選定療養はどんなときも対象となるのか?整理してみよう
私たちは普段、病院や薬局に行く際、保険証を提示することで医療費が大幅に軽減されています。しかし、長期収載品に対する選定療養が始まり一部保険が外れ、特別な料金が発生するようになりました。この記事では、選定療養がどのようなとき対象となるか、そして公費医療や生活保護、公害医療などにおいて自己負担が発生するかを説明します。
まずは例外から、公害医療は選定療養の対象外
選定療養が適用されない唯一の大きな例外は、公害健康被害補償制度の対象者です。これは、水俣病や四日市喘息などの公害による被害者を対象とした制度であり、彼らが長期収載品を使用する場合は、選定療養費の負担が発生しません。この特例措置は、国が公害被害者を救済するために設けたものです。
選定療養は健康保険法による医療に対する仕組みであるため、別の仕組みで運営される公害は対象外となります。
厚生労働省の示したポスターにははっきりとこのことが書いていないので非常にわかりづらい。このことは厚生労働省や薬剤師会などから発出される通達で確認が取れます。が、ポスターに描いても良かった気がします。
生活保護は選定療養の費用は発生しない代わりにジェネリックしか使えない(原則)
生活保護を受けている人は、基本的にジェネリック医薬品が調剤されるため、選定療養の自己負担はありません。2024年10月1日から処方箋のルールが変更され、生活保護でも特定の条件を満たさない限り長期収載品は処方できなくなり、実質的にすべてジェネリックが使われることになります。
これは生活保護の場合は選定療養の特別の料金を請求することが出来ないためです。特別の料金を支払えば長期収載品を選択できるということができません。
長期収載品の方を使用したいと思っても特定の条件を満たさないと使用できません。
公費医療も選定療養の対象になる
公費医療を受けている人も、選定療養の対象となります。公費医療は、国や地方自治体が特定の条件に該当する人に対して医療費の一部を助成する制度です。もともとその人が持っている保険の自己負担分を公費で補填するため、自己負担分が軽減されかつ一定上限までしかかからない場合や全額免除されるケースがあります。
しかし選定療養は、公費による自己負担の免除とは別枠になる為、特別の料金が通常通りかかることになります。
公費医療の種類と例
以下は代表的な公費医療の例です。
- 小児医療助成:多くの自治体が実施している制度で、小児(主に中学生まで)の医療費を助成しています。この制度により、子どもが医療を受ける際の負担が大幅に軽減されますが、ジェネリック医薬品が推奨される場合に長期収載品を希望すると、選定療養費が発生することがあります。
- 肝炎治療助成:B型肝炎やC型肝炎の患者を対象に、抗ウイルス治療の一部を公費で助成する制度です。これにより、特定の医薬品や治療に対する自己負担が軽減されますが、選定療養費の対象となる場合があります。
- 特定疾患(難病)治療費助成:難病の患者が必要な治療を受けやすくするために、特定の治療費を助成する制度です。これも同様に、選定療養が適用される場合には、自己負担が発生することがあります。
意外?労災保険も対象となる
労災保険は、企業が保険料を全額負担しており労働者の健康を支える重要な仕組みです。仕事中や通勤中に負ったケガや病気に対する医療費を全額補償する制度で、労災指定の医療機関で自己負担なく治療を受けられます。
ただし、労災保険でもジェネリック医薬品がある場合に長期収載品を希望する際は、選定療養の対象となり一部自己負担が発生します。
保険加入者すべてを対象とする
私たちは一般的に何らかの保険制度に加入しています。先に述べた公害医療以外は、すべての人に選定療養は適用されます。選定療養は、ジェネリック医薬品がある場合に長期収載品を希望する場合などに発生する自己負担です。
主な保険制度には主に以下のものがあります。
社会保険(社保)
社会保険は、主に会社で働く人やその家族が対象です。パートやアルバイトでも、条件を満たすと加入が必要になります。企業は従業員の保険料を一部負担し、医療や年金の保障が受けられる仕組みです。保険料は給料から自動的に差し引かれ、企業と従業員で半分ずつ負担します。収入が多いほど保険料は高くなります。大企業では、独自の保険組合があることもあります。働いている人は強制的に加入する必要があります。
国民健康保険(国保)
国民健康保険は、自営業者、フリーランス、農業従事者、パートタイム労働者、退職者など、企業の社会保険に加入していない人が対象です。市区町村が運営し、保険料は世帯の所得に基づいて計算されます。医療費の一部を保険で負担し、加入者は3割程度の自己負担で医療を受けられます。手続きは自分で行い、保険料は全額自己負担です。
後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者や、65歳以上で一定の障害がある人を対象とした医療保険制度です。この制度は各都道府県の後期高齢者医療広域連合が運営し、保険料は加入者の年金から天引きされます。自己負担は1割または2割で、所得に応じて変わります。この制度により、高齢者が安定した医療サービスを受けられるように支援されています。
非課税世帯も例外ではない
保険制度に加入していれば例外はないので非課税世帯も長期収載品を希望した場合は特別の料金は発生します。医療上の必要性が認められる場合を除き、自己負担が求められます。
まとめ
選定療養は、医療費負担をより公平に分配するために設けられた制度ですが、適用されるかどうかは保険証の種類によるというよりも、どの制度により医療を受けるかによって異なります。社会保険や国民健康保険に加入している場合、ジェネリック医薬品が推奨される場面で長期収載品を選択すれば、選定療養費が発生します。これは非課税世帯も労災保険も例外ではありません。
また、公費医療には小児医療助成、肝炎治療、特定疾患治療などがあり、これらの制度を受けていても、選定療養が適用される場合があることを理解しておく必要があります。
一方、生活保護を受けている方は原則としてジェネリック医薬品が調剤されるため、自己負担が発生しません。
公害医療は選定療養の対象外であり、自己負担が発生しない特例となります。
医療は継続した治療を要することもあり費用負担は年間ベースで考えた方が良さそうです。ジェネリック医薬品を選択するするかどうかいま一度考えるタイミングかもしれません。これを機会に、選定療養がどのように適用されるかを理解し、医療費負担について考えてみてください。
以下参考資料リンク集