忘年会の胃腸ケア: 二日酔いを防ぐ忘年会でつらくならない飲み方|胃腸に優しい食事・水分・薬の選び方を薬剤師が整理

忘年会でつらくならない飲み方|胃腸に優しい食事・水分・薬の選び方を薬剤師が整理

飲む前の準備:水分と食事で胃腸を整える

忘年会は楽しい反面、終わった後の「胃の重さ」や「頭痛」「だるさ」がつらくなりがちです。

忘年会の準備は「その前日」から始まっています。睡眠不足や過度の空腹は判断力を乱し飲み食いが加速しがちなので、前日はしっかり眠り当日も朝・昼を抜かず普段通りの食事と水分をとっておくと夜に食べ過ぎ・飲み過ぎにくくなります

二日酔いを軽くし胃腸を守るには、飲酒前の水分補給と食事の工夫が有効です。アルコールは胃と小腸で吸収され、空腹だと吸収が速く血中濃度が急上昇しやすくなります。食事を先にとると胃の排出が遅くなり、アルコール吸収が緩やかになってピーク濃度が下がります。食事と一緒に飲むと血中アルコール濃度の上昇が抑えられることが示され、個人差はありますが、二日酔い症状の一部が軽減した報告もあります[1]

何を食べるかも需要です。消化に負担をかけず胃粘膜を守りながらゆっくりエネルギーを供給する組み合わせが望ましいです。温かいご飯やおかゆ、うどん、全粒パンなどの穀類に、少量の良質な脂(オリーブオイル、ナッツ、ごま)とたんぱく質(豆腐、卵、鶏むね、白身魚)を合わせると胃の滞留時間がほどよく延び、アルコールの吸収が緩やかになります。辛すぎるものや極端に脂っこい料理は胃酸分泌や消化負担を増やし胃もたれの原因となるため控えめに。食物繊維や果物(バナナ、リンゴ)や海藻、根菜の煮物も血糖変動を抑え食べ過ぎ防止に役立つことがあります。

水分も忘れずに。アルコールは利尿作用があり脱水を招きやすいので、席に着く前にコップ1~2杯の水を飲んでおくとよいです。移動や立ち飲みなどで汗をかく予定があるなら電解質(ナトリウム、カリウム)を含む飲料を少量とると脱水を抑えることで頭痛などのリスクを減らせる可能性があります。砂糖の多い清涼飲料を一気に飲むと血糖変動が大きくなり食欲が暴走することがあるため、控えめな甘さの飲料を選んでください。

飲酒中の対策:ペース管理と選ぶべき飲食物

飲み始めたらコントロールの主役は「ペース」です。アルコール分解には時間がかかり、体が処理できる量は限られます。ここでの目安となる「標準ドリンク」は、日本では純アルコール約10 g(米国では約14 g)を指します。例としてビール中瓶500 mLは概ね約20 g(約2ドリンク)に相当します。経験則の「標準ドリンク1杯あたり1時間」は簡便な目安ですが、代謝速度には個人差が大きく安全を保証するものではありません。速飲みや一気飲みは血中濃度の急上昇と事故リスクを高め、二日酔いも重くなります[4][7]。グラスが空いたらすぐ次を飲むのではなく、必ず「お水かノンアル」をはさむことで翌日の体調が大きく違います[3]

同じアルコール量でも、蒸留や熟成、添加物によって「コンジナー(発酵・熟成に由来する微量成分)」の量が変わり、二日酔いの重さに影響することが示唆されています。ただし二日酔いに最も影響するのは総アルコール量であり、酒の種類より「量とペース」の管理を最優先にしてください[2]

「チェイサー」は単に水を足すより「飲むピッチを落とす」効果が重要です。1杯につき同量以上の水か炭酸水をはさみ、各杯を15~20分以上かけてゆっくり味わいましょう。乾杯直後はペースが速くなりがちなので前半ほど意識してゆっくりに。場の雰囲気で難しければ事前に店にノンアルやソフトドリンクの選択肢を確認しておくと安心です。アルコール0.5%未満のビールやワインテイスト飲料を取り入れるのも総アルコール量を抑える現実的な方法です。ただし「濃い酒を薄める」としても、薄めた分を同じ量だけ飲めば総アルコール量は変わらないため、杯数自体を抑えることが重要です。

カフェインとの併用には注意が必要です。エナジードリンクや濃いコーヒーとアルコールを同時に飲むと眠気や酔いの感覚が紛れ、飲み過ぎにつながりやすいことが指摘されています。カフェインは酔いを醒ますわけではなく判断力低下は残るため、眠気覚まし目的での併用は避けましょう。参考として、EFSAは一般成人で単回200 mg、1日400 mgまでのカフェイン摂取を通常の安全域と評価していますが、アルコールと同時摂取は推奨されません(安全域であっても併用のリスクは残ります)。

