市販の痛み止め、ロキソプロフェン・イブプロフェン・アセトアミノフェンはどう選ぶ?——持病や体質で変わる選び方

市販の痛み止め、ロキソプロフェン・イブプロフェン・アセトアミノフェンはどう選ぶ?——持病や体質で変わる選び方

【結論】持病に応じた成分選びが重要

NSAIDsとアセトアミノフェンは作用機序が異なり、体の状態により適性が変わるため

  • NSAIDs使用中の急性腎障害リスクはオッズ比1.73、高齢者で2.51に上昇[10]
  • 臨床現場では「効かず別の頭痛薬を追加」という相談が多く、成分重複が見落とされがち
  • 商品名でなく有効成分名・1日量を確認し、胃腸や腎臓等の持病がある場合は購入前に薬剤師へ相談を

夜に頭痛が出て、「家にある痛み止めならどれも同じ」と思うことはありませんか。痛み止めは、効き目の強さだけで選ぶ薬ではありません。胃が弱い人、腎機能が低下している人、喘息がある人では、よく使われる成分でも合わないことがあります。反対に、炎症が強い痛みでは、胃への負担だけを気にして成分を選ぶと、十分に楽にならないこともあります。

薬箱に「頭痛薬」「生理痛薬」「腰痛薬」と別の箱が並んでいても、中身に同じ成分が含まれる場合があります。商品名ではなく、有効成分を見ることが安全な第一歩です。痛みを我慢し続ける必要はありませんが、成分の重複や長期連用は避ける必要があります。痛みの原因を見落とさず、自分の体に合う選び方を考えましょう。

市販の痛み止めに使われる主な成分と特徴

市販薬でよく見かけるロキソプロフェンとイブプロフェンは、NSAIDs(エヌセイズ:非ステロイド性抗炎症薬、炎症・痛み・発熱を抑える薬の総称)です。体内で痛みや熱、炎症に関わる物質が作られる過程を抑えるため、腫れ、ズキズキする歯痛、月経痛、関節痛など、炎症を伴う痛みに使われます。ロキソプロフェンもイブプロフェンも、このNSAIDsという大きな分類に含まれます。

NSAIDsは「よく効くから安全」という薬ではありません。胃の粘膜を守る仕組みや腎臓の血流にも影響するため、胃もたれ、腹痛、胃潰瘍、消化管出血や、腎機能の悪化につながることがあります。大規模解析では、評価されたコキシブ、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセンで上部消化管の合併症が増え、NSAIDsによる心不全リスクの上昇も示されました。これは高用量や継続使用を含む結果で、ロキソプロフェンを直接調べた結果ではありません。[19]

日本の市販薬を1回飲んだ時に同じ危険が起こるという意味ではありませんが、持病がある人はNSAIDsを飲む前の確認が特に大切です。脱水時や腎機能が低下している時も、問題が起こりやすくなります。

アセトアミノフェンは、NSAIDsとは異なる仕組みで痛みと熱を和らげる成分です。NSAIDsと比べると、胃粘膜への影響は一般に少ないため、NSAIDsを使いにくい場面で選択肢になることがあります。ただし、「胃にやさしい」ことと「誰にでも安全」であることは別です。飲み過ぎや、アセトアミノフェンを含む複数の薬の併用は、肝臓への負担を増やします。治療量を繰り返し使った研究では重い肝障害は報告されなかった一方、一部で肝機能検査値の上昇が見られました。過量服用が含まれていた可能性がある報告もあり、表示量を守る大切さが分かります。[12]

ここで大切なのは、成分ごとに「得意な痛み」と「避けたい体の状態」があることです。急性の術後痛を対象にした研究では、イブプロフェンとアセトアミノフェンの固定用量配合は、プラセボと比べて50%以上の痛み軽減を得た人が多く、追加の鎮痛薬が必要になる割合も低くなりました。[9] ただし、これは成人の術後痛を対象にした研究です。市販薬を自己判断で重ねて飲む根拠にはなりません。配合薬は便利な一方で、成分の重複に気づきにくい面があります。

臨床現場では、「効かなかったので別の頭痛薬も追加した」という相談が少なくありません。別の商品でもNSAIDsやアセトアミノフェンが同じように含まれていることがあります。商品名の違いは、安全性の違いを意味しません。箱の側面や添付文書で、有効成分と1日量を確認する習慣が重要です。

痛みの種類と持病から考える3成分の選び方

成分を選ぶ時は、まず痛みの原因を大まかに考えます。打撲後の腫れ、月経に伴う下腹部痛、歯の痛み、関節の痛みのように炎症が関わりやすい痛みでは、NSAIDsが候補になります。一方で、発熱やかぜに伴う痛みでは、炎症だけでなく、食事や水分が取れているか、持病があるかも判断材料になります。

ロキソプロフェンとイブプロフェンのどちらが「上」とは、一概に言えません。市販薬を選ぶ時は、成分名に加えて、1回量、服用間隔、1日に飲める回数、対象年齢、眠くなる成分などの配合の有無を確認します。同じ成分でも製品ごとに表示が異なるため、以前使えた商品と同じ感覚で別の商品を選ばないことが大切です。

