薬の一包化サービスとは?メリット・デメリット、通常調剤との違いと費用の目安

薬の一包化サービスとは?メリット・デメリット、通常調剤との違いと費用の目安

一包化(いっぽうか)サービスは、患者さんの服用タイミングごとに複数の内服薬をひとつの袋にまとめる調剤サービスです。高齢者や薬の多い方の服薬管理を助け、飲み間違いや残薬の把握に役立ちます。メリットは服用の簡便化、飲みまちがい防止、残薬管理のしやすさの向上です。一方、湿気や光に弱い薬など一包化に適さない薬があること、保管期限が短くなる場合があること、追加の自己負担が生じる点、袋の管理方法を誤ると混乱や誤飲のリスクを招く可能性がある点がデメリットです。費用は診療報酬の「一包化加算」などの算定に基づき、点数(1点=10円)×自己負担割合で窓口負担が算出されます。自己負担は処方内容や算定要件により変わるため、利用前に薬剤師と適合性や費用を確認しましょう。[1-3]

一包化とは?通常の調剤との違いをわかりやすく解説

一包化とは、1回に飲む複数の薬を朝・昼・夕・就寝前などの服用時間ごとに小さな分包袋にまとめる調剤方法です。袋には「氏名 朝食後 09/09」などと、患者名・用法・日付・薬剤名・用量などを印字できます。これにより、1回分の薬がまとまり、「どれを何錠?」と迷う場面が減ります。なお本稿で用いる用語の補足を置きます:PTPシート(Press Through Package)は個々の錠剤をアルミ・プラで密封した包装で防湿性が高い包装形式、ポリファーマシーは単に薬剤数が多い状態だけでなく、有害事象や相互作用、適切性の低下やアドヒアランス悪化のリスクが高まった状態を指します。配合変化とは同袋にした際に起こり得る物理的(吸湿・付着・崩壊性変化等)・化学的(分解・変色等)な不適合を意味します。[2,5]

通常調剤との最大の違いは、薬をPTPシートやボトルのまま渡すか、1回分ごとに小包装化するかという点です。通常調剤では患者さん自身が「いつ、どの薬を何錠」服用するかを管理しますが、一包化では薬局が服用スケジュールに合わせて分け、袋に印字して渡すため、日々のお薬の仕分けの一部を薬局が代わりに行います。[2]

一包化は次のような人に向いています。

  • 薬の種類や錠数が多く、用法ごとの薬の仕分けに時間がかかる人
  • 飲み忘れ・重複服用が起きやすい人[4]
  • 視力低下や手指の不自由でPTPシートから薬を出しにくい人[2]
  • 在宅療養中で家族や介護者に薬の管理を頼みたい人[3]

医療現場では一包化を「服薬支援の一つ」と位置づけています。高齢者の薬物療法では効果と安全性を保ちながら服薬を継続することが重要で、一包化はそのための現実的な手段として国内ガイドラインでも患者背景に応じた支援の一つに含まれています。[2,3]

一包化のメリット|飲み間違い防止や服薬管理のしやすさ

一包化の主なメリットは次の通りです。

  • 飲み間違いの予防
    • 「朝・昼・夕・就寝前」などの印字で時間帯の取り違えを減らせます。
    • 1回分が一袋なので、残った袋の数で飲み忘れが一目で分かります。[2,3]
    • 日付を印字すると服用したかどうか一目でわかります。
  • 服薬アドヒアランスの向上
    • 準備の手間が減り、日課として続けやすくなります。
    • 研究では、パッケージングによる支援はアドヒアランス改善に一定の効果があると示されていますが、指導やフォローと組み合わせることで効果が高まります。[4,6]
  • 残薬の見える化と減少
    • 袋の残りで服薬状況が分かるため、医師・薬剤師が調整しやすくなります。
    • 家庭にある残薬を減らすことは医療費の適正化につながります。[3,7]
  • 介護・在宅での共有が簡単
    • 家族や介護者が支援しやすく、訪問看護・訪問薬剤管理と相性が良いです。[3]
  • 安全性と利便性のバランス
    • PTPシートから薬を押し出す動作が不要になり、手指が不自由な方にも優しい方法です。[2]

一包化の効果は「続けやすさの後押し」にあります。毎日同じリズムで袋を開けるだけというシンプルさは継続に有効です。Cochraneの総説でも、パッケージ改善やスケジュール表示などの行動的支援は単独では効果が小〜中程度でも、指導やフォローと組み合わせると効果が高まるとされています。薬剤師の指導や定期的な見直しと併用することが重要です。[4,6]

