SNSで見かけるGLP-1受容体作動薬――非正規の入手で起こる偽造品と健康被害のリスク

SNSで見かけるGLP-1受容体作動薬――非正規の入手で起こる偽造品と健康被害のリスク

【結論】偽造薬は正規ルートで回避

SNS等の非正規販売は真贋・品質・保管状態を確認できず健康被害の恐れがある

  • WHOは2023年10月に偽造オゼンピックをブラジル・英国で、12月に米国で確認し警告。投与量不正確や汚染、未知成分による生命リスクを指摘
  • 臨床現場では処方薬を他人に譲渡された場合、用量や併用薬の確認ができず、低血糖など緊急時に必要な情報が欠け対応が困難になる
  • SNSでの個人間売買やフリマアプリは避け、医師の診察を受け正規の医療機関・薬局で入手し、違和感があれば使用せず相談すること

SNSで「余ったから安く譲る」「海外から取り寄せた」「診察なしで送れる」と表示された注射薬を見て、少しだけなら大丈夫ではないかと思うかもしれません。しかし、そのペンに入っている液体が表示どおりの薬である保証はありません。見た目が本物らしくても、成分量、保存状態、流通経路は確認できません。GLP-1受容体作動薬は、血糖調節や食欲に関わるGLP-1というホルモンの働きを利用する薬で、製品ごとに2型糖尿病や肥満症の治療に用いられます。

特に注意したいのは、「偽造品なら外観で分かる」という思い込みです。世界保健機関(WHO)は、正規品に似せた偽造オゼンピックが、規制された流通網の中でも確認されたと警告しています。箱やペンだけで真贋を見分けることには限界があります。[1] 夜中にSNSを見ていて、「病院に行く時間がない」「体重を早く落としたい」と感じた時ほど、安さや手軽さではなく、入手先の確かさを優先してください。

SNSなどの非正規ルートでは、製品の真正性と流通経路を確認できない

GLP-1受容体作動薬は、製品によって2型糖尿病または肥満症の治療に使われます。皮下注射で用いる製品では、医師が血糖値、腎機能、ほかの薬、体調などを確認して処方します。SNS上では美容やダイエットに結び付けた投稿が目立ちますが、広告が多いことは、その薬を安全に使える証明にはなりません。

厚生労働省は、GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬について、一部の医療機関が美容・痩身・ダイエット目的での使用を勧めているように受け取れる広告を掲載していることに注意を促しています。2型糖尿病のみを適応とする製品を、美容・痩身・ダイエット目的で適応外使用した場合の安全性と有効性は確認されていません。[2]

ここで分けて考えたいのが、「医師の診察を受けた自由診療」と「SNSの個人間売買や非正規サイトからの購入」です。前者でも、適応、費用、説明内容を慎重に確認する必要があります。肥満症に対する承認薬による治療では、対象者や使用条件が定められています。一方、後者では、誰が保管し、何を渡し、どのように運んだかが分かりにくくなります。処方薬を他人に譲る行為は、薬が本人の病状や用量に合わせて選ばれているという前提を崩します。

WHOは2024年6月、セマグルチドを成分とするOZEMPIC(オゼンピック)の偽造品3バッチについて警告しました。確認された国は、2023年10月のブラジルと英国、同年12月の米国です。偽造品には、存在しないバッチ番号のもの、真正な製造記録と一致しないバッチ番号とシリアル番号の組み合わせのもの、番号自体は真正でも製品が偽造されたものが含まれていました。[1]

WHOの警告はSNS上での流通頻度を示すものではありませんが、正規品に似せた偽造品が確認されている以上、供給元を確かめられない個人間売買で購入者が品質を確認することは困難です。番号がもっともらしく見えるだけでは、本物とは言えません。MogiMed編集部では、外観や番号を個人で確認するより、最初から正規の供給元を選ぶことを優先すべきだと考えます。

また、SNSでは「未使用」「冷蔵保存」「正規品」といった言葉が安心材料のように使われがちです。しかし、投稿文や出品者の説明は、医薬品の品質保証にはなりません。注射薬は、製造から患者に渡るまでの温度管理や取り扱いが重要です。たとえ本物として出荷された製品でも、譲渡の過程で適切に扱われたかどうかは、購入者には検証しにくい問題です。