腰痛は分かりやすい例です。「腰痛には痛み止め」と考えがちですが、急性腰痛の多くは時間とともに改善します。米国の診療ガイドラインでは、急性または亜急性の腰痛では、まず温熱、マッサージ、鍼、脊椎マニピュレーションなど、薬を使わない方法が選択肢とされています。薬を使うならNSAIDsまたは筋弛緩薬が選択肢ですが、薬を先に重ねる考え方ではありません。[2]

急性腰痛に対するNSAIDsのレビューでは、痛みの強さを0〜100で表す尺度において、3週間以内の短期ではプラセボより平均7.29点低い結果でした。差は統計的には確認されていますが、全員が大きく楽になるほどの差とは限りません。[3] 「強い薬なら一気に治る」と考えて回数を増やすより、短期で使い、改善しない時は原因を見直す方が安全です。

一方、非特異的急性腰痛では、アセトアミノフェン4g/日とプラセボを比べた研究で、1週、2週、4週、12週の痛みや障害に差は示されませんでした。[4] 4g/日は研究で用いられた量であり、日本の市販薬を自己判断で4g/日まで使ってよいという意味ではありません。実際の服用量は、購入した製品の表示を守ってください。これは、アセトアミノフェンがすべての痛みに無効という意味でもありません。腰痛ではNSAIDsと同じ役割を期待しにくいことを示す結果です。

選択の目安を、痛みだけでなく体の条件と組み合わせて考えましょう。

  • 腫れや炎症を伴う月経痛、歯痛、打撲後の痛みでは、胃・腎臓・心臓・喘息の問題がなければ、NSAIDsが候補になります。
  • 現在胃潰瘍がある人、重い腎臓・肝臓・心臓の病気がある人、過去にNSAIDsやアスピリンで喘息発作や呼吸困難を起こした人は、市販NSAIDsを自己判断で服用しないでください。
  • 高血圧、過去の胃潰瘍、腎機能低下、抗凝固薬・抗血小板薬の使用がある場合は、購入前に薬剤師か医師へ確認します。
  • NSAIDsを避ける必要がある時には、アセトアミノフェンが候補になる場合があります。ただし、肝機能障害、多量飲酒、成分重複には注意が必要です。

イブプロフェンは、高用量では心血管リスクが問題となる可能性があります。観察研究の解析では、低用量イブプロフェンは比較的リスクが低い群でしたが、集団レベルでの比較です。心筋梗塞や脳卒中の既往がある人が安心して使えるという意味ではありません。[8]

MogiMed編集部の見解では、「ロキソニン系が効く」「イブ系が合う」という過去の感覚は、選択の出発点にはなっても結論にはなりません。前回問題がなかったとしても、年齢、脱水、血圧の薬、腎機能の変化で安全性は変わります。特に、発熱や胃腸炎で水分が取れない日のNSAIDsは、普段と同じ感覚で使わない方がよい場面です。

持病・体質・妊娠中に確認したい注意点

NSAIDsで最初に確認したいのは、胃腸、腎臓、心臓と血管、喘息です。腎臓は血液をろ過して尿を作る臓器で、脱水や加齢、腎臓病があると余力が少なくなります。NSAIDs使用中の急性腎障害(急に腎機能が悪くなること)のリスクを調べた解析では、一般集団でのオッズ比は1.73、より高齢の人では2.51でした。慢性腎臓病の人でもリスク上昇が示されました。絶対的な危険度は研究から算出できず、全員に起こる副作用ではありませんが、腎臓病や高齢では元々のリスクが高い可能性があります。[10]

高血圧、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、心不全がある人も注意が必要です。変形性膝関節症のガイドラインでは、心血管の病気がある人や虚弱な人には、どの経口NSAIDsも推奨しないとしています。[11] この推奨は変形性関節症の治療に関するものですが、持病を持つ人が市販の飲み薬を気軽に続けないための参考になります。

喘息がある場合、「アセトアミノフェンなら必ずよい」「イブプロフェンは全員にだめ」と単純には分けられません。NSAID増悪呼吸器疾患(NSAIDsで鼻や気管支の症状が悪化する体質)は、成人喘息患者の約9%にみられると推定されています。[20] 過去にアスピリンやNSAIDsを飲んだ後、息苦しさ、ゼーゼー、強い鼻症状が出た人は、同系統の薬を自己判断で試し直さないでください。

じんましんや顔の腫れが出た場合も、NSAIDsによる別の過敏反応の可能性があります。NERDと同じものとは限りませんが、服用を避け、医療者へ伝えてください。子どもの喘息では、アセトアミノフェンとイブプロフェンのどちらが喘息悪化を増やすかを比べたランダム化試験やメタ解析で、明確な差は示されていません。[16][18] ただし、過去に薬で呼吸症状が出た子に自由に使えるという意味ではありません。

小児では、年齢・体重・製品によって使える成分と用量が異なります。小児を対象とした研究結果があっても、成人用の市販薬を割ったり減らしたりして与えてよいという意味ではありません。必ず小児用製品の表示を確認し、不明な場合は薬剤師か小児科医に相談してください。

