今後は必須級!高額療養費制度を使おう、マイナ保険証活用術

マイナ保険証を利用することで、突然の高額な医療費を抑えてくれる高額療養費制度が適用されます。また年間の医療費に応じて納税額から一定金額が戻る医療費控除の手続きも簡単に済みます。このマイナ保険証の隠れざる威力があまり知られていないので、マイナ保険証により便利になる仕組みや使用しない場合のデメリットについて解説します。高額療養費は上限引き上げも議論されているので今のうちに覚えて損はありません。

マイナ保険証により高額療養費制度を受けられる仕組み

高額療養費制度は、一ヶ月の医療費が一定の上限額を超えた場合に、その超過分が払い戻される制度です。この制度は、予期しない高額な医療費が家計に及ぼす影響を軽減するために導入されました。この制度により、大金の医療費が発生した場合でも家計への負担を緩和できます。その人の所得に応じて限度額の上限が設定され、実際にかかった金額より大幅に抑えられます。あらかじめ限度額適用認定証を取得するか、一度全て支払い後で払い戻しを受ける方法があります。

マイナ保険証を使用するとこの制度が自動的に適用されます。使用手順としては、医療機関や薬局の窓口でマイナ保険証を提示し、オンライン資格確認を行い同意することで、保険資格や所得区分が即時に確認され、自己負担限度額が適用されます。紙の限度額適用認定証は不要です。この背景には、以下の仕組みがあります。

  1. マイナ保険証による所得区分の確認
    マイナンバーは税務署や市区町村の住民税情報と連携されており、所得区分を把握できるようになっています。マイナ保険証を医療機関で提示すると、個人の所得(○○○万円)が知られることなく所得区分だけが医療機関に分かる仕組みになっています(例:一般所得者、住民税非課税など)。
  2. 所得区分に基づく上限額の適用
    1.により所得区分が分かるので限度額確認証が無くても患者個々の高額療養費の上限が計算できるようになります。医療機関の窓口での支払いが負担上限額までに抑えられます。
  3. 情報は守られる
    マイナンバーカードのICチップには、税や年金の情報、病歴等、プライバシー性の高い情報は記録されません。マイナンバーはあくまで情報にアクセスするための鍵のような役割なので、マイナンバーカードだけでは、税や年金、医療等に関する情報を引き出すことはできません。医療従事者側にも伝わるのは所得区分だけで所得は把握できません。

高額療養費のルール

計算方法がやや複雑ですがまとめると、下記がポイントです。

  • 所得に応じて上限額も上がる
  • 病院、薬局によらず個別の会計が21,000円以上が計算対象
  • 70歳以上では21,000円ルールが撤廃される
  • マイナ保険証か限度額認定証が無ければ立替え払いが必要
  • 同じ世帯(保険が同じ)なら医療費は合算して限度額を計算できる

高額療養費の上限額は年齢、所得区分、月内の総医療費により決まります。例えば一般所得者の70歳未満の場合、月あたりの自己負担は「80,100円」に「総医療費 - 267,000円」の1%を追加した額が上限となります。

  • 自己負担上限額と所得区分一覧と用語
    • 標準報酬月額:社会保険料の決定に用いる数値。一定期間の給与の平均で決められるので12かけても年収とは一致しない。給与の目安になる金額。
    • 総医療費:保険適用される診察費用の総額(10割)
    • 多数回該当:過去12か月間で高額療養費の支給が4回以上ある場合、5回目以降の自己負担限度額が軽減されます。

70歳未満の方の区分

所得区分自己負担限度額多数回該当時(過去12か月で4回以上適用時)
① 区分ア(標準報酬月額83万円以上の方)
(報酬月額81万円以上の方)
252,600円+(総医療費※1-842,000円)×1%140,100円
② 区分イ(標準報酬月額53万〜79万円の方)
(報酬月額51万5千円以上〜81万円未満の方)
167,400円+(総医療費※1-558,000円)×1%93,000円
③ 区分ウ(標準報酬月額28万〜50万円の方)
(報酬月額27万円以上〜51万5千円未満の方)
80,100円+(総医療費※1-267,000円)×1%44,400円
④ 区分エ(標準報酬月額26万円以下の方)
(報酬月額27万円未満の方)
57,600円44,400円
⑤ 区分オ(低所得者)(被保険者が市区町村民税の非課税者等)35,400円24,600円