食べ物の選び方も胃腸に影響します。揚げ物の連続や激辛料理の重ね食いは胃酸分泌や粘膜への刺激を増やし胃もたれの原因になりやすい一方、刺身や冷菜だけでも冷えで胃の動き(胃排出)が鈍る人がいます。温かい汁物、豆腐料理、白身魚や鶏むねのグリル、根菜の煮物、海藻サラダ、きのこ料理などを適度に混ぜると消化負担を抑えつつ満足感が得られます。炭水化物は締めに一度に大量摂取するより序盤から少しずつ摂る方が血中アルコール濃度の急上昇を防ぎやすくなる可能性があります[1]

飲み会は長丁場です。途中で席を立ち軽く背伸びして水を一口飲むだけでもリセットになります。甘いデザートと甘いカクテルの重ね飲みは糖分とカロリーが増えて胃の停滞感を招くので、デザートはシェアや小サイズにして代わりに温かいお茶で締めるとよいです。

翌朝の対処法:二日酔いと胃もたれを早く楽にする

翌朝の不調は「脱水」「炎症」「睡眠の質低下」が重なって起きます。特効薬はありませんが順序よくケアすれば回復が早まります。まず水分と電解質。目覚めたら常温の水をコップ1杯、その後口渇や尿が濃い、めまいがある場合は経口補水液や薄めのスポーツドリンクを少量ずつ。WHO推奨の経口補水組成のように水・塩分・ブドウ糖のバランスが取れた飲み物は吸収が速く脱水改善に合理的です[5]。一気飲みは吐き気を誘うため10~15分ごとに少量ずつ飲みましょう

頭痛が強い場合は解熱鎮痛薬を使いたくなりますが選び方に注意が必要です。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬:イブプロフェン、アスピリン、ロキソプロフェン等)は胃粘膜を刺激し消化管出血リスクを高め、特に多量飲酒の翌日は危険が増します[6]使用するなら何か食べてから最小限の用量で。アセトアミノフェンは他のNSAIDsに比べて胃への刺激は少ないものの、飲酒と併用して大量摂取すると肝臓に負担がかかるため総量管理を厳重にしてください。肝疾患のある人は2,000 mg未満を目安に。持病や併用薬がある場合は事前確認を[7]。トアラセット錠などの配合錠にもアセトアミノフェンが325mgが含まれており量がダブりやすいです。

吐き気やむかつきがあるときは消化の良い朝食に切り替えましょう。温かい味噌汁やスープ、おかゆ、バナナ、ヨーグルト、柔らかく煮たうどんなどは胃に優しく電解質補給にも適します。冷たい油や刺激物は回復を遅らせます。生姜は吐き気緩和に古くから使われ胃の動きを助ける報告もありますが、生姜湯や料理での利用から試してください。

胸やけや胃のヒリヒリには短期的に制酸薬(制酸剤、アルギン酸含有製剤)やH2ブロッカーが有効です。即効性の制酸薬で症状を鎮め、必要ならH2ブロッカーを一時的に併用します[3]。ただし前夜に大量飲酒して嘔吐が止まらない、黒色便、激しい腹痛や意識障害がある場合は医療機関を受診してください。アルコールは睡眠構造を乱すため寝時間が長くても疲れが取れにくくなります。午前中は無理せず短い昼寝で補いましょう。カフェインは眠気の自覚を抑えるだけで回復を早めるわけではない点に注意です。

PPI(プロトンポンプ阻害薬)は効果が出るまで時間がかかるため、単発イベントの飲酒予防には向いていません。PPIは医師指示のもと短期使用に限るのが無難です。用法・用量を守り、ほかの薬を服用している人や持病がある人は薬剤師に相談を[3]

むくみやしびれ、動悸が強い時は急な大量の水分摂取は避け、塩分過多にならない範囲で薄めの水分を継続。汗をかく運動は脱水を悪化させるため控え、軽いストレッチや散歩程度にとどめ、サウナや長風呂は回復するまで避けましょう。翌日の飲酒は控えめにして肝臓と胃を休めるのが最善です。

民間療法について整理します。蜂蜜入りドリンクや果汁は低血糖によるだるさには助けになりますが万能ではありません。活性炭はアルコールそのものを吸着しないため二日酔い予防にはならず、大量のビタミン剤も即効で酔いを消すわけではありません。現時点で、二日酔いを確実に防ぐ・治すことが科学的に証明された薬やサプリはありません。基本は「飲む量・ペース・水分・睡眠」の積み重ねです

