれに、けいれんや幻覚、意識障害などの重篤な中毒症状が起きることもありますので、異常を感じた場合は速やかに医療機関を受診してください。

心臓病や高血圧、不眠症、緑内障、胃潰瘍などの持病がある方は、眠気防止薬の使用前に必ず医師または薬剤師にご相談ください。全てが絶対的な禁忌ではありませんが、ご自身の体調やお薬との相互作用を確認することが大切です。
妊娠中に高用量を摂ると流産や低出生体重児のリスクが報告されているため、妊娠中の方は特に注意が必要です。

眠気防止薬を連日使い続けると、体が慣れて(これを「耐性」といいます)効果が弱くなることがあります。耐性ができると、つい用量を増やしてしまいがちですが、副作用のリスクも高まります。急に使用をやめると、頭痛や強い疲労感など「離脱症状」(薬をやめたときに体が感じる不快な症状)が現れることもあるため、連用は避けるようにしましょう。

医療用刺激薬との違い

市販のカフェイン製剤は、一時的な眠気対策のために使用されますが、医療用の刺激薬(例:モダフィニルなど)は、ナルコレプシーなど特定の疾患に対して医師の厳格な管理のもとで処方される薬です。これらは覚醒作用が強力で、自己判断で市販薬の代わりに使用することは法律上も認められていません。また、乱用や依存のリスクもあるため、医療用刺激薬は医師の指示に従った適切な管理が必要です。
市販の眠気防止薬は、あくまで急な眠気や一時的な状況での補助的な役割にとどめ、必要なときだけ使うようにしましょう。

眠気防止薬の上手な使い方と保管の注意点

眠気防止薬を安全かつ効果的に使うには、推奨量や服用間隔、連用制限を守ることが重要です。

  • 1回の服用量は200mg以下
  • 1日の総カフェイン摂取量は400mg以下
  • 服用間隔は6時間以上空ける
  • 連続使用は最長7日間、できれば週3回以内に抑える

これらは、カフェインの耐性や副作用を防ぐための大切なポイントです。

午後2時以降の服用は避ける

カフェインは摂取後3~6時間ほど効果が続きます。午後2時以降に服用すると、夜の寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下したりすることがあるため、できるだけ午前中や昼過ぎまでに使いましょう。夜勤などやむを得ない場合は、短時間の仮眠と組み合わせることも効果的です。

食品に含まれるカフェイン量のめやす、カフェイン含有製品との重複に注意

エナジードリンクやコーヒー、紅茶、チョコレートなどにもカフェインが含まれています。知らずに摂取量が増えてしまうことがあるので、パッケージ表示をよく確認し、1日の総摂取量が400mgを超えないように気をつけてください。また、他の市販薬にもカフェインが含まれている場合があるので、併用時は必ず成分を確認しましょう。22

  • コーヒー(ドリップ):約 60 mg/100 mL(マグ1杯≒90 mg)
  • 玉露160 mg/100 mL、紅茶30 mg/100 mL、煎茶・ウーロン茶20 mg/100 mL
  • エナジードリンク・眠気覚まし飲料:製品1本あたり36〜150 mg、100 mLあたり最大300 mgと幅が大きい
  • チョコレート:高カカオ含有の商品(99%) 120mg/100g、普通のチョコレート(33%) 28~36mg/100g
  • 安全な上限:食品安全委員会は、健康な成人で1日400 mg以下、妊婦で200 mg以下を推奨

コーヒー2杯とエナジードリンク1本でも400 mgに近づくため、眠気防止薬と併用する日は飲料・菓子の摂取量を必ず確認しましょう。チョコレートは高カカオ含有のものを大量に食べないようにしましょう。

誤用・誤飲防止のための保管方法

眠気防止薬は、直射日光を避けて保管してください。特に小児の手が届かない、鍵付きの戸棚などにしまうことで、誤飲や誤用を防げます。
また、高齢者や認知症のある方がいるご家庭でも、誤用や誤飲につながらないよう管理を徹底しましょう。

眠気防止薬を使う際のチェックポイント

眠気防止薬を使うときは、次のポイントを守ることで安全性が高まります。

  • 1回200mg以下、1日400mg以下のカフェイン摂取量を守る
  • 服用間隔は6時間以上空ける
  • 連用は最長7日間、週3回以内にとどめる
  • 午後2時以降の服用は避ける
  • 他のカフェイン含有製品との併用に注意する
  • 妊娠中、心疾患・高血圧・不眠症・緑内障・胃潰瘍の方は必ず医師や薬剤師に相談する
  • 小児や高齢者・認知症の方の誤飲・誤用防止のため、適切に保管する

