
患者向け:薬のこと、薬局に電話で相談 |薬剤師が答える身近な窓口、薬のことでわからなくなったら
薬について不安や疑問があれば、まずは「かかりつけ薬局」に電話してください。薬局はただの調剤所ではなく薬物治療の拠点です。活用するのがお得です。一度でも調剤の履歴があれば初回アンケートや併用薬やアレルギーを知っている薬剤師が助言してくれます。ただし、薬剤師は診断や処方は行えません。薬の安全な使い方の助言、受診の目安提示、情報整理、必要なら医師への情報提供を行い、緊急が疑われれば受診を勧めます[1]。副作用や飲み合わせが心配、飲み忘れ、残薬の整理、家族の薬で迷うなどは電話相談で対応可能です。適切に伝えるコツを知っておくと、判断が早くなりトラブルを防げます。電話で伝えるべき情報、よくある相談と受け答え例、相談のタイミングと緊急時の目安、プライバシーや費用など解説します。
電話相談でまず伝えるべき「5つの情報」かかりつけ薬局なら「2つか3つ」で良い
お薬の関する疑問について薬剤師に相談する時は短い電話でも要点を押さえると、必要な助言に早くたどり着けます。最初に次の5点を伝えましょう。メモを見ながらで構いません。最初の2つは初回アンケートで把握できているので、いつも行く薬局へ相談するのが良いです。アレルギーや今までかかった病や手術などの履歴が薬が飲めるかどうかの判断に非常に役に立ちます。
- 1. あなたの基本情報:氏名、生年月日、代理の場合は患者さんとの関係。薬歴照合に必要です。
- 2. 既往歴・体質:持病(腎・肝・心・喘息・糖尿病等)、妊娠・授乳、薬・食品アレルギー、過去の副作用歴を伝えてください。これらは相互作用や用量調整の判断材料になります。
- 3. 薬の情報:「薬の名前」「用量」「服用回数・時間」「服用開始時期」。ラベルやお薬手帳の写真を読み上げても可。市販薬・サプリ・漢方も忘れずにしてください(ビタミンKを多く含む食品や青汁、納豆なども報告を)。
- 4. 症状と経過:「いつから、どの程度、何回起きたか」「家庭で測った体温・血圧・脈拍など」「症状が出るタイミング(服用直後・食後など)」を簡潔に伝えてください。
- 5. 相談の目的と優先順位:「今一番知りたいこと」「困っていること」。緊急性と提案の優先度が明確になります[1]。
可能なら手元に「お薬手帳」「処方箋控え」「市販薬の箱や説明書」を用意してください。スマホのメモや服薬管理アプリ、電子お薬手帳の画面共有・送信が使えると伝達ミスが減ります。写真や書類を送る場合は、薬局が案内する安全な手段(公式アプリや暗号化された方法)を使ってください。一般的なSNSや暗号化されないメールは避けましょう。
これらのチェック事項から分かる通り、あなたの背景を知っている薬剤師は対応がより正確にあなたに合ったものになります。かかりつけ薬剤師とまでいかなくても話しやすくて知った顔を薬剤師を指名するとスムーズでしょう。薬同士の飲み合わせ以外にも、疾患禁忌と言って特定の病気を持っていると使用が適さないものがあります。
よくある相談ケースと薬剤師の受け答え例
電話相談で多いテーマを会話例で示します。あくまで一例で、状況に応じ薬剤師の回答が変わります。
1) 副作用が心配/体調が変わった
患者:昨日から新しい抗生物質を飲み始めました。今朝から下痢が続きます。どうしたら?
薬剤師:抗生物質で腸内細菌のバランスが一時的に崩れて下痢が起きることがあります。水分補給は大切です。脱水が疑われる場合は経口補水液を少量ずつ頻回に取るようにしてください。心不全や重い腎機能低下のある方は水分量に注意が必要です。高熱・血便・強い腹痛がある場合は、止瀉薬(ロペラミドなど)を自己判断で使わないでください。強い症状なら速やかに受診を勧めます。許容範囲なら続けて飲み切ってしまって構いません。飲み切った後自然に治ります。他に何か飲んでいるものはありますか?
患者:整腸剤と一緒に飲んでいます。
薬剤師:整腸剤は多くの方で併用可能です。ただし製品名を教えてください。脱水が心配なら経口補水液を少量ずつ。2~3日で改善しない、悪化する、あるいは皮疹や息苦しさが出たら直ちに受診または救急へ連絡してください。
2) 飲み合わせ(相互作用)が不安
患者:高コレステロールの薬(スタチン)を飲んでいます。グレープフルーツジュースはダメ?
