複数医療機関の薬が散らかり管理が限界なら、薬局でまとめて一包化・整理する外来服薬支援サービス

複数医療機関の薬が散らかり管理が限界なら、薬局でまとめて一包化・整理する外来服薬支援サービス

複数の医療機関から出た薬を、患者ごと・服用時刻ごとに1包にまとめる「一包化」は、服用間違いや重複服用の減少、残薬の削減に役立ちます[1][2]。ただし医療機関ごとにPTPシート(プレススルーパック)の形状や表示、分包(一包化)の有無や表示ルールが異なるため、家庭内で薬袋やパッケージが散らかり判断が難しくなることがあります。薬局の外来服薬支援サービスでは、違う薬局で調剤された残薬を一か所の薬局持ちこんで複数病院分をまとめて一包化することも可能です。処方内容をまとめて薬剤師に相談することで飲み合わせチェックをして処方の最適化に向けて医師と連携も可能なサービスで比較的安価です。

複数病院の処方薬が散らかる問題とは? 医療機関ごとにPTPや分包、表示ルールが違い、残薬の日数がそろわない

「朝から薬の仕分けに時間がかかってしまう」「一包化とバラ錠が混ざっている」——こうした困りごとはよくあります。医療機関や診療科が異なると、薬局ごとに採用薬や調剤機器、表示ルールがそれぞれ違い、PTPシート(プレススルーパック)や分包の形・文字・日付表記がばらつきます。その結果、薬の置き場や見た目のカサが増え、取り違えなどのリスクが高まります。

一包化は本来、服用のタイミングを分かりやすくして飲み忘れや重複服用を減らすための工夫です。しかし医療機関ごとに別々の一包化が並ぶと、朝・昼・夕・就寝前の区分が混在し、支援する家族でも判断に時間がかかります。視力低下や手先の不自由さ、認知機能の低下がある方ほど混乱しやすいです。

さらに問題になるのが「残薬の数量(日数)がそろわない」ことです。A病院は28日分、B病院は30日分、C病院は14日分、といった違いがあると、ある薬だけ余ったり不足したりします。途中で変更があるとだんだん訳が分からなくって来ます。残薬は服用ミスだけでなく廃棄になると医療費の無駄にもつながります。

別の医療機関で別々に処方されていると、同じ有効成分の重複(ダブり)や相互作用が見えにくくなることもあります。おくすり手帳を使っているなら実際の袋が分散していても薬剤師へ相談するのが有益です。

こうした場合、薬局の外来服薬支援が有効です。結果として服用間違いの不安が減り、介護や家族の負担も軽くなります。

コピー見出し 支援料1にかかる費用と利用方法の流れ・近所のかかりつけ薬局へ持ち込み頼む

ここでは実際の手順と費用の目安をまとめます。近年この外来服薬支援に薬局は積極的になっています。ただし個々の薬局で対応してくれるかの判断は分かれるため最終確認は薬局で行ってください。

まずはかかりつけ薬局を持つことをおすすめします。自宅や職場から近く通いやすいところが良いです。このポイントが非常に大切で通いやすくて細かく対応してくれるところが良いです。かかりつけ薬剤師を頼んで担当を固定するとより対応は素早くなります。

標準的な流れを以下に示します。

利用の流れ(基本)

外来服薬支援1のbefore、afterイメージ

かかる費用のパターン 医療保険の自己負担(1〜3割)で変わります

外来服薬支援料1は月一回までの縛りがあります。月内に2回目以降の調剤は処方箋を持ちこんだタイミングなら通常の一包化の料金・外来服薬支援料2のみです。

外来服薬支援の一包化だけではないメリット

外来服薬支援は「袋に入れる」だけではありません。薬剤師が生活と治療の両面を見て、続けやすく安全な内服に整える包括的な支援です。複数の病院の薬が混在して管理が限界と感じたら、まず近所のかかりつけ薬局に相談してください。診療報酬の枠組みや疑義解釈を活用し、医師と連携して無理なく続けられる方法を一緒に作れます。薬局に問い合わせてください。