これらを守ることで、眠気防止薬のリスクを減らし、安全にセルフケアができます。

仕事中の眠気対策―薬以外の方法も組み合わせよう

眠気防止薬は一時的な覚醒維持に役立ちますが、薬だけに頼らず、生活習慣や環境を整えることもとても大切です。特に仕事中の眠気対策には、薬以外の方法も積極的に取り入れてみましょう。

短時間仮眠の活用

昼食後から15時までの間に、15~20分程度の短い仮眠をとることで脳がリフレッシュされ、眠気や疲労感が大きく軽減されることが科学的にも示されています。昼休みや休憩時間に静かな場所で目を閉じるだけでも効果がありますが、20分~30分以内に収めるようにしましょう。それ以上とるとぼんやりした感じが残るかもしれません。

高照度光曝露でスッキリ

高照度光曝露とは、明るい光を浴びることです。これにより体内時計が調整され、眠気が和らぐと考えられています。朝や昼休みに外で日光を浴びたり、高照度の照明を使ったりするのがおすすめです。
オフィスワークの方は、窓際に座る、短時間でも外に出るなど、意識してみてください。

こまめなストレッチや歩行

長時間同じ姿勢で作業を続けると、血流が悪くなり、眠気も増しやすくなります。1~2時間ごとにストレッチや軽い歩行を挟むことで、全身の血流が改善し、頭もすっきりします。デスクワークの方も、トイレやコピー機まで歩くなど、意識的に体を動かしましょう。

バランスの良い昼食と水分補給

食事内容も眠気に影響します。炭水化物だけや脂っこい食事は、食後の眠気を強める原因になります。タンパク質や野菜をバランスよく取り入れた昼食を心がけましょう。
また、水分が不足すると集中力が下がりやすくなるので、こまめな水分補給も重要です。

薬以外の対策も大いに活用しよう

これらの非薬物的な対策は、科学的な根拠があり、さまざまな論文で効果が報告されています。カフェインだけに頼らず組み合わせて活用することで、より安全かつ効果的に仕事中の眠気をコントロールできます。

まとめ―眠気防止薬は「必要なときだけ」正しく使いましょう

眠気防止薬は夜勤や長距離運転などの一時的な眠気対策に役立つお薬ですが、使い方を誤ると健康被害につながることがあります。カフェインの摂取上限や服用間隔、連用制限などのガイドラインを守り、安易な使用や自己判断での増量は避けることが大切です。
また、薬だけに頼らず、仮眠や高照度光曝露、ストレッチ、食事改善、水分補給など非薬物的な対策も積極的に取り入れてください。

眠気が長期間続いたり、日常生活に支障が出ている場合は、自己判断せず医療機関を受診しましょう。無水カフェインは既定の用法用量を超えての濫用はしないようにしましょう。用法用量を超えれば不快で危険な副作用が出やすくなります。眠気防止薬は「必要なときだけ、正しく使う」ことを心がけ、安全なセルフケアで健康的な毎日を目指しましょう。薬剤師として、みなさんの安全な健康管理を心から応援しています。

  1. Carlo Agostoni, Roberto Berni Canani, Susan Fairweather-Tait, Marina Heinonen, Hannu Korhonen, Sébastien La Vieille, Rosangela Marchelli, Ambroise Martin, Androniki Naska, Monika Neuhäuser-Berthold, Grażyna Nowicka, Yolanda Sanz, Alfonso Siani, Anders Sjödin, Martin Stern, Sean (J.J.) Strain, Inge Tetens, Daniel Tomé, Dominique Turck and Hans Verhagen.(EFSA), Scientific Opinion on the safety of caffeine[Internet], ESFA journal, 27 May 2015[cited 31 May 2025], 13(5),4102, Available from: https://doi.org/10.2903/j.efsa.2015.4102↩︎
EFSA European Food Safety Authority/欧州食品安全機関

EFSA(European Food Safety Authority/欧州食品安全機関)は、EU 域内の「食品と飼料の安全確保」を専門に担う独立機関です。

  • 設立:2002 年、EU の一般食品法(Regulation (EC) No 178/2002)に基づいて発足
  • 所在地:イタリア・パルマ
  • 役割
  1. 食品・飼料・農薬・添加物・新規食品などに関する 科学的リスク評価 を実施
  2. 評価結果を欧州委員会や加盟国へ助言し、基準値や規制案の根拠 を提供
  3. 食品安全に関する 最新データの収集と公開、リスクコミュニケーション
  • 特徴:政策決定から独立した科学機関で、利益相反管理が厳格。WHO/FAO のJECFA等と並び、国際評価の基準点として引用されることが多い。

要するに「EUの食品安全における科学的お墨付き」を与える信頼度の高い組織です。

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