一包化のデメリット|できない薬や保管方法の注意点

一包化には注意点もあります。薬の性質や使用状況によっては適さない場合があるため、事前確認が大切です。

一包化のデメリット

  • 薬局で待ち時間が長くなる
    • 一包化は全自動分包機という機械を使って行います。分包速度は最新の機器でも一分あたり40~50包程度で薬品の充填やシートから薬をばらす時間や患者ごとの設定等操作の時間がかかり、さらに薬剤師が出来上がったものをチェックします。早く見積もってもプラス15分と想定しおくべきでしょう。処方された薬が多いと全自動分包機が動く速度も落ちて薬剤師のチェックも時間がかかるため30分くらいかかることもあります。
  • 追加費用と保険適用の制約
    • 一包化は調剤報酬上の算定対象(例:一包化加算、服薬情報等提供料、在宅患者訪問薬剤管理指導料等)があり、点数(1点=10円)に基づき窓口負担が計算されます。算定要件や点数は2年に一度の改定があるため、最新の点数表や疑義解釈を薬局で確認してください。[1]
    • 注意:一包化すると必ず薬局に収益が出るとは限らず、算定要件を満たさない場合は薬局側が普段するサービスになります。別途料金を徴収する薬局もあると聞きます。自費対応を希望する場合は薬局と確認し、対応可能な範囲・条件を事前に確認してください。[1]
  • 分包後の使用期限・保管の注意
    • 分包後は元のPTPより防湿性が低下するため、有効期間が短くなる場合があります。長期間一括で分包する(例:長日数分の一括処理)は避け、必要に応じて期間を分けて調製します。[5]
    • 直射日光・高温多湿を避け、元の外袋やケースに入れて保管してください。長時間の持ち歩きや高温環境での保管は避けます。[5]
  • 誤飲・混在リスク
    • 一部の薬は小児などの誤飲を防ぐためにわざと開けにくいPTPにしているものがあります。
    • 一包化袋はPTPに比べ開封が容易であるため、小児の誤飲や同居家族での取り違えに注意が必要です。手の届かない場所に保管する、名前や曜日の確認を徹底する、色分けケースを使うなどの対策が有効です。[3]

一包化できるそもそもの条件、制限

  • 一包化に向かない薬がある
    • 湿気や光に弱い薬:一部の有効成分が湿気り易い薬や光分解しやすい薬は、分包後に安定性が低下する場合があります。ただしOD錠は銘柄別の分包安定性データやメーカー情報に基づき可否を判断します。[5]
    • 遮光・防湿性が必要な薬:ニトログリセリン舌下錠などは揮発性や吸湿性があり、遮光性・防湿性の高い密栓容器(例:ガラス瓶と乾燥剤等)での保管が推奨されるため、一包化は原則避けられます。[5]
    • 特殊な剤形:発泡錠や速報錠、内容物が漏れやすいソフトカプセルなどは一包化に不適なことがあります。[5]
    • 粉薬・散薬の制限:強い吸湿性の散薬や配合変化の恐れがある組み合わせは同袋にしない判断をします。錠剤や他の粉薬と一緒にせず分けることがあります。
  • 薬同士の相性(物理・化学的な配合変化)
    • 同包して他の薬と接触すると吸湿・粘着・変色・崩壊性の変化を起こす組み合わせがあり、薬剤師は添付文書やメーカー・データベースの安定性情報を確認して必要なら同じ用法でも別袋にします。[5]
  • 服用時点の違いによる分離の必要性
    • 食前・食後・頓用・就寝前など服用時点が異なる薬は同袋にしないのが原則です。服用上の注意が異なる薬はPTPのままにするか別袋にするハイブリッド運用が一般的です。

一包化の可否は薬ごと・患者ごとに異なります。剤形変更(OD錠→通常錠など)、包装形態の工夫、同時服用でも袋を分けるなど、現実的な対策が取れる場合もあります。迷ったら薬剤師に相談してください。[2,5]

保管と使用の基本ルール(迷ったらこれ)

  • 直射日光・高温・湿気を避ける(台所や浴室の近くは避ける)
  • 特に冷蔵庫に入れない(寒暖差で結露するので湿気りやすくなる)
  • 元の小包装のままケースで曜日・時間帯順に並べる
  • 旅行・通院時は必要分だけ持ち出し、予備を少し追加する
  • 開封済みの袋はすぐ服用し、開封したまま保管しない。
  • 薬が欠けた・湿った・変色したら自己判断で飲まず薬局へ相談する

