
スマホで起こりやすい目の不調とは?ドライアイと眼精疲労の正しい対策
スマホは便利ですが、そのぶん目には負担がかかります。画面を近い距離で見続けると、目の表面は乾きやすくなり、ピントを調節する筋肉も休みにくくなります。その結果、「しょぼしょぼする」「かすむ」「重い」「まぶしい」「肩までつらい」といった不調が起こりやすくなります。こうした不調はひとまとめにされがちですが、実際にはドライアイが中心のこともあれば、眼精疲労が中心のこともあります。しかも、この2つは重なって起こることも少なくありません。
大切なのは、症状をただ我慢しないことです。乾きが強い人に必要なのは涙の環境を整えることですし、見続ける負担が大きい人に必要なのは休み方や見る距離の見直しです。合わない目薬を何となく使い続けるよりも、原因に合った対策をしたほうが効果は出やすくなります。この記事では、スマホ時代に起こりやすい目の変化を整理し、毎日の生活で実行しやすい対策を順番に説明します。
スマホ使用で目に起こる変化とは?乾きとかすみの原因
まず知っておきたいのは、目は「表面」と「ピント調節」の両方で働いているということです。スマホを見ている間は、黒目の表面を涙がなめらかに覆い、同時に目の中では近くにピントを合わせる作業が続いています。スマホの目の不調は、涙の膜の乱れと、近くを見続ける負担が重なって起こりやすくなります。
乾きとかすみの原因として特に大きいのは、涙の膜が乱れることです。ドライアイは、涙と眼表面のバランスが崩れ、乾燥感や刺激感、見えにくさを起こす多因子の病気と考えられています。しかも、単なる水分不足ではなく、涙の安定性の低下や浸透圧(涙の濃さのような指標)の変化、眼表面の炎症が関わることがわかっています[15]。そのため、「少し乾くだけ」と軽く考えないほうがよい状態です。
スマホを長時間見る生活では、まばたきの回数が減ったり、まばたきが浅くなって完全に閉じきらない不完全瞬目が増えたりして、涙の膜が乱れやすくなります。画面を目線より高い位置で見ていると、目の表面が広く露出してさらに乾きやすくなります。すると角膜の表面が均一でなくなり、ピントが合っていても、にじむ、かすむ、ちらつくように感じます。ドライアイでは、患者さんが訴える乾きや不快感が強くても、検査値とぴったり一致しないことは珍しくありません[9][11]。つまり、「見た目は大したことがないから気のせい」とは言えないのです。
環境も症状を強めます。空気の乾燥、風、気流、汚染物質などは、目の表面への負担を増やし、乾燥や刺激を悪化させます[19]。動物実験でも、低湿度の環境では涙の分泌低下、角膜染色の悪化、結膜の杯細胞(涙を安定させる成分に関わる細胞)の減少といったドライアイ様の変化が起こっています[8]。スマホそのものだけでなく、エアコンの風が当たる部屋、乾いたオフィス、冬の暖房環境が重なると、症状はさらに出やすくなります。
また、症状は夕方に強くなりやすいという特徴もあります。乾きや刺激感は一日の後半で強まる傾向があり、日中の開瞼状態や作業の積み重ねが影響すると考えられています[7][9]。朝は平気でも、夕方になると急に目がつらくなる人は、このパターンに当てはまりやすいです。
もう一つの原因が、近くを見続けることで起こる目の酷使です。スマホでは画面が小さいため、文字を追う、明るさの変化に適応する、細かい情報を見分けるといった作業が続きます。すると、目の周りの筋肉や、頭痛・肩こりにつながる緊張も起こりやすくなります。ドライアイによる見え方の不安定さがあると、さらに無理に見ようとして疲れが強くなるため、ドライアイと眼精疲労は実際には深く関係しています。
ドライアイと眼精疲労の違いを正しく知ろう
ドライアイと眼精疲労は似ていますが、同じものではありません。ドライアイは主に「目の表面」と「涙の質・量・安定性」の問題です。一方、眼精疲労は「見続ける負担が積み重なり、休んでもつらさが残る状態」を指します。目だけでなく、頭痛、首こり、肩こり、集中しにくさにまで広がることがあります。スマホを使う人では、この2つが同時に起こることがあるため、区別がつきにくくなります。
