
国保の保険証はいつまで使える?2026年3月までの暫定措置を解説
日本では国民それぞれが保険料を払うことで何らかの保険に加入することができます。保険の被保険者と被扶養者(保険を受けられる人とその家族)の加入者である資格を確認することで、1~3割の負担で医療が受けられます。医療は時と場合により非常に高額です。保険資格の確認は健康と生命維持に必須と言ってもよいでしょう。
医療機関・薬局での被保険者資格の確認は、マイナンバーカード(マイナ保険証)を用いたオンライン資格確認の導入が段階的に進められています。2024年12月2日からは新規の保険証の発行が停止されています。国民健康保険(国保)の現行の紙の保険証の多くが有効期限を迎える8月、9月が到来していますのでその取扱いについて解説します。
本稿では、政府・自治体の移行方針の考え方、マイナ保険証への切替方法、受診時の実務対応を解説します。本文中の期日や運用は、施行日や経過措置の終了時期が国・自治体の最新通知で変わり得るため、最終的には該当する通知や自治体の案内に従ってください[1–5]。
用語の簡単な説明(初出時):
- マイナ保険証:マイナンバーカードを保険証として利用するときの呼び方。
- 資格確認書:マイナンバーカードを持たない人らに自治体が交付する、受診時に公的医療保険の資格を示す書類(原則無料、自治体ごとに交付方法・有効期限が異なる)[2–4]。
- オンライン資格確認:医療機関・薬局が患者の保険資格や負担割合等をこれまで月ごとに遅れて確認していたものを、オンラインで即時照会する仕組み。[3]
- 高額療養費の限度額情報:月ごとの自己負担上限に関する区分情報。事前連携に同意すると窓口で限度額情報が確認できる場合がある[5]。
- 公費負担医療:難病・自立支援医療・小児医療等の公費負担制度。保険証とは別に受給者証の提示が必要[3,5]。
国保の現行保険証はいつまで使える?2026年3月までの具体的な運用ルールと自治体対応
現行の紙の保険証は「券面に印字された有効期限」および国・自治体が示す経過措置の範囲内で利用可能とされています。多くは2025年7月~8月いっぱいで有効期限を迎えます。
2026年3月末まで厚生労働省は移行初期の混乱に備え、2026年3月末までの時限措置として、仮に有効期限切れの保険証を持参した場合でも保険資格の確認が取れれば従来通り保険診療を受けられるよう全国の医療機関等に周知しています。
この時限措置終了後は、原則としてマイナ保険証または資格確認書の提示が必要となります。
従来の国保の健康保険証しか手元に無い方は2025年8月、9月から無保険になるわけではありませんので次回受診から10割になるとおびえる必要はありません。ただし、資格確認証が自治体から届いてないか確認してください。郵便物に紛れていないでしょうか?どうしても見つからない場合は最寄りの区役所に問い合わせしてください。
この心配をしている方はおそらくマイナンバーをお持ちだが、保険証としての利用をためらっている方がいらっしゃるでしょうから次章でマイナ保険証についてすこし安全性を伝えます。
マイナ保険証に対してよくある市民の声、分かってほしいこと
マイナ保険証は保険証として利用できますが、マイナンバーカード自体に受診歴や投薬歴などの個人情報が入るわけではありません。あくまでマイナ保険証は情報の鍵であり保存装置ではありません。
そして自分の受診歴や投薬歴は一度でも保険適応で治療を受けたことがあればすでに情報自体は”オンライン資格確認等システム”に保管されています。仕組みとしては出来上がっているので、この医療情報を使うか使わないかの問題なのです。
マイナ保険証を医療機関の端末にセットして、暗証番号か顔認証をすることで自分の医療情報の鍵が開きます。この通信は鍵が開かないと誰も覗けないものです。どこまで医療機関提示するかは自分で選ぶことができるので、保険資格だけ確認してもらい自分の医療情報を渡さないことは可能です。医療情報を渡すことは自分に大きなメリットがあるものですが、望まない方もいるかもしれません。
医療情報を渡さない場合、医療情報を共有した場合よりも医師や薬剤師から様々な質問を受けることになりますがそれは許容していただく必要があります。ご自身のより安全で効果的な治療のために。