一包化にかかる費用と自己負担額の基本

保険診療で一包化を行うと、調剤報酬の「外来服薬支援料2」等が算定され(2025年9月現在)、患者さんの自己負担に反映されます。診療報酬の点数は改定されるため、最新の令和6年度の点数表・通知・疑義解釈等で要件と点数を確認してください。窓口負担は点数(1点=10円)に自己負担割合(例:3割)を乗じて計算されます。[1]

自己負担の目安(概算の考え方)

  • 一包化に関連する加算や薬学的管理料等の組合せによって総額が変わります。具体的な点数は処方内容や算定要件で細分されるため、薬局で見積もりを確認してください。[1]
  • 在宅支援(訪問薬剤管理等)を組み合わせる場合は別の管理料が加わることがあります。[1,3]

費用は「処方内容(薬の数・日数)」「自己負担割合」により変わります。薬局の窓口で点自己負担金を確認するのが確実です。[1]

一包化の費用 令和6年改定版

日数 点数 自己負担3割 自己負担2割 自己負担1割
7日分 34 100円 70円 30円
14日分 68 200円 140円 70円
21日分 102 300円 200円 100円
28日分 136 410円 270円 140円
35日分 170 510円 340円 170円
42日分 204 610円 410円 200円
43日分以上は同じ 240 720円 480円 240円

保険適用の考え方

  • 一包化医師の指示に基づき実施します。服薬管理上の必要性があると薬剤師が判断して医師へ指示をもらうケースもあります。利便性のみで常に保険算定されるわけではありません。[1-3]
  • 薬の量が少なく保険適応とならない一包化希望に対応する場合、自費で別途費用を請求されることがあります。薬局と事前に取扱いを確認してください。

費用と効果のバランス

  • 一包化で飲み忘れや残薬が減れば、結果として無駄な医療費の抑制につながる可能性があります。[3,7]
  • 介護者の負担軽減や通院・入院時の服薬情報共有など、金額以上の実利が得られる場合があります。[2,3]

はじめて利用する際は、次のポイントを薬剤師とすり合わせましょう。可能なかぎり希望はかなえられます。その薬局の全自動分包機のスペックにもよります。

  • どの薬を同じ袋に入れてよいか(安定性と配合変化の確認)
  • 印字内容(時間帯、日付、服用注意の表示)
  • 旅行や入院がある場合の分割方法(◯日分ずつ等)
  • 費用の概算と保険算定の可否・要件(点数と計算方法の確認)
  • やめたい・変更したいとき(処方変更時の作り直しの扱い)

まとめると、一包化は患者さんの生活背景と薬剤特性に応じた服薬支援の一手段です。費用と効果のバランス、薬剤の安定性や誤飲リスクを薬剤師と確認し、必要に応じてPTPのまま残す・同時刻でも別袋にするなどのハイブリッド運用を含めて最適な方法を選びましょう。迷ったら、普段の飲み方・生活リズム・薬の性質を薬剤師に伝え、一緒に調整してください。[1-3,5]

  1. Ministry of Health, Labour and Welfare (MHLW). Reiwa 6 (2024) Dispensing Fee Schedule and related notices for community pharmacies (調剤報酬点数表・疑義解釈). Tokyo: MHLW; 2024. Available from: https://www.mhlw.go.jp/
  2. Japan Geriatrics Society. Guidelines for Safe Pharmacotherapy in the Elderly 2023 (高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2023). Tokyo: JGS; 2023. Available from: https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/
  3. Ministry of Health, Labour and Welfare (MHLW). Proper Use of Medicines in Elderly: General Principles (高齢者医薬品適正使用の指針 総論). Tokyo: MHLW; 2018. Available from: https://www.mhlw.go.jp/
  4. Nieuwlaat R, Wilczynski N, Navarro T, et al. Interventions for enhancing medication adherence. Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014(11):CD000011. doi:10.1002/14651858.CD000011.pub4
  5. Japanese Society of Hospital Pharmacists. Guidance on unit-dose packaging and stability considerations (錠剤・カプセル剤の一包化に関する指針). Tokyo: JSHP; 2015 (and updates). Available from: https://www.jshp.or.jp/
  6. Sabaté E, editor. Adherence to Long-Term Therapies: Evidence for Action. Geneva: World Health Organization; 2003. Available from: https://apps.who.int/
  7. Ministry of Health, Labour and Welfare (MHLW). Report on initiatives to reduce leftover medicines in the community (残薬削減の取組報告). Tokyo: MHLW; 2017. Available from: https://www.mhlw.go.jp/
おすすめの記事