薬剤師に見せて飲み合わせを確認してもらう

私は10数年のキャリアでお薬手帳にて併用薬の状況に気がつき、この人の命を救ったかもしれないと思ったことが2回ありました。もう2~3万人のお薬手帳を見ているはずですが、そのうち2名です。他の薬剤師はもっと経験があるかもしれません。お薬手帳は実は自分を守るツールになります。

1993年ソリブジン薬害事件が発生しました。異なる医療機関からそれぞれソリブジン(帯状疱疹治療薬)とフルオロウラシル系薬剤(抗がん剤)が処方されこの2つを併用した患者が15名亡くなりました。ソリブジンがフルオロウラシル系薬剤の体内での分解を抑制したことによるフルオロウラシル系薬剤の蓄積が原因でした。病院および薬局にて併用されている薬の確認が不十分であったことによる飲み合わせの悲劇です。全国で大きく報道され、これまで見逃されていた薬の飲み合わせに焦点が当てられました。その対策も急がれお薬手帳が登場しました。

お薬手帳は薬局での自己負担額割引も受けられる

2022年現在、ソリブジン事件から29年が経ちました。お薬手帳は薬局で処方せんのお薬を受け取る際に持参すると、3か月以内の再受診時には自己負担額が安くなります。3割負担で40円、2割負担で20円、1割負担で10円の値引きです(2022年4月に少し金額が変わるはずです)。

10円から40円って大きくないですか?今は普通預金の金利が0.001%なんてザラです。1万円の普通預金の年利が10円です。一か月に一回の受診で10円割引なら12万円分の普通預金の金利分もらえた事になります。40円割引なら48万円分の普通預金金利…ちょっと嫌らしい計算でしたね。やめときましょう。でも、薬の飲み合わせを薬局でチェックしてもらえるだけでなく割引も受けられるのは得しかないと思いませんか。

お薬手帳は何でもよい

薬局で働いていると実は様々なお薬手帳に出会います。名刺サイズのメモ帳や、自作の押し花を表紙にした手帳、中年男性でもリラックマのカバーをかけたかわいい手帳(奥さんか娘さんにプレゼントされた?)、もちろんその薬局オリジナルのものや、地域の薬剤師会が発行しているものを配布している薬局もあり様々です。自分でデコっても面白いと思います。難しいことは考えず、愛着が持てて携帯できるものであれば何でもよいです。調剤ごとに薬局が薬の内容を書いたラベルを発行してくれます。

これは筆者が副鼻腔炎と診断されるまえにお薬手帳に書いておいた内容。症状をまとめておきます。中待合で待っているときに手帳を見返して伝えたいことを頭の中で整理しておきます。適当に話すと言い忘れるので。今のお薬手帳ラベルには残を書く欄がついているものも多いのでそちらに書いても良い。薬局の薬剤師も間違いがないかダブルチェックできます。

電子お薬手帳という選択

お薬が少なくて、毎回同じなので手帳は持参したくないという方でも持って良いと思ってもらえるかもしれません。スマートフォンに入る電子お薬手帳があります。無料のアプリが多数公開されていますのでぜひ活用してください。紙の手帳を持ち歩かなくてもよいですし、薬局発行のQRコードを読み込むもの、あるいは薬局のコンピューターと連携しており自動で調剤された薬の情報がアプリに入ってくるものもあります。飲み忘れ対策にアラーム機能がついたものもあるようです。

電子お薬手帳と紙のお薬手帳は両方持ったほうが良い

大規模な災害時には病院も薬局も被災するので、お薬手帳を持っていない場合は調剤されたお薬の情報がなく、いつも飲んでいる薬がなくなってしまった場合に被災先の仮設診療所ですぐにお薬を手に入れられない場合があります。そんなときにお薬手帳を持っているとすぐにいつも飲んでいる薬またはそれに近いものが渡せます。持病によってはお薬を切らすことができない方もいらっしゃいます。血圧の薬、糖尿の薬、睡眠薬、抗がん剤、挙げたらきりがありません。日本は地震が多く発生し、大雨被害で甚大な被害をうけた地域があることは記憶に新しいところです。

先の話と矛盾するようですが、実は電子お薬手帳と紙のお薬手帳は両方持ったほうが良いのです。

災害時には停電することが多く、携帯の充電は持って1日か2日程度、ネットも電源喪失で基地局も同じく1日か2日程度で機能しなくなるのですぐに電子お薬手帳が使えなくなります。そういうときに紙の手帳が活躍します。毎回同じ薬でも内容を記録した手帳が一冊あれば備えあれば憂いなしです。

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