
夏は血圧が下がりすぎる? 降圧薬を飲む人が気をつけたい低血圧のサイン
【結論】夏は下がりすぎることがある
発汗や水分不足、食欲低下が重なると、いつもの薬でも血圧が下がりすぎて症状が出ることがあります。
朝起きて立った瞬間にふわっとする。入浴後に力が抜ける。そんな日が続くと、「夏バテかな」で済ませたくなるかもしれません。けれど、降圧薬を飲んでいる人では、暑さ、発汗、食欲低下、水分不足が重なって、血圧が下がりすぎているサインのことがあります。
血圧は、心臓が送り出す血液量と、血管の張り具合で決まります。夏は暑さの影響で血管が広がりやすく、さらに汗で体の水分が減ると、血液量も減りやすくなります。そこに降圧薬が重なると、冬にはちょうどよかった量でも、結果として血圧が下がりすぎて症状が出ることがあります。臨床現場では、健診の数字よりも「朝の立ちくらみ」や「入浴後のふらつき」から気づくケースが少なくありません。
大事なのは、症状を気のせいで片づけないことです。とくに高齢の方、利尿薬(尿を増やして余分な水分を出す薬)を使っている方、食欲が落ちて水分も食事量も減っている方では、下がりすぎに注意が必要です。家庭血圧は診察室血圧より実際の状態をつかみやすく、評価でも重視されます[6][9]。だからこそ、夏は「高いか低いか」だけでなく、「いつ、どんな場面で、どんな症状と一緒に出たか」まで見ることが大切です。
夏に血圧が下がりすぎる原因は?発汗・脱水と降圧薬の影響
夏に血圧が下がりやすくなる代表的な要因の一つは、汗で水分が失われることです。体の中の水分が減ると、血管の中を流れる血液の量も減ります。すると、立ったときに脳へ送る血液が一時的に足りなくなり、立ちくらみやふらつきが起こります。暑い日に外出したあとや、夜中にエアコンを切って寝汗をかいた朝に起こりやすいのはこのためです。こうした、立ち上がったときに血圧が下がってめまいやふらつきが出る状態は、起立性低血圧と呼ばれます。
もう一つは、暑さそのもので血管が広がりやすくなることです。血管が広がると血液は流れやすくなりますが、圧は下がりやすくなります。そこへ降圧薬が加わると、血圧を下げる力が重なります。降圧薬は1種類だけでなく、複数の薬を組み合わせることも多く、異なる系統でも血圧を下げる効果は加算されます[2]。つまり、夏の体の変化と薬の作用が同じ方向に働くことがあります。
とくに注意したいのは利尿薬です。利尿薬はむくみや血圧を下げるのに役立つ一方、尿を増やして体の水分を減らします。暑い季節に汗と尿の両方で水分が失われると、脱水に傾きやすくなります。利尿薬に限らず、複数の降圧薬を使っている人では、暑さや水分不足が重なると症状の評価が必要になることがあります。MogiMed編集部の見解では、「薬が急に悪くなった」と考えるより、「季節条件が変わったのかもしれない」と見たほうが落ち着いて対処しやすいです。
日本高血圧学会は、家庭血圧を朝と夜に測り、5〜7日間の平均で見ることを勧めています。家庭血圧の5〜7日平均で、収縮期135mmHg以上または拡張期85mmHg以上が高血圧の目安で、125/75mmHg以上は高値血圧として注意が必要です。[6] 反対に言えば、夏に数日だけでも極端に低い日が続くなら、それも大事な情報です。
測り方が雑だと、下がりすぎかどうか自体が分からなくなります。血圧測定は、測る前の安静、カフの位置、会話の有無だけでも値がぶれます。5mmHgの測定誤差で、高血圧かどうかの判定が世界で8400万人分ずれる可能性があると指摘されています[3]。だから、暑くてしんどい日ほど、慌てて1回だけ測って結論を出さないことが大切です。
家庭で測るなら、上腕式の自動血圧計が基本です。家庭血圧は診察室より白衣高血圧(医療機関で緊張して高く出ること)の影響を受けにくく、脳や心臓の病気の予測にも優れています[9]。日本の一般向けガイドでも、家庭血圧を優先して判断するとされています[6]。臨床現場では、夏の不調を「暑さだけ」と決めず、まず家庭血圧を記録して手がかりを探します。
立ちくらみ・ふらつきが出たら?今すぐできる対処法