自治体による対応の差や時期の違いはチェックを
方針は国が示すものの、保険証の発行・更新・周知は自治体(保険者)の権限で行われるため、通知様式や更新時期・交付方法に差が生じる可能性があります[2]。
- 移行期間中は、紙の保険証・マイナ保険証・資格確認書のいずれかで資格確認ができる運用が多く、最終的な運用は国・自治体の指示に沿って整理される見込みである[1–4]。
- 医療機関・薬局ではオンライン資格確認の導入が進むため、資格確認の方法や例外的な取り扱いは施設ごとに運用が異なる点に留意する必要がある[3–5]。
要するに、「いつまで使えるか」は印字の有効期限と自治体の経過措置によるため、実務上は自治体からの案内を確認し、必要に応じて資格確認書やマイナ保険証の登録を進めるのが現実的です。移行期間中に自治体から資格確認書交付の案内やマイナ保険証の利用登録依頼が届くことがあります[2–4]。
2024年以降、医療機関・薬局の窓口で求められるのは「その時点で有効な公的保険資格の確認」です。確認手段は次のいずれか、あるいは組み合わせです[3–5]。
- マイナ保険証(マイナンバーカード+暗証番号または顔認証)によるオンライン資格確認
- 紙の保険証の券面情報(記号・番号・氏名・生年月日等)を医療機関側で入力して行うオンライン資格照会(券面をIC読み取りするわけではなく、入力照会による確認)
- 資格確認書など、保険者が発行する資格を示す書類
- やむを得ない場合には、後日資格確認を前提とした保険扱いや一時的な自己負担後の還付手続きが行われることがある(厚労省通知に基づく柔軟な取扱いが示されることがある)[3,5]
自治体(国保の保険者)は次のような段階的対応を進めていますが、交付方法や期限、周知方法は自治体ごとに異なります[2,4]。
- 紙の保険証の更新(再交付)回数や有効期間の見直し:移行期間中は有効期限の短縮や年度末に合わせた交付で平準化する運用例がある。
- 資格確認書の発行体制整備:マイナ保険証を持たない人向けに資格確認書を無料で交付する一方、郵送・オンライン申請の可否や有効期限は自治体裁量で異なるため、必ず住民向け案内を確認すること[2–4]。
- 周知・広報:高齢者、子育て世帯、転入者、在留外国人などに対する個別周知や多言語案内を行う例がある[2]。
受診現場では、最新の資格と窓口提示の不一致に伴う返戻や追加負担を避ける観点から、受診者側も氏名・住所・加入先の変更があれば速やかに届出を行い、受診時には最新の資格確認手段を提示することが重要です。救急等のやむを得ない場合は、後日確認を前提とした柔軟な取扱いが行われ得るため、まずは受診先に事情を伝えて指示を仰いでください[3–5]。
なお、公費負担医療の受給者証や高齢受給者証、限度額適用認定証などの併用書類は当面存続するため、必要な方は引き続き併せて提示してください[3,5]。
マイナ保険証への切替手続きと医療機関での提示方法
マイナ保険証は、マイナンバーカードに健康保険証利用の登録を行うことで利用できます。手順の例は次の通りです[1,4]。
- マイナンバーカードを取得(未取得の場合は申請)。
- 健康保険証利用の登録(マイナポータル、対応する自治体窓口、または医療機関・薬局の支援端末での申請が可能な場合がある。対応可否は事前に確認すること)。
- 医療機関・薬局の受付でカードリーダーにかざし、暗証番号入力または顔認証で本人確認。
- オンライン資格確認により、当日の保険資格・負担割合・高額療養費の限度額情報(患者が同意した場合)が自動連携され、診療・調剤に反映される場合がある[3–5]。
カードを持たない・持てない人向けに自治体が資格確認書を無料交付する例があります、交付方法や更新条件は自治体ごとに異なりますので自治体のホームページなどで確認してください[2–4]。高額療養費の適用が頻繁な慢性疾患治療中の方は窓口負担がかるくなるのでマイナ保険証はお勧めです。
窓口での登録支援を行う医療機関・薬局がある一方、対応しない施設もあるため事前確認をお勧めします。
マイナ保険証の有無によるパターン別医療機関の受診方法と2026年3月までにすること
