
薬局ごとに違う料金。最安か質か。調剤基本料の裏側を薬剤師が解説
「同じ薬なのに、薬局で支払う金額が微妙に違う」――そう感じたことはありませんか。薬局ごとの会計の違いを生むのは「調剤基本料」です。この記事では、調剤基本料の仕組み、最安の薬局を見分ける考え方、安さだけでなく賢く選ぶポイントを薬剤師の視点でまとめます。
調剤基本料とは何か:保険点数の仕組みを簡単に理解
薬局ごとに差が出やすいのは調剤技術料に含まれる調剤基本料です。領収書と共にもらう調剤明細書に記載がありますが一般の方には非常にわかりづらいです。調剤基本料は薬局の区分で決まります。区分は立地やメインの処方箋をどこから受け入れているか、そして薬局の実績で決まります。
これを理解するためにまず基礎から。日本の保険診療では医療費は「点数」で決まり、点数に10円を掛けた額が公定価格になります。自己負担は通常1~3割なので、点数の差は支払いにそのまま影響します。薬局の料金は、国が定める「調剤報酬」の点数で計算されます。点数に10円を掛け、さらにあなたの負担割合(多くは3割、子ども・高齢者・公費負担などは異なる)を掛けて支払います[1]。
薬局での点数はおおむね次の3つに分かれます。
1つ目は「調剤技術料」。処方箋を受けて薬局が調剤体制を整え調剤を行うための基本料金です。薬剤師常駐や設備、安全な調剤体制など、薬局の基礎力に対して支払われます。区分は単純な規模だけで決まるわけではなく、処方箋受付回数や特定の医療機関からの処方箋集中率、在宅対応や地域連携の有無など複数の要件で判定されます。結果として大規模・高集中の薬局が低い区分となる傾向がありますが、実際の区分は改定ごとに定められる複合要件によります[2]。
2つ目は「薬学管理料」。一包化(複数の薬を1回分ずつまとめること)、粉砕、無菌調製、服薬指導、服薬状況の確認・記録、重複投薬や相互作用のチェックなどに対する点数で、処方内容で変わります[2]。
3つ目は「薬剤料」。薬そのものの公定価格(薬価)です。同じ成分でも先発品とジェネリックでは薬価が異なり、会計に大きく影響します[2]。
これら3つが合計され、最後にあなたの負担割合が掛かります。つまり薬局の会計は「調剤技術料+薬学管理料+薬剤料」の合計です。
なおここで上げた薬局の点数は2年に一度変更されます。薬の価格も原則として毎年4月に改訂されます。
価格に直結する調剤基本料の種類と差額の内訳
調剤基本料には複数の区分があります。区分は処方箋受付回数や特定医療機関への集中率、在宅対応の有無などの複合要件で決まります。
調剤報酬のここ十年ほどのトレンドとして大規模チェーン薬局と、大型門前薬局の収益を減らす区分を設けています。そして敷地内薬局という病院の敷地内に薬局を構える病院と一体になりかけている薬局にはそれよりさらに厳しい基本料を設定しています。
「小規模だから必ず高い」「大規模だから必ず安い」と単純に判断するのは避けましょう。定義や閾値は診療報酬改定で見直されます[2]。かつこれに加えて薬学管理料、つまり薬の説明の実績でこの基本料に上乗せする仕組みがあるからです(地域支援体制加算等)。
会計差の実態ですが、調剤基本料の区分差は処方1回あたり一般に「数十点」の範囲に収まることが多く、点数を10円換算、自己負担が3割なら窓口差は概ね数十円〜100円台程度になります。例)区分差が20点なら20点×10円=200円、自己負担3割で約60円の差です。ここに薬学管理料や薬価差、加算の有無が加わると総額差はもう少し広がる場合がありますが、調剤基本料単体だけで「百数十点」動くことは通常の区分差としては稀です。最新の具体的点数は令和6年度の点数表等でご確認ください[1]。
もう一つ見落としがちな点は「各種指導料」の扱いです。重複投薬の解消や服薬情報提供、在宅対応、地域連携などを評価する指導料があります。一部の加算は患者の同意に基づく選択的なもので拒否は可能ですが、薬局が行わなければいけない確認や説明は省略できません。安全のために必要な指導は受けてください。
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区分ごとに推測する薬局の”質”
グラフでは薬局の基本料を低・中・高で分類しました。調剤報酬によりこれらの基本料のパターンが生まれる理由は、薬局が利益追求だけに走らないように薬局の組織としての質と薬剤師の質を求めるためです。この基本料にどの薬局にも差異が無い場合は、薬局の最適解は病院に一番近いところに出店です。出店出来たらなるべく薬剤師にコストをかけず、時間のかかる訪問指導はせず、利益率の高い薬を出せばよいのです。
調剤報酬はその逆です。近いところに出店するなら、薬剤師の教育にコストをかけて質の高い指導の実績を上げさせて、訪問指導で地域の介護で困っている患者を助けて、安価なジェネリックを調剤する。こういう薬局に高い調剤技術料を与えています。
上記のポイントに加えて、大規模チェーン薬局の高利益に歯止めをかける仕組みがあり、同一法人の月間の処方箋受付枚数が多いところで基本料が低く設定されています。高く調剤技術料を得るためには薬剤師の指導料の実績が求められます。近年新しく医療DX推進体制加算がマイナ保険証の利用率の割合で上乗せされます。
すべて加味すると全体的な傾向は下記。
調剤基本料パターン
令和6年度調剤報酬鵜点数表に基づく調剤基本料とその加算のパターン表。調剤技術料のうち、調剤基本料、地域支援体制加算、後発医薬品調剤体制加算、医療DX推進体制整備加算の組み合わせ。
- 最高パターン
- かなり努力している薬局。全国30%の薬局はこれに近いか数点低いくらい。薬剤師の研修を定期的に取り組んでいる。指導料の実績を高い水準でクリアしており、患者の薬の飲み合わせのチェックや、残薬の日数調整に関して医師とコミュニケーションができている。訪問指導も月十数に上る実績でケアマネ等と打ち合わせして連携できている。医療DXを進めておりマイナ保険証の利用を患者に促して高い実績を上げている。基本料は高いが信頼して良い薬局。