70歳以上75歳未満の方の区分

被保険者の所得区分自己負担限度額
外来(個人ごと)外来・入院(世帯)
① 現役並み所得者現役並みⅢ(標準報酬月額83万円以上で高齢受給
者証の負担割合が3割の方)
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
[多数該当:140,100円]
現役並みⅡ(標準報酬月額53万〜79万円で高齢受
給者証の負担割合が3割の方)
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
[多数該当:93,000円]
現役並みⅠ(標準報酬月額28万〜50万円で高齢受
給者証の負担割合が3割の方)
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
[多数該当:44,400円]
② 一般所得者(①および③以外の方)18,000円(年間上限14.4万円)57,600円
[多数該当:44,400円]
③ 低所得者Ⅱ(※3)Ⅰ(※4)8,000円24,600円15,000円
  • ※3被保険者が市区町村民税の非課税者等である場合です。
  • ※4被保険者とその扶養家族全ての方の収入から必要経費・控除額を除いた後の所得がない場合です。
  • 現役並み所得者に該当する場合は、市区町村民税が非課税等であっても現役並み所得者となります。

参照:協会けんぽ|高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)

高額療養費制度の上限額は二段構えになっており、総医療費が267,000円未満の時は上限額は80,100円となり、総医療費が267,000円を超えると超えた額の1%分だけ上限額は上がります。

ただし、個別の支払いが「21,000円以上」でなければ合算対象とならないルールがあり、例えば薬局での18,000円の支払いは対象外となります。そのため、小規模な支払いが複数回あった場合でも、合計金額ではなく個別の支払い額が基準となります。そしてこの「21,000円以上」でなければ合算とならないルールは70歳以上では撤廃され、すべての医療費が高額療養費の計算対象となります。このため、より多くの医療費が高額療養費制度の枠に含まれる可能性があります。あらかじめ保険者に申請して高額療養費限度額認定証を入手しておけば窓口での負担金額を窓口ですぐに抑えられます。限度額認定証が無ければ一度は立替え払いで、2~3か月後から払い戻しです。同じ保険を使っている家族は世帯内合算が行えます。それぞれの医療費について合計して限度額を超えている部分は医療費を抑えられます。

一般所得者で一人世帯なら

例えば、がんで入院し支払いが以下の場合を考えます:

  • がんで入院:総医療費(保険適応していない金額) 125.4万円 
  • 自己負担金額3割で 37.6万円

高額療養費制度の計算は「80,100円 + (総医療費 - 267,000円) × 1%」という式で計算されます。この式は、患者の所得区分に基づいて一ヶ月の自己負担額の上限を算出するために使用されます。この例の場合、

  • 総医療費 - 267,000円 = 1,254,000円 - 267,000万円  ➡ 987,000円
  • 987,000円× 1% = 9,870円
  • 80,100円 + 9,870円 = 89,970円

したがって、この場合の自己負担限度額は 89,970円となります。入院時にマイナ保険証により受付を行えば自己負担の376,000円ではなく、高額療養費制度を適用した89,9870円の支払いで済みます。家計への負担をかなり軽減してくれます。

総医療費125.4万円などの高額な医療なんてものがあるのかと疑問に思うかもしれませんが、現代の医療は技術の進歩に伴い医療も高度な技術を使用しているので高額になってきています。

令和5年版の【疾患別の主な高額要因】ですが、月の治療費薬価のみでも下記のような高額治療があります。

  1. ➢ 脊髄性筋萎縮症
    • ゾルゲンスマ(薬価:約16,708万円)
  2. ➢ B細胞性急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
    • キムリア、ブレヤンジ、イエスカルタ(薬価:約3,265万円)
  3. ➢ 血友病A ヘムライブラ(薬価:約29万円~122万円)
    • ※従来のノボセブン等も併用されている。

多数回該当

高額療養費制度では、直近12か月以内に同じ世帯で高額療養費の支給が4回以上あった場合、5回目以降は自己負担限度額がさらに引き下げられます。例えば、一般所得者の場合、通常の上限額80,100円が44,400円に減額されるため、頻繁に医療を必要とする世帯の負担が大幅に軽減されます。この制度は、高額な医療費が繰り返し発生する場合に特に有効です。