移行期間中(経過措置期間の目安として2026年3月末が取り上げられることがある旨は繰り返します)に想定される受診パターンをケース別にまとめます。実際の取り扱いは自治体・施設により異なる点に注意してください。
1) マイナ保険証あり(健康保険証利用の登録済み)
- 受診時:マイナンバーカードを受付のカードリーダーにかざし、暗証番号入力または顔認証で本人確認。保険資格はオンラインで照会されることが多い[3–5]。
- 持参すると安心なもの:公費負担の受給者証、高齢受給者証、限度額適用認定証(限度額情報を連携していない場合)など[5]。
- トラブル時の代替:カード不携帯や端末不具合の場合は紙の保険証や資格確認書で代替。いずれもない場合は一時的に全額自己負担→後日精算となる場合がある[3,5]。
2) 紙の保険証あり(有効期限外)
- 受診時:紙の保険証を提示。医療機関側で券面情報を入力してオンラインで資格照会する運用が一般的。本人確認書類を求められることがある[3–5]。ただし2026年3月までの時限措置。
- 注意点:自治体の更新スケジュールが前倒し・統一されることがあるため、印字期限内でも資格自体が変わっている場合は無効となることがある(例:就職で職域保険に移行した等)[3–5]。
- 注意点:次回以降は資格確認書かマイナ保険証を持参しましょう。早めに慣れておく。直前だと慌てる。
- 推奨:自治体の案内が届いたら早めに手続きすると受診時の混乱を避けやすい[1–4]。
3) 資格確認書あり(マイナ保険証を持たない・持てない)
- 受診時:資格確認書を提示。紙の保険証と同様に資格を示す書類として使用可能。交付・更新の方法や有効期限は自治体で異なるため管理が必要[2–4]。
- 対象:マイナンバーカード未取得の方、取得が困難な方、カードの利用を望まない方など。交付は自治体窓口で行われることが多い[2–4]。
4) 何も持っていない(保険証・マイナ保険証・資格確認書なし)
- 原則:その場で保険資格が確認できない場合はいったん全額自己負担になることがあるが、後日所定の手続き(療養費請求や還付)で精算できる場合がある[3,5]。
- 例外的取扱い:救急・やむを得ない事情では、後日確認を前提に保険適用とする柔軟な取扱いが行われることがある。事前に受診先へ相談するのが安全です[3,5]。
- 実務アドバイス:急病を除き、受診前にマイナ保険証または資格確認書を準備。自治体や保険者に電話で確認すると具体的な案内が得られます[2–5]。
5) ライフイベント別の注意点
- 転職・退職:退職翌日以降は前の保険が使えない。国保加入や任意継続等の手続きを速やかに行い、受診予定がある場合は新しい資格を示す書類を準備する[3–5]。
- 転居・世帯変更:保険者(自治体)が変わると保険証も変わるため、旧保険証の返却と新規交付手続きを忘れない[2,4]。
- 進学・扶養の異動:扶養認定の変更により資格が変わる。学校や保険者からの案内に注意する[3–5]。
- 新生児:出生日に遡って資格が発生するが、書類が届くまで自治体の案内に従う(臨時の取り扱いがある)[3,5]。
- 在留外国人・留学生:在留資格・期間に応じて国保加入手続きや資格確認書の活用が必要。多言語案内を用意する自治体がある[2]。
6) 2026年3月までにしておきたいこと(チェックリスト)
- 自治体から届く保険証・資格確認書・更新通知の封書は必ず開封し、記載事項と更新方法を確認する[2,4]。
- マイナ保険証の利用登録(可能なら)または資格確認書の取得を早めに行う[1–4]。
- 公費負担書類や限度額適用認定証の有効期限を手帳やカレンダーに記録し、更新漏れを防ぐ[5]。
- 転職・転居が決まったら保険の切替スケジュールを確認し、受診予定日を含めて準備する[3–5]。
- かかりつけ医や薬局にマイナ保険証の対応状況や薬剤情報・健診情報の同意連携について確認し、自分で同意の可否を判断する[3,5]。
移行期間中は端末や通信の不具合など不測の事態が起こり得ます。複数の確認手段(例:マイナ保険証+資格確認書、紙の保険証+本人確認書類)を準備しておくと安心です。迷ったときは自治体の国保窓口、保険者のコールセンター、受診先に事前相談してください[2–5]。
よくある質問(Q&A)
Q1. 紙の保険証とマイナ保険証、両方あればどちらを出すべき?