- 中程度
- 患者でにぎわう大きな薬局。全国でも1%程度しかない。法人としては中程度。薬剤師の研修はしている。指導料実績はまずまずの成績。訪問指導実績もあり。医療DXは導入できている。継続利用で良いのでなじみのところなら通ってください。調剤報酬実績は中々きついのでこれは努力しているところです。
- 低パターン
- 大規模チェーンの門前薬局が該当。全国でも3%前後と推定。研修、指導料実績、訪問指導もしているが、大規模チェーンがゆえに低く調剤基本料がおさえられているケース。ジェネリックの調剤割合もいまいちで、DX加算も低いのでとりあえず入れたが患者への説明むなしく使用割合が抑えられているケース。大都市から比較すると人口の少ない地域の大規模チェーンはこれに該当するかもしれない。極端な過疎地は基本料はもっと高くして守られるのでこの点数にはならない。
点数だけなら全国の半数以上の薬局はこの中程度~最高パターンの間の価格に収まります。結論として97~127点に収まる範囲の薬局はバランスよく努力しているところが多いので信頼して通うことをおすすめします。厚生労働省の公表資料を参照[3]。
低パターンよりさらに低い区分として敷地内薬局がありそれは調剤基本料は5点で他の技術料も制限かかけられており薬の価格も下げられます。ただしこのレベルになると薬を調剤するだけで赤字になります。全国で0.04%(R6年)しかありませんので継続して運営できるかは国の方針次第です。
安さだけでなく見るべきサービス項目:待ち時間・服薬指導
待ち時間は薬局の体制や処方の内容で変わります。
市立や国立の大病院の門前の大きな薬局は処方箋が集中して混雑しがちですが在庫が豊富で特殊薬に対応しやすい傾向があります。地域の中小薬局は混雑が少なく待ち時間が短いこともあります。
薬局選びでは支払い金額に直結する要素以外に、「通いやすさ」と「安全性」を高める要素も重要です。短い待ち時間、わかりやすい服薬指導、丁寧な副作用フォロー、在庫安定性、ジェネリック提案力、情報連携の速さなどはレシートの点数に表れにくいものの、生活の質に直結します。
ただし持病や薬物相互作用のリスクがある人は、安さだけでなく服薬管理や情報共有がしっかりできる薬局を優先する価値があります。長期的には適切な管理が医療の安全と総コストの抑制につながります[2]。
服薬指導は「どこまで踏み込んで聞くか」で質や会計が変わります。飲み忘れの理由、生活スタイル、サプリや市販薬の併用、過去の副作用歴、採血結果や腎・肝機能、妊娠・授乳、運転の必要性などを聞いて助言する薬局は、結果的にトラブルを減らします。複数の医療機関にかかっている人は、薬局がハブとなって相互作用や重複投薬をチェックすることが重要です。
電子処方箋やオンライン服薬指導、事前の処方箋送信(写真アップロード)に対応する薬局なら準備を前倒しでき、待ち時間を減らせます。ただし、処方箋の画像送信は事前準備に有用でも、紙の処方箋は原本提示が必要な場合や、電子処方箋では本人確認が必要になる点に注意してください。紙処方箋の有効期限は発行日を含めて4日です。
最後に、価格差と時間・安心感のバランスです。調剤基本料の差で出る自己負担は多くの場合「数十円〜100円台」程度です。一方で待ち時間短縮やトラブル予防(副作用・相互作用の早期発見)によるメリットは金額換算しにくいが大きいです。毎回薬局を変えて最安を追うより、生活動線に合い記録が蓄積され顔なじみの薬剤師が相談に乗ってくれる薬局を軸にすると、結果的に時間もお金も節約になることが多いです。国も「かかりつけ機能」を薬局に期待し、その価値を点数で評価しています。地域連携薬局や専門医療機関連携薬局といった認定も参考にしてください。
- 薬局のサービス関連の記事
まとめ 薬局選びはあなたが主役、価格差とサービスは体感が大切
最後に、薬局を「乗り換えるか続けるか」の判断基準です。毎回の待ち時間が長い、ジェネリック提案がない、説明が形式的で質問しにくいと感じるなら近隣の別薬局を試して比較する価値があります。基本料の会計差気にならなくて待ち時間や安心感のメリットが大きいと感じるなら無理に乗り換える必要はありません。処方箋はどの保険薬局でも受け付けられます。あなたが主役なので納得できる薬局を選んでください。
- 日本薬剤師会. 令和6年度調剤報酬改定等に関する資料 調剤報酬点数表一覧(R7.10.1~)[インターネット]. 東京:日本薬剤師会;2025[引用日 2025年11月3日]. 入手先: https://www.nichiyaku.or.jp/files/co/pharmacy-info/2025/20250829_%E8%AA%BF%E5%89%A4%E5%A0%B1%E9%85%AC%E7%82%B9%E6%95%B0%E8%A1%A8.pdf
- 厚生労働省. 令和6年度診療報酬改定の概要[インターネット]. 東京:厚生労働省; 2025[引用日2025年11月3日]. 入手先: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001238903.pdf
- 厚生労働省. 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会総会) 4医療機関を取り巻く状況について[インターネット]. 東京: 厚生労働省; [引用日2025年11月3日]. 入手先: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001560022.pdf