立ちくらみやふらつきが出たら、まず安全確保です。歩き続けず、その場でしゃがむか、横になれるなら横になってください。転倒は低血圧そのものよりも現実的な危険です。とくに朝のトイレ、入浴後、庭仕事のあと、炎天下から屋内に戻った直後は起こりやすい場面です。あなたが「少し休めば治るから」と我慢しているときほど、体ははっきりSOSを出しています。
次に、水分をとります。吐き気がなく飲めるなら、少しずつ分けて飲むのが基本です。汗をたくさんかいた日や、食事があまり入っていない日は、塩分も不足していることがあります。ただし、塩分は高血圧治療の基本としては減らす方向が原則です。長期的な適度の減塩で血圧が下がることは示されており、高血圧の人では収縮期血圧が約5.4mmHg、拡張期血圧が約2.8mmHg下がった解析があります[13][16]。そのため、自己判断で「夏だから塩を多くとればいい」と極端に増やすのは勧められません。
ここは少しややこしい点です。日常の高血圧対策としては減塩が大事です。しかし、汗を多くかいて明らかに脱水が疑われる場面では、水だけを大量に飲むより、食事を含めた適度な電解質補給が必要になることがあります。食事が取れているなら、まずは水分を確保し、食事も抜かないことが現実的です。スポーツドリンクや経口補水液の使い分けは、持病や腎機能でも変わるので、普段から薬局で確認しておくと安心です。
血圧は症状が落ち着いてから測りましょう。家庭血圧の測定は、朝は起床後1時間以内、排尿後、食前・服薬前、夜は就寝前に、座って1〜2分安静にして行うのが基本です。原則2回測って記録します[6]。国際的な提言でも、朝と夜に座位で2〜3回、1週間ほど測って判断する方法が勧められています[9]。単発の数字より、続けて見た平均のほうが信頼できます。
自己判断でその日の薬を毎回止めるのは避けてください。ふらつきがあるときは、自己判断で中止・減量せず、血圧と症状を記録して早めに相談することが大切です。[15] 確かに、より強い降圧では低血圧の副作用は増えますが、重大な有害事象は全体として多くなく、効果とリスクのバランスで治療は組まれています[15]。だから、症状があるたびに勝手に中止すると、今度は血圧が上がりすぎる日が混じる恐れがあります。
今すぐ受診や相談を急ぎたいサインは次のとおりです。
- 失神した、意識が遠のいた、頭を打った
- 胸痛、息切れ、片側の手足の動かしにくさ、ろれつが回らない
- 水分が取れない、尿が極端に少ない、強いだるさが続く
なお、めまい・冷や汗・だるさは低血圧だけでなく、熱中症、感染、低血糖、不整脈などでも起こります。血圧が低いと決めつけず、強い症状があれば受診を優先してください。臨床現場では、数字が少し低いことより「いつもと違う神経症状や呼吸苦」があるかを優先して見ます。そこが受診の分かれ目です。
薬局で相談できることは?薬剤師に伝えたい症状と服薬状況
薬局での相談は、「薬を続けるか止めるか」をその場で決めるだけではありません。むしろ価値が大きいのは、症状が本当に低血圧らしいか、測り方に問題はないか、脱水の背景はないか、ほかの薬が関係していないかを整理できることです。たとえば、便秘薬や風邪薬、睡眠薬、前立腺の薬の中にも、ふらつきを強めるものがあります。複数の要因が重なると、本人は「夏のせい」と思っていても、実際は薬の組み合わせが関係していることがあります。
家庭血圧の自己測定は、測るだけでなく、記録を医師や薬剤師による教育や薬の調整につなげてこそ活きます。自己測定だけでは効果が乏しく、支援介入と組み合わせたときに血圧低下が大きかったという解析もあります。[14] この結果からも、自己測定は「測るだけ」より、記録をもとに医師や薬剤師へ相談して活かすことが大切だと分かります。
薬剤師に相談するときは、「低い気がする」だけでは情報が足りません。次の情報があると、判断がぐっと進みます。
- 血圧の数字:いつ、何回測って、どのくらいだったか
- 症状の内容:立ちくらみ、ふらつき、だるさ、冷や汗、失神の有無
- 服薬状況:飲み忘れ、追加で飲んだ薬、利尿薬や市販薬の使用、食事と水分量
さらに、症状が出た時間帯も重要です。朝の服薬前に低いのか、薬を飲んだ数時間後に強いのか、入浴後だけなのかで、見立てが変わります。家庭血圧の指針では、朝と夜の決まった条件で測ることが勧められています[5][7]。この「条件をそろえる」だけで、薬剤師はかなり判断しやすくなります。