外来服薬支援料1は算定する時に、医師へすぐに連絡を取るか、薬を整理した時の情報を提供することが要件になっているので一包化や残薬整理のみならずお薬の内容に対して理解を深めてより安全な治療へ向けた支援も可能です。

一包化は薬の組合せ見直しの良い機会です。特に高齢者では、強い抗コリン作用の薬や過度の鎮静を来す薬、低血糖リスクの高い組合せには注意が必要です。薬剤の減量・中止は医師の最終判断で、患者の目標や優先順位を確認して進めます。薬剤師は生活情報や副作用情報を提示し、チームで処方最適化を支援します[1][7][13]

相互作用チェックも必須です。たとえば抗凝固薬とNSAIDsの併用は出血リスクを増やします。抗うつ薬SSRI(フルボキサミン)は他の薬との相互作用が多く中には併用できない薬があります、こうした点は複数医療機関に分かれた処方では見落とされやすく、薬局で一括確認することで発見しやすくなります[8][14]

主なメリットは次の通りです。

  • 服用間違いや重複服用の減少、服薬遵守(アドヒアランス)の向上[2][4]
  • 残薬の可視化と削減、医療費の適正化[5]
  • 相互作用や副作用の早期発見、処方最適化の後押し[8][10]
  • 家族・介護者の負担軽減、在宅療養の継続支援[6][12]
  • 旅行・外出時の携帯や災害時の持ち出しがしやすくなる[11]

かかりつけ薬剤師を持つとより安心です

これまでの説明でわかる通り、自分の薬物治療を把握しており相談できる薬剤師がいると話が早いのです。

かかりつけ薬剤師を持つと、継続的な管理や在宅対応、医療機関連携、残薬管理、服薬情報の一元化などの面でより安心です。かかりつけ薬剤師の選び方は、通いやすさ、説明の分かりやすさ、在宅支援経験、連携姿勢などを基準にしてください[15][17]。薬局を乗り換える際はおくすり手帳の記録やこれまでの分包設計、アレルギー歴、検査値の共有(可能な範囲)を準備するとスムーズです。最初の1〜2回は調整に時間がかかることがありますが、フォローが進めば手間は減ります[3]

利用時の注意点

外来服薬支援料1で追加費用が発生するのはやむをえないポイントです(3割なら560円、2割なら370円、1割なら190円)。

費用は調剤報酬の算定要件により変わります。外来服薬支援料、服用薬剤調整支援料、残薬確認に伴う調整、かかりつけ薬剤師指導料などが関係し、自己負担は保険の負担割合(1〜3割)で異なります。算定には同意取得や要件充足が必要です。具体的な見積もりは薬局で説明を受けてください[3][15][16]

注意点やデメリットは次の通りです。

  • かかりつけ薬局や自分と合う薬剤師に出会うまでは長い?
  • 一包化や薬学的管理に関する費用が追加される場合がある[15][16]
  • 一包化に向かない薬(徐放製剤・腸溶錠・一部のカプセル、吸湿性の高い錠剤など)がある[11]
    • この場合まとめて一包化できないか、できるにしても一回に分包できる日数に制限が出るか、保管方法が遮光や防湿など条件がいります。
  • 受診の合間に用量変更があると袋の作り直しが必要になり得る[11]
  • 見た目が変わるため慣れるまで時間がかかる場合がある

これらは初回相談時に解決策を一緒に検討できます。たとえば朝だけ一包化し就寝前はそのままにするハイブリッド方式や、写真付きリストや色分け台紙を併用して慣れを早める方法などがあります[11][12]

薬局が積極的に支援する背景(制度と地域ニーズ)

薬局が外来服薬支援に力を入れる背景には制度的評価と地域のニーズがあります。調剤報酬では地域支援体制加算などを通じて、24時間対応、在宅業務、残薬管理、医療・介護との連携、かかりつけ機能の提供などが評価されます。これらは外来服薬支援の実施と関連しています[16][18]

具体的にいうと外来服薬支援料1は地域支援体制加算という基本料に上乗せする条件として年間実績が定められています。そのため薬局としても外来服薬支援料1につながる服薬の困りごとには積極的に取り組みたいと思っているところが多いのです。