なぜ非正規ルートが危険なのか:品質管理と健康被害のリスク

非正規ルートの大きな問題は、薬の中身と品質を確認できないことです。正規の医療ルートでは、製造販売業者、医薬品卸、医療機関、薬局などが、それぞれの役割を担って供給を管理します。処方時には、薬が必要な人か、どの用量が適切か、併用薬はあるか、副作用の兆候はないかを確認します。SNSの取引では、この仕組みの多くが抜け落ちます。

WHOは、確認された偽造オゼンピックについて、投与量が不正確であること、有害物質による汚染、未知または代替された成分の使用により、治療が効かなくなる可能性を示しています。皮下注射で使う薬であるため、生命を脅かし得る重大な健康リスクにもつながり得るとしています。[1] 「少量なら安全」「一度だけなら問題ない」とは言えません。そもそも、量や成分が正しいか分からないためです。

正規品であっても、GLP-1受容体作動薬には副作用があります。厚生労働省は、低血糖症状、急性膵炎を重大な副作用として挙げています。悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛といった消化器症状も比較的よくみられます。[2] 低血糖の起こりやすさは、製品、用量、食事の状況、併用薬などで異なります。特にほかの血糖を下げる薬を使っている人は、薬の名前と使用量を医療者へ正確に伝えることが重要です。

低血糖は、意識がぼんやりする、手がふるえる、冷や汗が出るといった形で始まることがあります。仕事中や外出先で起きても、薬を何mg使ったか、いつ打ったか、ほかに何を飲んでいるかを医療者へ正確に伝えられなければ、対応が難しくなります。薬を買った時のやり取りしか残っていない状況では、救急受診時にも重要な情報が欠けるおそれがあります。

さらに、適応外使用には別の問題があります。2型糖尿病治療薬を美容・痩身・ダイエット目的で使う場合、安全性と有効性は確認されていないとされています。重い健康被害が起きた場合、医薬品副作用被害救済制度の給付を受けられない可能性も非常に高いと、厚生労働省は示しています。[2] この制度は、承認された目的や使い方に沿って薬を使った場合に起きた健康被害を救済する仕組みです。

「医療機関で扱っている薬だから、SNSで同じ名前の物を買っても同じ」と考えるのは危険です。同じ商品名が書かれていても、製造、保管、輸送、処方判断、使用後のフォローは同じではありません。PMDAも、国内で承認された使用法以外では、本来の効果が見込めないだけでなく、思わぬ健康被害が生じる可能性があると注意喚起しています。[4]

需要の増加も、非正規ルートに人を向かわせる一因になり得ます。日本糖尿病学会は、2023年11月時点で複数製剤が限定出荷となり、真に薬を必要とする2型糖尿病患者への供給に支障を生じさせない配慮が必要だと示しました。[3] 供給が不安定な時に「在庫あり」をうたう個人販売へ流れるのではなく、治療中の人は主治医や薬局に相談し、代替策を含めて医療の中で判断することが大切です。臨床現場では、薬が手に入りにくい時ほど自己判断で購入せず、処方元へ早めに連絡することが安全につながります。

偽造薬を避けるために確認したい入手先と注意すべきサイン

偽造薬を外観だけで完全に見抜くことは困難です。そのため、基本は「怪しい見た目を探す」ことではなく、「正規の入手先を選ぶ」ことです。WHOは、すべての医薬品を認可・許可された供給元から入手し、医療従事者の助言を受けるよう求めています。[1]

  • 医師の診察を受け、自分の状態に応じて処方された薬を、医療機関または正規の薬局から受け取る。
  • オンライン診療を利用する場合も、適切な診察、処方、正規の配送経路が確保されているかを確認する。
  • SNSの個人間売買、フリマアプリ、無許可と考えられる通販サイトからは購入しない。
  • 「処方箋不要」「診察不要」「海外製だから安い」「余った未使用品」といった説明を、安全の根拠にしない。
  • 受け取った薬に違和感があっても、自分で試し打ちや使用をして確認しない。

外観、ラベル、バッチ番号だけで、製品が本物であることを保証することはできません。以下はWHOが確認した偽造品の一部の特徴であり、該当しない製品が正規品であることを意味しません。WHOが示した特徴には、用量設定時にペンから外側へ伸びる目盛り、ペンに密着しにくいまたは品質の低いラベル、箱前面のスペルミスがあります。[1]