ドライアイでは、乾く、ゴロゴロする、しみる、風がつらい、まぶしい、目やにが気になる、コンタクトが不快、見え方がゆらぐといった訴えがよくみられます[15]。一方、眼精疲労では、見続けると重い、目の奥が痛い、眉間が張る、頭痛がする、肩がこる、休んでも翌日まで残るといった訴えが目立ちます。もちろん完全に分けられるわけではありませんが、中心になっている症状を見ると判断しやすくなります。
- ドライアイが疑わしいサイン:乾く、しみる、ゴロゴロする、風やエアコンで悪化する、夕方に見え方が不安定になる
- 眼精疲労が疑わしいサイン:近くを見る作業の後に重い、奥が痛い、頭痛や肩こりを伴う、休んでも疲れが抜けにくい
ここで注意したいのは、症状の強さだけでは自己判断しにくいことです。ドライアイでは、患者さんの訴えと検査所見の一致が弱いことがあり、症状としては強く困っていても、検査値だけでは軽く見えることがあります[11]。逆に、眼精疲労だと思っていたら、背景にドライアイやアレルギー、コンタクトレンズの不適合があることもあります。
ドライアイでは炎症が関わる点も重要です。涙の不安定さは眼表面の炎症を促し、その炎症がさらに涙を不安定にする悪循環をつくります[15]。このため、単に目を休めるだけでは改善が不十分なことがあります。人工涙液のような保湿だけでは足りない場合は、炎症を抑える治療が必要になります。研究では、シクロスポリン点眼で、涙の膜がどれくらい保たれるかを見る検査(涙液層破壊時間)や、目の表面の細かな傷や荒れを染めてみる検査(角膜染色)、症状スコアの改善がみられたという報告があります[4]。また、シクロスポリンは結膜で活性化したリンパ球マーカー、つまり炎症に関わる免疫細胞の目印を減らしたという報告もあります[12]。
一方、症状が強いドライアイでは、リフィテグラストという処方点眼が話題になることがあります。臨床試験では、角結膜染色などの所見改善が示されていますが、症状改善については試験ごとに結果が一貫しないため、効果の感じ方には個人差があります[2][5]。なお、この薬は国や地域で承認状況が異なるため、実際に使えるかは眼科で確認が必要です。日本の実際の診療では、人工涙液やヒアルロン酸製剤のほか、涙の水分やムチン分泌を助ける点眼、炎症を抑える治療、まぶたや涙の油の層を整えるケア、涙点プラグなどが原因に応じて選ばれます。
今日からできるスマホ時代の目のセルフケア
セルフケアは、難しいことをたくさんするよりも、効果のあるポイントを毎日続けることが大切です。スマホによる目の不調は、「見方を変える」「乾きにくい環境をつくる」「必要なら点眼を使う」の3本柱で考えると整理しやすくなります。
まず、見方の工夫です。画面を顔に近づけすぎると、目の負担は大きくなります。文字サイズを少し大きくして、無理に近づかなくても読める設定にしてください。部屋が暗いのに画面だけが明るい状態も負担になりやすいので、周囲の明るさとの差を小さくします。長時間の連続使用は避け、短時間でもよいので定期的に視線を外してください。遠くを見る時間をつくると、近くに合わせ続けた緊張を切り替えやすくなります。画面は目線よりやや下に置き、意識してゆっくりまばたきを増やすと、乾き対策にも役立ちます。
次に、乾きにくい環境づくりです。乾燥した空気や風はドライアイを悪化させます[19]。エアコンの風が顔に直接当たる席なら、風向きを変えるだけでも違います。加湿器を使う、濡れタオルを室内に置く、空気清浄機を使うといった工夫も助けになります。花粉やほこりで目が刺激される人は、窓を開ける時間帯や掃除の方法も見直す価値があります。
また、夕方に悪化しやすい人は、「症状が出てから対処する」のではなく、悪くなる前に休むことがコツです。乾きや刺激は一日の後半で強まりやすいため[7]、夕方に悪化しやすい人では、症状が強くなる前に休憩を入れると、つらさの軽減につながることがあります。
市販の点眼を使うなら、目的をはっきりさせましょう。乾きが主なら、まずは保湿を目的とした人工涙液タイプや、刺激の少ないドライアイ向け製品を選ぶのが基本です。充血をすばやく白く見せる血管収縮成分入りの点眼は、見た目の改善が中心で、乾きそのものへの対策とは限りません。連用は自己判断で続けず、症状が続く場合は眼科に相談してください。しみる点眼を無理に使い続ける必要はありません。コンタクト装用中は、装用したまま使える表示かどうかも必ず確認してください。