薬剤師:グレープフルーツは一部のスタチンで血中濃度を上げ、副作用リスクを高めることがあります。影響を受けやすい薬にはシンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチンがあり、影響が少ない例はプラバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチンです。作用は24~72時間続くため、時間を空けても避けるのが安全です。製品名を教えてください。
患者:ワルファリンを飲んでいて青汁をよく飲みます。
薬剤師:青汁や納豆、ほうれん草などビタミンKを多く含む食品は、ワルファリンの効果に影響します。ポイントは「食べない」ではなく「量を急に変えない」ことです。食事の変化があれば自己判断で増減せず、医師に伝えてください。検査(PT‑INR(血液の凝固を示す検査))を予定どおり受けてください。直接経口抗凝固薬(DOAC)はビタミンKの影響を受けにくいです。ただし納豆はワルファリンの効果が無くなるほど影響が大きいので食べたことは医師に伝えてください。
患者:風邪で市販の痛み止めを飲みたい。降圧剤と一緒でも大丈夫?
薬剤師:NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)はACE阻害薬・ARB・利尿薬と併用すると腎機能悪化のリスクを高めます。総合感冒薬、貼付剤、坐薬にもNSAIDsが含まれることがあるので注意してください。短期でも高齢者・慢性腎臓病や脱水時はリスクが上がります。症状に合う別の選択肢(例:アセトアミノフェン)を一緒に探します。
3) 服薬方法・飲み忘れの対処
患者:朝飲み忘れました。今まとめて2回分飲んでいい?
薬剤師:薬により対応が異なります。一般には気づいた時に1回分だけ飲み、次は元の時間に戻すことが多いです。次の服用が近ければスキップする場合もあります。薬の名前を教えてください。添付文書に沿って個別に案内します。
患者:胃が荒れやすくて、食前・食後がわかりにくい。
薬剤師:「食前=食事の約30分前」「食直前=5分以内」「食直後=5分以内」「食後=30分以内」「食間=食後2時間」のように用語の目安があります。胃刺激の強い薬は食後が多いです。薬のタイミングを確認して生活リズムに合わせた工夫を提案します。
患者:アセトアミノフェンは何時間おき?1日の最大量は?
薬剤師:通常は4~6時間おきです。成人の1日上限は製品によりますが強力な鎮痛が必要な時は一般に3,000〜4,000 mgを超えなこととされていますが、肝臓への負担を考慮して1日1500mg以上を継続する時は慎重に様子を見ます。複数製品で成分が重複することがあるので併用薬を確認させてください。小児は10~15 mg/kg/回を目安に4~6時間ごと、1日の最大投与量は1500mg超えないようにします。肝疾患や常習的な大量飲酒がある場合は、より低い上限で医師・薬剤師に相談してください。
4) 残薬がたまった/整理したい
患者:飲み忘れが続いて残薬がたまっています。どうすれば?
薬剤師:まず残数と内訳を一緒に確認します。次回受診時に調整しますか?飲みにくい薬があれば教えてください。飲み忘れが多い場合は一包化・服薬カレンダーで解消できます。未開封でも他人に譲るのは不可です。自治体のルールに従って廃棄してください。薬局で回収や相談できる場合もあります[1]。
患者:飲み間違いを減らしたい。
薬剤師:一包化、服薬アプリ、電子お薬手帳のアラーム、家族やケアマネとの連携が有効です。薬剤師は服薬支援・管理の範囲で対応し、必要があれば医師と連携します[1]。飲む回数が少ない剤型などの提案で支援できます。
5) 家族の薬・他科の薬との整合
患者:複数の病院からもらった薬が心配です。
薬剤師:お薬手帳を1冊(または1アプリ)にまとめてください。薬局もできれば一か所にまとめてください。成分重複や相互作用を確認し、必要なら主治医への情報提供書を作成します。受診前に電話いただければ、伝えるべきポイントを整理します[1]。
6) 受診前のセルフメディケーション
患者:軽い鼻かぜで受診するか迷っています。
薬剤師:発熱の持続、息苦しさ、意識障害、強い脱水が疑われる場合は医療機関へ。軽症なら市販薬の選び方、使用期間、受診の目安をお伝えします。既往歴や併用薬に合わせて安全な選択肢を提案します。鼻水の薬でねむくなったことは無いか教えてください。体質に合わせて案内します。
7) 旅行・災害時の備え
患者:旅行に行きます。薬はどう持っていけば?