製品名、用量、箱の印字、ペンの形が普段と違うと感じた場合は、使わずに入手した医療機関や薬局へ連絡してください。SNSで入手した製品は使用せず、出品者の説明だけで安全性を判断しないでください。医療機関や薬局では、持ち込まれた製品の真正性を保証できない場合がありますが、すでに使用した場合の健康影響や、受診の必要性について相談できます。医療者には、入手先、使った量、使用日時、体調の変化を隠さず伝えてください。

すでに使用していて、強い腹痛、繰り返す嘔吐、冷汗、動悸、ふるえ、意識がはっきりしないなどの症状がある場合は、様子見で追加使用をしないでください。緊急性があると感じる時は救急要請を含め、速やかに医療機関へ相談してください。製品本体、箱、残量、取引画面の記録があれば保管し、医療者に見せると判断材料になります。使用済みの注射針には触れず、他人が誤って触れない状態で安全に保管してください。

臨床現場では、薬を「何のために使うか」を確認するだけで、危険な自己使用を防げることがあります。体重の悩みは軽く扱うべきものではありませんが、薬の選択は体重だけでは決まりません。既往歴、現在の薬、妊娠の可能性、食事量、脱水の有無などを含めて判断する必要があります。短いSNS投稿では、その判断に必要な情報を扱えません。

また、国内で肥満症を対象とする製剤であっても、「痩せたい」という理由だけで誰でも使えるわけではありません。厚生労働省は、肥満症を対象とするウゴービ皮下注についても、肥満症以外の痩身・ダイエット目的には使用できないと示しています。[2] 商品名だけで判断せず、何が承認され、誰に、どのような条件で使われる薬なのかを医師に確認してください。MogiMed編集部では、見た目の確認よりも、正規の診察と供給経路を選ぶことが最も確実な予防策だと考えます。

まとめ:GLP-1受容体作動薬は正規の医療ルートで相談・入手を

SNSの投稿は、薬の正しさ、保管状態、用量、使用者への適合を保証しません。偽造品では、成分量の過不足、汚染、未知の成分が問題となり得ます。WHOが偽造オゼンピックについて警告している事実は、「有名な薬だから安心」という見方を改めるべき理由になります。[1]

GLP-1受容体作動薬は、糖尿病や肥満症の治療で役割を持つ一方、製品ごとに承認された対象や使い方が異なります。2型糖尿病のみを適応とする製品を美容・痩身目的で使う場合は、安全性と有効性が確認されていません。副作用が起きた時に適切な対応を受けるためにも、処方前の確認と使用中のフォローは欠かせません。[2]

SNSで出回るGLP-1受容体作動薬は、「安く手に入る選択肢」ではなく、中身も経路も確かめられない注射薬として捉えることが大切です。体重や血糖の悩みがあるなら、正規の医療機関・薬局を通じて相談し、自分の状態に合う方法を一緒に考えてください。それが、偽造品と健康被害のリスクから自分を守る最も確実な道です。

臨床現場でも、薬を安全に使う第一歩は、診察、処方、受け取りまでを正規の医療ルートでつなぐことです。SNSの手軽さより、自分の体を守れる入手先を選びましょう。

  1. [1] World Health Organization (2026). WHO Medical Product Alert N°2/2024 Falsified OZEMPIC (semaglutide)——GLP-1受容体作動薬(セマグルチド)の偽造品に関する世界保健機関の警告. Available from: https://www.who.int/news/item/19-06-2024-medical-product-alert-n-2-2024--falsified-ozempic-(semaglutide) (Accessed: 2026-09-20)
  2. [2] 厚生労働省 (2023). GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用について——美容・痩身目的の適応外使用への注意(厚生労働省). Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001177708.pdf (Accessed: 2026-09-20)
  3. [3] 日本糖尿病学会 (2023). GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解——美容・痩身・ダイエット目的の使用. Available from: https://www.jds.or.jp/uploads/files/document/info/jds_statement_GLP-1.pdf (Accessed: 2026-09-20)
  4. [4] 医薬品医療機器総合機構(PMDA) (2025). GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ(2025年4月30日・PMDA). Available from: https://www.pmda.go.jp/files/000275183.pdf (Accessed: 2026-09-20)

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