電子処方箋とは何か?

 これまで処方箋は紙で発行されていました。処方箋をどんな理由であれ薬局に渡さなければならないので、調剤は場所と時間に縛られていました。どんなにお気に入りの薬局があっても処方箋発行から4日以内に処方箋を渡せる距離にないからです。

令和5年1月から電子処方箋の発行が始まります。

電子処方箋は紙の処方箋のように持ち歩く必要がありません。医師は電子処方せんを発行してオンライン資格確認のシステムを利用して電子的に保存します。あとは患者の意思で自分の好きな薬局(電子処方せん対応)で調剤を受けられます。薬局に行ったときにマイナンバーカードにてオンライン資格確認を受ければ電子処方箋を薬局に渡すことができます。オンライン服薬指導に対応している薬局ならば薬局に直接行く必要もありません。

患者にとってみれば、電子処方せんは場所と時間に縛られなくなる手段になります。

電子処方箋によるお薬受け取りの流れ・メリット

どこの医療機関と薬局が電子処方せんに対応しているか?

 いまのところ、かかりつけの病院や薬局なら対応しているか直接聞く方が早いです。
厚生労働省はマイナンバーカードの健康保険証利用にすでに参加している医療機関のリストを公表しています(下記にリンクあり)。電子処方箋はオンライン資格確認システムを利用して運用するので、この載っているところは1月以降から順次電子処方箋の発行を開始するはずです。このリストを活用して検索できるサイトも公表されています。マイナンバーカードの健康保険証利用対応の医療機関・薬局についてのお知らせ

 医療機関側ではさまざまな準備があるので、公表されているリストと電子処方せん発行医療機関と必ずしもイコールではないので今年初めのうちは確認は必要です。電子処方箋の発行の準備ができている医療機関と、電子処方箋の受付の準備ができている薬局にはこのポスターが張られているはずなので探してみてください。

ただし薬剤師の電子署名に用いるHPKIカード(電子処方せんに押すハンコのようなもの)の発行が遅れているので(医師はどうでしょう?)全国で一斉に始まるというほどではなく数か月かかり全国で始まると思います。

電子処方箋による医療の質の向上

厚生労働省が掲げているのは医療の質と安全性の向上です。

オンライン資格確認時に同意することによってこれまでの調剤の履歴や検査や検診の内容を病院や薬局が過去3年分閲覧できるようになります。

あまり知られていない印象ですが、
より安全な医療を受けるには医療従事者にどれほど適切な情報を提供できるかが重要です。

他の薬物治療をふまえて医師が薬を処方することができれば薬による飲み合わせの害を避けやすくなります。
薬局の薬剤師も同様のチェックをします。ダブルチェックです。

例えば、A病院で処方された薬剤Aによる副作用を新たな病気と思い、B病院にかかり薬剤Bを処方されまた同じ理由でC病院へ行き・・・ のように薬が薬と呼ぶ”薬物治療カスケード”という事例があります。薬の副作用は併用する薬の種類が増えるごとに(一般的には5~6種類以上)リスクが上がると言われています。

もちろん治療上必要だから出してる薬です。
しかし、

"薬を飲み得られる効果"と"飲み合わせにより生じる害"のバランスが悪いと、薬剤師から医師へ問い合わせをすることもしばしばです。必要な薬なのか、薬の飲みすぎなのか、専門家である医師・薬剤師によるチェックは常にあった方が良いのではないでしょうか。

国の狙いとしては薬のもらいすぎを防いで財政的なメリットを出そうというのがあるでしょう。
医療を受ける側にとっても無駄な医療費の削減につながるのであれば悪くない話です。

お薬手帳の弱点

現在はお薬手帳が世間にも浸透し併用しているお薬のチェックは医師や薬剤師がしやすくなりました。一部市販のアプリがあるものの、今でも紙媒体による確認がメインです。

つまり紙のお薬手帳の弱点は健在です。

お薬手帳を忘れてしまった時、ラベルを貼り忘れた時、お薬手帳を複数に分けてしまった場合にお薬手帳による”現時点で併用している薬物治療の情報共有"のメリットが無くなってしまいます。

こういう意味では、電子処方箋は紙の処方箋のデメリットだけでなく紙のお薬手帳の盲点もおぎなってくれるものになるでしょう。マイナンバーカードでオンライン資格確認ができれば直近併用している薬は過去3年分閲覧できます。

デメリットは何か

医療用医薬品をいろいろな病院をわたり歩いて"症状"を訴える事でかき集め、転売している人には不都合でしょう。なにせすべての調剤歴がばれてしまい医師が処方を拒否するか、薬局がそのお薬が本当に必要か聞き取りするなど、医療従事者にとってみれば対策が取れます。

睡眠薬や安定剤などの向精神薬は特に規制が厳しいのでこの点チェックは必ずしますし。

某フリマサイトでは、医療用医薬品が転売されています。
薬剤師からすれば素人が適当に医療用医薬品を飲もうというのはゾッとします。
命の保証はないです。

薬そのものの危険性もさることながら、
”それがはたして本物の薬なのか”が分からないところが一番怖いところです。
確かな物を用意する調剤薬局の仕事を甘く見てはいけません。

転売が横行しているなら、必ず偽物の流通があります。
原価ゼロに等しい偽物が一番儲かりますので人の不安を食い物にして荒稼ぎをしようとする者はまぎれてくるはずです。フリマでは医療用医薬品を購入しないようにしましょう。


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