世帯合算 

世帯内での高額療養費制度の適用により、家族全体の医療費が軽減されます。一例として、一般所得者(70歳未満)家族構成:夫、妻、子ども(3人とも同じ保険に加入)なら、

  • 1か月の医療費
    • 夫の医療費:病院Aで19,000円、病院Bで61,000円(合計80,000円)
      → 病院Aは21,000円未満のため合算対象外、病院Bのみ合算可能。
    • 妻の医療費:病院Cで25,000円(合算対象)
    • 子どもの医療費:病院Dで40,000円(合算対象)
  • 合計対象額
    • 病院B(夫):61,000円
    • 病院C(妻):25,000円
    • 病院D(子ども):40,000円
      → 合計:126,000円
  • 自己負担限度額の計算
    • 80,100円 + (126,000円 - 267,000円)×1% = 80,100円(上限額)
    • ※注()内はマイナスになるので計算しない
  • 計算結果
    • 自己負担額:80,100円
    • 払い戻し額:126,000円 - 80,100円 = 45,900円

この例では、家族全員の医療費を合算し、限度額超過分が払い戻されます。ただしマイナ保険証で高額療養費制度を利用した場合、異なる薬局や病院の間で会計の情報を共有できないので施設単位での高額療養費の適応になり世帯内合算は別途手続きが必要になります。協会けんぽのリンク貼っておきます。

協会けんぽホームページ|健康保険高額療養費支給申請書

マイナ保険証の弱点、かかりつけ薬局のススメ

マイナ保険証を利用しても、異なる医療機関や薬局間での会計情報の直接共有は行われません。ここが弱点です。そのため、同一月内に複数の医療機関で入院や外来診療を受け、それぞれで自己負担限度額を支払った場合、各医療機関ごとに限度額適用が適用されます。この場合、各医療機関での支払いが自己負担限度額を超えた分については、後日、高額療養費の申請を行うことで払い戻しを受けることができます。

この弱点を踏まえると、

受診する医療機関が多岐にわたる場合には、かかりつけ薬局を決めておきなるべく一か所で調剤を受けるようにするのがオススメです。一か所で調剤受ければ21,000円以上の会計は全て月内で合計されて限度額の計算がされます。高額でめずらしい治療の場合は病院をまとめることは困難なので、薬局だけはまとめておくと便利でしょう。希少な医薬品になると取り扱いに縛りがありすぐに納入できない医薬品もあるのであらかじめかかりつけ薬局に相談して下さい。

医療費控除と高額療養費制度の関係

高額療養費制度と医療費控除は、医療費負担を軽減するための別々の制度ですが、併用することが可能です。高額療養費制度は、1か月の医療費が一定の上限額を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです。一方、医療費控除は、年間の医療費が一定額を超えた場合に、確定申告を通じて所得控除を受けられる制度です。

併用する際には、「保険金などで補填された金額」に加えて医療費控除の計算時に高額療養費で補填された金額を差し引く必要があります。差し引いた後の年間医療費が10万円(または総所得金額の5%)を超える場合、その超過額が医療費控除の対象となります。

また、高額療養費の申請期限は診療月の翌月1日から2年間、医療費控除の申請期限は医療費発生の翌年1月1日から5年間となっています。申請を忘れないよう、期限内に手続きを行うことが大切です。

これらの制度を併用することで、医療費負担の軽減効果を最大限に活用できます。ただし、申請手続きや計算方法に注意が必要なため、詳細については下記国税庁のホームページやお近くの税務署の窓口に相談することをおすすめします。国税庁ホームページにはQA検索やチャットボット、電話相談もあります。

国税庁ホームページ 医療費控除

具体例 高額療養費と医療費控除の併用

  • 総医療費:80万円
  • 高額療養費での払い戻し:40万円
  • 自己負担額(年間):40万円
  • 医療費控除の計算:40万円 - 10万円 = 30万円
  • 控除額の計算:30万円×税率