薬剤師が確認するポイントは、薬の種類だけではありません。最近、体重が急に落ちていないか、食欲がない日が続いていないか、飲酒量が増えていないかも見ます。飲酒と血圧の関係は、もともと1日2ドリンク超の飲酒がある人では、減酒で血圧が下がる方向が示されています[19]。逆にいえば、夏の夜にアルコールばかりで水分補給を済ませると、脱水を悪化させることがあります。MogiMed編集部の見解では、「水分をとっているつもり」が最も見逃されやすい落とし穴です。
受診につなげるべきかどうかも、薬局である程度整理できます。家庭血圧が連日低めで、症状も繰り返すなら、処方医への情報提供が必要です。複数の降圧薬を使っている場合、系統の違いで効果は足し算になるため[2]、夏場は量や飲み方の見直しが必要になることもあります。ただし、その判断は必ず医師と連携して行います。臨床現場では、薬剤師はその橋渡し役としてかなり頼れる存在です。
夏の低血圧を防ぐまとめ:受診の目安と日常の注意点
夏の低血圧を防ぐ基本は、測る、記録する、無理しない、この3つです。家庭血圧は、朝晩の決まった条件で複数回測り、5〜7日以上の平均で見ます。[6][9] 数字だけでなく、そのときの症状、気温、外出や入浴、食事、水分量も一緒に残すと、原因がかなり見えやすくなります。
日常で気をつけたいのは、急に立ち上がらないこと、炎天下での長時間の活動を避けること、入浴前後の脱水に注意することです。食欲が落ちる時期ですが、食事を抜くと水分も栄養も足りず、ふらつきやすくなります。運動は高血圧管理に役立ち、8〜24週間の介入で24時間血圧を下げた研究があります[8]。ただし、真夏の無理な運動は別問題です。高血圧のために良いことでも、暑い環境で脱水を招けば逆効果になり得ます。MogiMed編集部の見解では、夏は「頑張る健康習慣」より「続けられる安全習慣」を優先すべきです。
水分補給は大切ですが、腎臓病や心不全がある方では、飲み方に個別の制限があることもあります。そこは一般論で進めず、かかりつけ医や薬剤師に確認してください。また、夜間の血圧には睡眠、腎機能、自律神経(体の働きを自動で調整する神経)の影響があり、夜の血圧異常は心血管リスクと関係します[10]。夜中や早朝のふらつきが目立つなら、単なる日中の暑さだけではない可能性もあります。
受診の目安は、症状の強さと続き方です。数日間、家庭血圧がいつもより低めで、立ちくらみやだるさが続く。食事や水分を整えても改善しない。そんなときは、次の定期受診を待たずに相談してよい場面です。反対に、たまたま1回低かっただけで無症状なら、測り方を整えて記録を増やすほうが役立つこともあります。測定の標準化が大切なのは、診察室でも家庭でも同じです[3][5]。
朝、起きてすぐにふらつき、でも病院ではうまく説明できなかった。そんな経験があるなら、血圧手帳やスマホの記録があなたの代わりに話してくれます。家庭血圧は診断にも治療中の評価にも強い味方です[6][9]。夏は血圧が高くなりにくい季節である一方、降圧薬を飲んでいる人では、下がりすぎに注意が必要な季節でもあります。だから、暑さのせいで片づけず、立ちくらみ・ふらつき・だるさ・冷や汗を見逃さないこと。MogiMed編集部の見解では、それが「夏は血圧が下がりすぎるのか」という問いへの、いちばん実用的な答えです。
- [2] Law M. et al. (2003). Value of low dose combination treatment with blood pressure lowering drugs: analysis of 354 randomised trials. BMJ (Clinical research ed.). Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12829555/ (Accessed: 2026-07-20)
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