防腐剤が気になる人もいます。緑内障点眼を対象にしたレビューでは、ベンザルコニウム塩化物(点眼薬に使われることのある防腐剤)を含む製剤と、防腐剤なし、または別の防腐システムの製剤とで、眼圧を下げる効果や安全性に大きな差がない研究もありますが、不確実性は残るとされています[14]。この結果をそのまま市販薬全体に当てはめることはできませんが、点眼でしみる、刺激感が強い、使用回数が多いという人は、防腐剤の少ない製品や、医師に相談できる製剤を検討する意味があります。
もし処方点眼を使っているなら、差し方も大切です。たとえばβ遮断薬のチモロールでは、点眼後に涙が鼻に流れる通り道である鼻涙管から全身へ吸収される量を減らす工夫によって、血中濃度を下げられることが示されています。点眼後にまぶたを閉じて、目頭(内眼角)をやさしく押さえる方法でも効果がありました[1]。これは一部の処方点眼で特に重要な話ですが、「たくさん入れるより、正しく1滴」が基本である点は共通しています。
まぶたのふちのつまりや、涙の油の層の乱れが気になる人では、温かいタオルでまぶたを温める温罨法が役立つことがあります。脂の出口がつまっているタイプでは、こうしたケアが乾き対策の助けになることがあります。
スマホ時代のセルフケアを、すぐ実行できる形にすると次のようになります。
- 文字を大きめにして、顔を近づけすぎない
- 画面は目線よりやや下に置き、ゆっくりまばたきを意識する
- 30〜60分ごとに画面から目を離し、少し遠くを見る
- エアコンの風を避け、乾燥する部屋では加湿を意識する
- 乾きが主なら保湿系の点眼を選び、しみるものは無理に続けない
なお、目の症状は更年期世代の女性で出やすいことも知られています。性ホルモンの変化は涙液の各成分に影響し、ドライアイの一因になります[18]。年齢のせいと片づけず、生活環境とあわせて見直すことが大切です。
症状が続くときの対処法と受診のタイミング
セルフケアを1〜2週間続けても改善しない、または日常生活に支障が出るなら、眼科を受診してください。特にドライアイは、症状と所見がずれやすく[11]、自分では軽い乾きだと思っていても、炎症が続いていることがあります。逆に、眼精疲労と思っていたら、ドライアイ、アレルギー性結膜炎、屈折異常、老視、コンタクトの問題など、別の原因が見つかることもあります。
受診すると、涙液層破壊時間、つまり涙の膜がどれくらい保たれるかを見る検査、角膜や結膜の染色、つまり目の表面の細かな傷や荒れを染めて確認する検査、涙の量、まぶたの状態、視力や度数などを確認し、症状の中心がどこにあるかを見ます。ドライアイがはっきりしていれば、人工涙液だけでなく、炎症を抑える治療が提案されることがあります。シクロスポリンは症状や角膜所見の改善に役立つという報告があり[4]、リフィテグラストも所見改善を中心に検討されている薬です[2][5]。市販薬で十分でないときに、受診する意味はここにあります。
受診を急いだほうがよいのは、単なる疲れ目の範囲を超えるサインがあるときです。たとえば、片目だけ急に悪化した、強い痛みがある、充血が強い、まぶしくて開けられない、視力が落ちた、目やにが多い、黒い点や光が急に増えた、といった場合です。特に、コンタクト装用中に痛み、強い充血、まぶしさ、視力低下がある場合は、角膜障害のことがあるため早めの受診が必要です。
最後に、目薬の使い方にも注意が必要です。容器の先がまつ毛やまぶたに触れると、汚染の原因になります。点眼薬の微生物汚染は一定割合で起こりうると報告されており[13]、開封後は清潔に扱い、家族での共用は避けてください。古い点眼を長く使い回すのもおすすめできません。
スマホを使う限り、目の負担を完全にゼロにはできません。ただし、負担のかかり方を知れば、かなり減らせます。乾きが主なら涙の環境を守ること、疲れが主なら見方と休み方を変えること、そして長引くなら早めに受診すること。この3つを押さえるだけでも、目はかなり楽になります。つらさを「いつものこと」で終わらせず、原因に合った対策を選んでください。
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