薬剤師:旅行日数に加え、予備は少なくとも3〜7日分を持つことをおすすめします。処方内容がわかる書類(お薬手帳や処方内容の写し)を携帯してください。冷所保存が必要な薬は2~8℃で保管し、凍結は避けてください。保冷剤に直に当てず、温度管理に注意。点眼液等、銘柄を変更すると冷所保管が不要なものもあるので不便であれば相談ください。飛行機では薬は機内持ち込みにしておくと安全です。時差がある場合の服用方法も事前に確認しましょう。海外旅行の場合は薬剤によっては海外の法で規制され持ちこめない場合があります。医師または薬剤師に相談ください。治療目的の所持である書面を作成して持ちこめるようにお渡しします。事前に旅程等教えてください。
8) 保管・廃棄・吸入手技など
患者:インスリンや吸入薬の使い方が不安です。
薬剤師:インスリンは未開封で2~8℃の冷蔵保存、凍結厳禁です。開封後は製品ごとの使用期限を守り、多くは室温で一定期間使えます。夏季の車内放置や保冷剤直当ては避けてください。吸入薬では吸入ステロイド使用後のうがいや口を水でゆすぐこと、スペーサーの使用により吸入薬の粒子がのどや口腔内に付着するのを防ぎ効果を上げ副作用(口腔カンジダなど)を減らせます。電話で手順を口頭確認し、必要ならオンライン指導や来局時の実技確認を行います。デバイスの誤使用は効果不十分や副作用の原因になります。定期的に吸入方法が適切かチェックすることが有効です。インスリンの廃棄は処方元の病院に持ち込むか、感染性廃棄物の受け入れができる薬局で回収できます。
相談のタイミングと緊急時の判断基準
緊急性が高い順に「今すぐ119番/救急受診」「できるだけ早く受診」「まず薬局に電話で相談」の3段階で考えましょう。迷ったら安全側で判断してください。迷ったときに使える相談窓口として、救急相談(#7119、地域により番号が異なります)や小児救急相談(#8000)、誤飲・中毒時は日本中毒情報センター(中毒110番)なども活用できます。地域の提供状況を事前に確認しておくと安心です。
睡眠薬や向精神薬などの大量摂取で意識ないか昏倒している人を発見した場合などは、すぐに救急に連絡してください。薬局で対応を聞いている場合ではありません。
今すぐ119番・救急受診が必要なサイン
- 呼吸困難、ぜいぜい・ヒューヒュー、声が出しにくい、唇や顔の腫れ(アナフィラキシー疑い)
- 突然の激しい胸痛・圧迫感、冷や汗、吐き気、左腕や顎への放散痛(心筋梗塞疑い)
- 突然の顔のゆがみ、片側の手足の脱力・しびれ、ことばが出にくい・理解困難(FAST)(脳卒中疑い)
- 高熱と意識もうろう、けいれん、首の硬直、強い脱水(尿極端に少ない、口が渇いて皮膚が冷たい)
- 広範な皮疹・まぶたや口内のただれ、水ぶくれ、皮がむける(SJS/TEN疑い)—このような重篤な皮膚反応は速やかな受診が必要です
- 新しい向精神薬や抗うつ薬併用後の高熱・発汗・筋硬直・震え・錯乱(セロトニン症候群等疑い)—短時間で悪化することがあるため注意深い観察が必要です
できるだけ早く受診したいサイン(当日〜数日以内)
- 抗生物質内服中の持続する強い下痢・血便・発熱
- 利尿薬・ACE阻害薬・ARB・NSAIDs併用後のむくみ増悪、尿量減少、だるさが続く
- ワルファリン服用中の鼻血が止まりにくい、黒色便、原因不明のあざ
- 喘息・COPDの吸入薬で効果不十分、使い方に自信がない(手技再確認)[1]
- 数日で数キロの体重増加(心不全の恐れ)
まず薬局に電話で相談でよい場面
- 飲み忘れの対応、飲み合わせの事前確認、軽い副作用の見極め、服薬時間の調整、残薬整理、市販薬の選び方、保管方法など[1]
相談の前後に役立つ準備・行動:
- 症状と薬のリストをメモ(いつから、何が、どれくらい、何回起きたか)。
- 測れる数値は測っておく(体温、血圧、血糖、体重)。
- ラベル・お薬手帳・市販薬の箱を手元に。
- 薬剤師の助言をメモし、必要なら家族と共有。
- 受診が必要な時は、助言の経緯を医師に伝えると診療がスムーズです。
プライバシー・費用・オンライン連携の注意点
プライバシーの守り方
薬局は個人情報保護法や薬剤師法に基づき情報を適切に管理します。本人確認のため生年月日や連絡先を尋ねることがあります。第三者への開示は法令や同意がある場合を除き行いません。守秘義務があるので安心してください。相談者の同意を取ったうえで処方医へ連絡することがあります。電話口で周囲に人がいる場合は配慮した対応も可能なので伝えてください。転送電話や折り返しの際は薬局名と担当者名を名乗ります。薬局の正式番号へ折り返してください。