肝機能障害がある人、多量飲酒が続く人、栄養状態が悪い人は、アセトアミノフェンを選ぶ前に相談が必要です。かぜ薬、総合感冒薬、処方薬にもアセトアミノフェンが含まれることがあります。「熱の薬」と「頭痛の薬」を別々に飲んだつもりで、同じ成分を重ねる事故が起こり得ます。臨床現場では、単剤と思っていた薬が実は配合薬だった、というケースが安全確認の要点になります。

妊娠中または妊娠の可能性がある時、授乳中は、自己判断で市販薬を始めないでください。妊娠中は週数によってNSAIDsの使い方が変わり、特に妊娠後半はより慎重な判断が必要です。購入時には、妊娠何週か、使いたい製品名、持病と併用薬を産婦人科医か薬剤師へ伝えてください。授乳中も、「市販薬だから大丈夫」と決めつけず、成分と使用量を確認します。

臨床現場では、持病そのものだけでなく、「いつもの薬」を聞くことが重要です。血圧の薬、利尿薬(尿を出してむくみや血圧を調整する薬)、抗凝固薬(血を固まりにくくする薬)、抗血小板薬、ステロイド薬などを使っている場合、NSAIDsの副作用や相互作用(薬どうしが影響し合い、効き目や副作用が変わること)が問題になりやすくなります。利尿薬や一部の降圧薬にNSAIDsと脱水が重なると、腎機能が急に悪化しやすくなります。

飲み合わせと受診の目安:市販薬を安全に使うために

市販薬を安全に使う基本は、痛み止めを一つ選び、添付文書どおりの量と期間で短く使うことです。ロキソプロフェンを飲んで効かないからといって、イブプロフェンや他のNSAIDsを追加するのは避けてください。同じ分類の薬を重ねても、効き目が単純に足されるとは限らず、胃腸、腎臓、心血管への負担が増える可能性があります。

アセトアミノフェンも、成分名を確認せずに重ねやすい薬です。総合感冒薬、頭痛薬、解熱薬、処方された鎮痛薬を同時に使う時は、それぞれの有効成分を並べて確認します。自信がなければ、薬の箱やお薬手帳を持って薬局で確認してください。飲む時間をずらしても、同じ成分の重複は解決しません。

また、痛み止めで症状が一時的に軽くなることと、原因が治ることは別です。頭痛なら、いつもの頭痛と違うか。腰痛なら、転倒後か、足のしびれがあるか。月経痛なら、これまでより急に強くなったか。このように考えると、受診を先延ばしにしない方がよい痛みが見えてきます。

  • 突然経験したことのない激しい頭痛、ろれつが回らない、顔や片側の手足に力が入らない、意識がおかしい時は、痛み止めで様子を見ず、直ちに救急要請を検討してください。
  • 血を吐く、呼吸が苦しい、顔やのどが腫れる、意識が遠のく時は服用を中止し、直ちに救急受診または救急要請をしてください。黒い便が出た場合も、早急な医療機関への相談が必要です。
  • 発熱を伴う強い痛み、外傷後の痛み、痛みが繰り返す場合は受診を考えます。市販薬は添付文書に書かれた使用期間を超えて続けず、短期間で改善しない時は追加服用を続けずに相談してください。

慢性的な膝や股関節の痛みでは、飲み薬だけに頼らない視点も必要です。変形性関節症のガイドラインでは、教育、運動、体重管理が基本的な治療として位置づけられ、膝では外用NSAIDsも強く推奨されています。[11] また別のガイドラインでも、膝の変形性関節症には外用NSAIDsが推奨されています。[14] 外用薬にも副作用や使用上の注意はありますが、飲み薬を毎日続ける前に、治療全体を医師や薬剤師と組み立てる価値があります。

薬局で相談する時は、「何が痛いか」だけでなく、「いつから」「熱や腫れはあるか」「過去に胃潰瘍や喘息発作があったか」「腎臓・肝臓・心臓の病気はあるか」「今飲んでいる薬は何か」を伝えると、選択の精度が上がります。薬の箱をスマートフォンで撮影して見せるだけでも、成分重複の確認に役立ちます。

臨床現場では、薬を選ぶ時に「効くか」だけでなく、「今の体調で安全か」を一緒に確かめます。市販の痛み止めは、ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェンのうち最も強そうなものを選ぶ薬ではありません。炎症を伴う痛みにはNSAIDsが候補になりますが、胃腸、腎臓、心臓、喘息に不安があれば慎重さが必要です。アセトアミノフェンはNSAIDsより胃粘膜への影響が一般に少ない一方で、肝臓と成分重複を確認します。痛みの場所だけでなく、持病、体質、飲んでいる薬、製品表示まで含めて選ぶことが、安全に痛みを和らげる近道です。

  1. [2] Qaseem A. et al. (2017). Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians. Annals of Internal Medicine. Available from: https://doi.org/10.7326/m16-2367 (Accessed: 2026-10-21)
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