A. どちらでも受診可能です。ただし、資格変更の取り違え防止や限度額情報の連携の点で、マイナ保険証の提示が実務上便利な場合が多いです[3–5]。
Q2. マイナ保険証で顔認証に失敗したら?
A. 暗証番号認証に切り替えるか、一部の医療機関では職員の目視での顔写真と本人の顔の確認でオンライン資格確認が行えます。どうしても使えない場合は紙の保険証や資格確認書で対応します[1,3]。
Q3. 家族分のマイナ保険証で子どもの受診はできる?
A. 本人名義のカードが必要です。子どもでもマイナンバーカードは発行できます。未取得の場合は紙の保険証や資格確認書を提示してください[1,4]。
Q4. 資格確認書はどこで、どうやってもらえる?
A. 住所地の自治体国保窓口での交付が一般的です。本人確認書類が必要で、郵送やオンライン申請に対応する自治体もあります。交付方法・有効期限は自治体ごとに異なるので確認してください[2,4]。
Q5. 2026年4月以降はどうなる?
A. 現行の紙の保険証の暫定的な運用は整理され、最終的にはマイナ保険証または資格確認書による運用が基本とされる見込みです。ただし、具体的な終了時期や取り扱いの詳細は国・自治体の最新通知で変わるため、必ず公式発表を確認してください[1–4]。
受診時のトラブルを避けるための実務アドバイス(薬剤師の視点)
- お薬手帳とマイナ保険証(または資格確認書)をセットで持参すると、受付・会計の動線が短縮され薬歴連携もスムーズになることが多い[3,5]。
- 高額療養費制度を利用する可能性がある人は、限度額情報の事前連携に同意しておくと窓口負担の軽減につながる[5]。
- 長期休暇前や大型連休前は保険切替や受診が重なりやすいため、早めの準備と確認を推奨します[3–5]。
- 在宅医療や訪問薬剤管理を利用する場合は、家族・ケアマネ・訪問チーム間で資格書類の所在と更新日を共有しておくと事務負担が減る[3–5]。
段階的な移行のため予期せぬ事態も想定されます。可能な限り複数の確認手段を用意し、自治体や受診先と事前に連絡を取り合ってください[3–5]。
まとめ
- 国保の紙の保険証は、券面の有効期限および国・自治体が示す経過措置の範囲内で利用可能とされます。実務上の目安として2026年3月末が言及される場合がありますが、施行日や経過措置の終了時期は国・自治体の最新通知に従ってください[1–4]。
- オンライン資格確認の導入は段階的に進められており、マイナ保険証または資格確認書が中心となる方向です。具体的な適用時期や例外は通知や自治体案内で確認してください[3–5]。
- 手続きは早めに。マイナ保険証の登録、あるいは資格確認書の取得を進め、受診時のトラブルを避けましょう。疑問があれば自治体窓口や受診先に問い合わせてください[1–5]。
参考資料
- Digital Agency (Japan). Using My Number Card as Health Insurance Card (Myna Health Insurance Card). Available from: https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/health-insurance-card/
- Ministry of Internal Affairs and Communications; Ministry of Health, Labour and Welfare. Guidance for Municipal National Health Insurance during transition to Myna Health Insurance. Available from: https://www.mhlw.go.jp/
- Ministry of Health, Labour and Welfare. Online Eligibility Verification System for Medical Institutions and Pharmacies: Operation and Q&A. Available from: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html
- Digital Agency (Japan). Notice on the end of issuance of paper health insurance cards and transition measures. Available from: https://www.digital.go.jp/
- Ministry of Health, Labour and Welfare. Handling when eligibility cannot be confirmed at reception (notifications and Q&A). Available from: https://www.mhlw.go.jp/