費用について
一般的な電話での「相談のみ」は無償です。別途医師への報告が必要な場合以外は調剤報酬上、費用が発生しません。一方、処方せんに基づく服薬指導や在宅・オンライン服薬指導など保険算定対象のサービスは一部負担金が生じます。単独の相談電話は保険算定対象外が一般的ですが、調剤に付随する抗がん剤治療中のフォローアップや在宅訪問、オンライン服薬指導は条件に応じて自己負担が発生します。事前に費用の有無を確認しましょう[1]。同意を取ったうえで処方医へ連絡を取る時は次回の保険調剤時に費用が発生します。
どの場合でも費用は60~330円と安価です。
- 処方箋に基づく調剤時:服薬管理指導料 45点か59点(3割負担で140円か180円)※薬剤料等の会計全体に含まれています
- オンライン服薬指導:服薬管理指導料 45点か59点(3割負担で140円か180円)※対面の場合と同じです ※薬剤料等の会計全体に含まれています
- 抗がん剤治療中のフォローアップ:特定薬剤管理指導加算2 月一回100点(3割負担で330円)※条件満たす薬局だけ ※電話相談受けた後の次回来局時に費用発生
- 医師への情報提供:服薬情報等提供料2(イ) 20点(3割で60円)。
オンライン・デジタル連携
- オンライン服薬指導:要件を満たせばビデオ通話等で服薬指導を受けられます。写真や電子お薬手帳の共有で対面に近い説明が可能です。送信手段は薬局指定の安全な方法を使ってください。
- 電子処方箋:医療機関と薬局間で処方情報を連携できます。重複投薬や相互作用チェックが強まり、患者の負担軽減に役立ちます。
- 電話・オンラインの限界:視診・触診・検査が必要な場面では限界があります。薬剤師は安全側で判断し、速やかに受診につなげます。診断や処方は医師の役割です。
今日からできる小さな準備
- 薬局の電話番号をスマホの「よく使う」に登録。受付時間・休業日もメモ。
- 薬の写真を撮っておく(ラベル・箱・用法が見えるように)。
- お薬手帳を1冊に統一。アプリならバックアップとロック設定。
- 家族と「緊急時の連絡先」「持病・アレルギー」の共有カードを作る。
まとめ
薬の不安や疑問は一人で抱えると大きく感じます。自分で判断して治療を中断してしまうよりもまず主治医に相談しましょう。主治医に聞きづらい場合は薬剤師に相談するのも一つの手です。電話での一言が安心と安全につながります。迷ったらためらわず、かかりつけ薬局へご連絡ください。次に調剤を受ける時に相談するのも良いでしょう。来局した時に薬局が混んでいるようなら空いている時間帯をスタッフに確認して、薬剤師の手が空いているタイミングでゆっくり相談を受けてもらうのは有効です。かかりつけ薬局をもつメリット同じ薬局に薬歴が集まると、重複や相互作用の検出、残薬調整、アドヒアランス支援、生活習慣への助言がよりきめ細かくなります。電話・対面・オンラインを組み合わせることで継続率の改善が報告されています。
用語メモ(簡単に)
- アドヒアランス=処方どおり服薬できている度合い。
- 一包化=複数薬を1回分ごとに袋詰めする方法。
- PT‑INR=血液が固まりやすさを示す検査値(抗凝固薬の管理で重要)。
- FAST=脳卒中の早期発見の合図(Face, Arm, Speech, Time)。
- SJS/TEN=重篤な皮膚粘膜障害の総称。
- ACE阻害薬・ARB・NSAIDs=高血圧薬や鎮痛薬の代表的な分類(薬剤名を薬剤師に伝えてください)。
- 厚生労働省.かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書(別添1 アンケート調査結果)(修正)最終[インターネット].平成31年3月[参照日:2025年9月21日].厚生労働省.利用可能: https://www.mhlw.go.jp/content/000509233.pdf
- 厚生労働省.医薬品・医療機器等安全性情報 No.293 一般用医薬品による重篤な副作用について[インターネット].2012年8月[参照日:2025年9月21日].厚生労働省.利用可能: https://www.mhlw.go.jp/www1/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/293-1.pdf