この30万円が医療費控除の対象となり、確定申告を行うことで所得税や住民税が軽減されます。戻ってくる額は控除対象となる金額に税率をかけて計算します。控除額のすべてが返ってくる訳ではなく、住民税から戻されるので控除額に税率をかけます。高額療養費制度と医療費控除を併用することで、医療費負担の軽減効果がさらに高まるため、これらの仕組みを理解して最大限活用しましょう。

e-Taxとマイナポータルの連携でさらに医療費控除は便利に

従来の方法では、領収書を保管し、合計金額を計算して申告する手間が必要でした。マイナ保険証をマイナポータルと連携させれば、医療費控除の手間が大幅に軽減されます。医療費のデータが自動的に収集され、e-Taxを使えば簡単に申請可能です。条件により領収書を整理したり管理したりする必要がなくなり、確定申告がスムーズに行えます。いくつか注意点もあるので参考にしてください。

マイナポータル利用時の注意点

  • 保険診療以外は管理外
    マイナポータルで確認できるのは「保険診療」に関する医療費のみです。自費診療や通院費、ドラッグストアでの医薬品購入などは反映されません。
  • 医療費通知情報の更新タイミング
    確定申告用の1年分の医療費データは、翌年の2月9日にまとめて取得できます。それ以前に申告する場合は、自動入力は使えません。
  • 領収書保存が必要な場合
    マイナポータル経由で申告した医療費は領収書の保存義務がありませんが、それ以外の領収書は5年間保存する必要があります。特にジェネリック医薬品のある長期収載品(先発の一部)を希望して選定療養費を払っている人はその時の領収書が必要ですのでご注意を。
  • 家族分の申告には代理人設定が必要
    家族分の医療費控除を申告するには、マイナポータルで代理人設定を行い、家族全員がマイナンバーカードを取得している必要があります。具体的な手順については、以下の国税庁の公式ページをご確認ください。

マイナポータルと連携した所得税確定申告手続|国税庁

マイナ保険証の利用におけるメリット・デメリット比較

以下の表に、マイナ保険証を利用する場合と利用しない場合のメリットとデメリットをまとめました。

項目マイナ保険証を利用する場合マイナ保険証を利用しない場合
高額療養費制度の適用窓口で即時適用。限度額を超える支払いが抑えられる事前に限度額適用認定証を申請していない場合、3割負担の全額を一時的に支払う必要あり
立替負担なし(複数医療機関にまたがる場合は必要)あり(払い戻しまで1〜2ヶ月程度の時間がかかる)
申請手続き不要必要(申請書類の準備と提出が求められる)
計算の正確性自動で計算されるためミスが発生しにくい合算対象外の支払いを考慮する必要があり、計算ミスのリスクがある
医療費控除の併用高額療養費で軽減された額を除いた残額が対象となり、申告が容易払い戻し額を正確に計算する手間が増える
マイナポータルとの連携連携行えば保険適応分は領収書の保管が不要なし(領収書の保管が必要)

マイナ保険証の利用は、申請手続きの簡素化や立替負担の軽減といった点で非常に有利であることがわかります。マイナ保険証を使わない場合、事前に「限度額適用認定証」を取得しておかないと、窓口での支払いが高額療養費制度の上限額に反映されません。また、窓口での支払いが通常の3割負担のまま計算されるため、上限額を超える高額な立替払いが必要になります。立替負担は家計に大きな負担を与えます。

同一月内に複数の医療機関や薬局を利用した場合、それぞれの窓口で個別に自己負担限度額が適用されるため、各施設で限度額までの支払いが発生します。この場合、各医療機関や薬局での支払い額を合算し、自己負担限度額を超えた分については、後日、保険者に申請して払い戻し(高額療養費)の手続きを行う必要があります。それでもマイナ保険証を使わない場合よりは各医療機関での負担限度額までは費用が抑えられます。

高額療養費を後日申請する際には、領収書や各種書類を保管し、加入している保険者へ申請を行う必要があります。申請後、払い戻しまでには通常3ヶ月程度かかります。また、申請を忘れると払い戻しを受けられない可能性があるため注意が必要です。

関連記事

 結論

 マイナ保険証を利用することで、高額療養費制度の適用がスムーズに行われ、立替負担が軽減されるだけでなく、申請手続きの簡略化も実現します。一方で、利用しない場合は申請手続きや一時的な立替負担が増えるため、制度を最大限活用するためにはマイナ保険証の登録と利用をおすすめします。

マイナ保険については賛否両論ありますが利用者側としてはメリットが大いにあると感じています。この仕組みを正しく理解し、医療費負担を軽減するためにぜひマイナ保険証を活用してください。

閲覧上位記事