しかし薬局側からすると外来服薬支援料1は事例が少なくて実績が挙げにくいものの一つです。薬局側としても取り組みたい事情があります。

またポリファーマシー対策は国の重要課題です。高齢化に伴い多疾患の方が増える中で、薬剤の適正使用と副作用・取り違えの防止が求められています。ガイドラインは残薬把握、薬物療法の見直し、患者・家族への説明と同意、医療者間の連携を重視しています[1][7]。薬局はその入口でありハブとしての役割を果たします。単純な袋詰めではなく、処方の目的や優先順位を確認して生活に合わせて設計し直す「チーム医療」として位置づけられます[10][15]

まとめ

薬局は患者さんの安全と負担軽減のために連携して支援します。薬が散らかって管理が大変、服用ミスが心配、残薬がたまっているなどのサインがあれば、まず最寄りの薬局へ処方箋と残薬の状況を持参して「まとめて一包化したい」と相談してみるのはお勧めです。薬局は日付と時間をそろえた一包化、新旧処方の整合、相互作用チェック、生活に合った使い方の提案などを行います(ただし処方の変更は処方医の判断と同意が前提です)[3][10][16]

一つでも当てはまれば外来服薬支援の相談を。薬は生活を支える道具です。使い方と整理で安全に活用できるよう、薬局と一緒に調整していきましょう[3][6]

  1. 厚生労働省. 高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編). 2018. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197037.html
  2. Kuriyama A, et al. Unit-of-use packaging and medication adherence: systematic review. Res Social Adm Pharm. 2019;15(9):1073-1083. doi:10.1016/j.sapharm.2018.09.010
  3. 日本薬剤師会. 服薬情報等の一元的・継続的把握と外来服薬支援に関する手引き. 2022. https://www.nichiyaku.or.jp/
  4. Nieuwlaat R, et al. Interventions for enhancing medication adherence. Cochrane Database Syst Rev. 2014;(11):CD000011. doi:10.1002/14651858.CD000011.pub4
  5. 厚生労働省. 残薬解消の取組の推進について(事務連絡). 2017. https://www.mhlw.go.jp/
  6. 内閣府. 地域包括ケアシステムの構築. 2020. https://www8.cao.go.jp/kourei/
  7. 日本老年医学会. 高齢者の薬物治療ガイドライン2023. 東京: 南江堂; 2023.
  8. By the American Geriatrics Society Beers Criteria Update Expert Panel. 2019 AGS Beers Criteria. J Am Geriatr Soc. 2019;67(4):674-694. doi:10.1111/jgs.15767
  9. Mueller SK, et al. Effects of medication reconciliation on medication discrepancies. Arch Intern Med. 2012;172(17):1057-1063. doi:10.1001/archinternmed.2012.2246
  10. 日本病院薬剤師会. トレーシングレポート活用ガイド. 2021. https://www.jshp.or.jp/
  11. 日本薬剤師会. 分包・一包化に関する留意点(Q&A). 2021. https://www.nichiyaku.or.jp/
  12. Viswanathan M, et al. Medication therapy management interventions in outpatient settings: a systematic review. JAMA. 2015;314(8):852-871. doi:10.1001/jama.2015.10081
  13. Rankin A, et al. Interventions to improve appropriate polypharmacy for older people: A Cochrane Review. Cochrane Database Syst Rev. 2018;(9):CD008165. doi:10.1002/14651858.CD008165.pub4
  14. U.S. Food and Drug Administration. Drug Development and Drug Interactions: Table of Substrates, Inhibitors and Inducers. https://www.fda.gov/
  15. 厚生労働省. 調剤報酬点数表(令和6年度改定)通知・疑義解釈資料. 2024. https://www.mhlw.go.jp/
  16. 厚生労働省. 調剤報酬における地域支援体制加算の施設基準等(令和6年度). 2024. https://www.mhlw.go.jp/
  17. 厚生労働省. かかりつけ薬剤師・薬局に関するリーフレット. 2022. https://www.mhlw.go.jp/
  18. 中央社会保険医療協議会. 調剤報酬改定の個別事項(地域支援体制の評価). 2024. https://www.mhlw.go.jp/
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