薬・サプリと併用の注意:安全に使うためのポイント

忘年会シーズンは普段の薬やサプリとアルコールが重なりやすい時期です。安全のため次の点に注意してください。

- 鎮痛薬の選び方とタイミング: NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は胃粘膜障害や消化管出血のリスクがあり、飲酒後の空腹時は避けるのが原則。使用するなら食後に最小限の量で。アセトアミノフェンは胃には優しい一方、飲酒と重なると肝毒性リスクが上がるため用量超過や多剤重複に注意を[6][7]。市販の総合感冒薬や鎮痛薬にアセトアミノフェンが重複していることがあるので成分表示を確認してください。

- 中枢抑制薬・その他の重要な併用注意: 睡眠薬・抗不安薬・オピオイド・一部の抗てんかん薬などの中枢抑制薬はアルコールと併用すると効きすぎたり、呼吸抑制や重大な事故リスクを高めます。メトロニダゾールや一部のセフェム系薬を服用中に飲酒するとひどく悪酔いするジスルフィラム様反応を起こす可能性があり、併用に注意が必要です。糖尿病薬は飲酒で低血糖を起こすことがあるため、食事を抜かない・低血糖症状に注意してください。過量に飲酒しないか飲酒を避けることが賢明です。

- サプリは「天然=安全」ではない: ウコン(クルクミン)やシリマリン(ミルクシスル)は肝臓保護をうたわれますが、飲酒前後に摂っても翌日の不調を確実に減らす十分な根拠は限定的です。一部のハーブはワルファリンや抗血小板薬、糖尿病薬と相互作用するため、心血管疾患や糖尿病の薬を服用している人は必ず主治医・薬剤師に相談してください。カリウムを多く含むサプリやスポーツドリンクの過剰摂取は腎機能に不安のある人には危険です。腎臓に問題がある人は摂取の可否や量を医師に確認してください[2]

ビタミンB1(チアミン)は一般的な忘年会レベルの飲酒前後に多量内服すれば二日酔いを防げるという根拠はありません。慢性的多量飲酒者や栄養不良が疑われる人では欠乏に注意が必要で医療現場で使われます。普段の食事で穀類・豆類・豚肉・ナッツなどから補うのが基本です

妊娠中・授乳中は飲酒を避け、未成年の飲酒は法律で禁止されています。社会的・医学的なリスクが高いため該当する場合は飲酒を控えてください。

厚生労働省は節度ある飲酒量や飲み方の目安を示しています。忘年会では基本に立ち返り「適量」「ゆっくり」「水をはさむ」を心がけ、週にノンアル日を作って肝臓と胃腸を休めましょう[4]

最後に実践用の簡単な行動計画をまとめます。忘年会の数日前から体調を整え当日は空腹で臨まない。乾杯後は水を並走させ濃い酒はソーダ等で割って飲むピッチを落とす(ただし薄めても同量を飲めば総アルコール量は変わらない)こと。料理は温かく消化の良いものを混ぜ甘味・揚げ物の連続を避ける。お開き後はぬるめのシャワーで体を温めコップ1~2杯の水を飲んで就寝。翌朝は経口補水を少量ずつ、消化に優しい朝食、必要なら胃薬や鎮痛薬を適切に使用。無理な運動は避け短い昼寝で回復をはかる。これだけで翌日の「仕事納め」も気持ちよく迎えやすくなります。

忘年会当日のチェックリスト(出発前~飲み会中):

1) 出発前に水1~2杯、軽い主食+たんぱく質を食べる。

2) 乾杯後は各杯15~20分以上かけ、水かノンアルを必ずはさむ。

3) 濃色の蒸留酒や甘いカクテルは量を絞り、食事は温かい汁物・豆腐・白身魚・根菜を混ぜる。

4) エナジードリンクや濃いコーヒーとの併用は避ける。

5) 終盤に炭水化物を詰め込みすぎない

6) 帰宅後は水分補給して就寝.

翌朝リカバリー手順:

1) 起床時に常温の水、その後経口補水を少量ずつ。

2) おかゆ・スープ・バナナなど消化の良い朝食。

3) 胸やけには制酸薬やH2ブロッカーを短期的に。

4) 頭痛には食後に最小限の鎮痛薬を選択(NSAIDsは胃に注意、アセトアミノフェンは総量管理)。

5) 軽い散歩と短い昼寝、サウナは避ける

6) 異常が強いときは医療機関受診.

強い意志に頼るより「仕組み」で整えるのがコツです。席に着く前から水と食事、席では水を並走、翌朝は静かに整える。この3点で忘年会の満足度を落とさず翌日の自分を守れます。楽しい年末を安全に賢く過ごしましょう。

参考文献

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