タダラフィルなどのED治療薬と狭心症の薬(硝酸剤・NO供与剤)はなぜ一緒に飲めない?——併用禁忌の理由と確認されること

タダラフィルなどのED治療薬と狭心症の薬(硝酸剤・NO供与剤)はなぜ一緒に飲めない?——併用禁忌の理由と確認されること

【結論】血圧急低下で併用禁忌

両薬とも血管拡張の信号を強め、血圧が過度に低下するおそれがあるため

  • シアリスは服用後最大36時間効果が続き、翌日以降も硝酸剤使用は危険
  • 貼り薬や舌下錠を薬と認識せず申告漏れするケースに薬剤師は注意している
  • 胸痛時は硝酸薬を自己判断で使わず、服用中の薬と時刻を必ず医療者へ伝える

「狭心症の発作はめったにないし、硝酸剤も毎日飲んでいない。ED治療薬を1回だけ使うなら大丈夫ではないか」と考えるかもしれません。しかし、硝酸剤・NO供与剤とED治療薬では、服用頻度ではなく、体内で作用が重なるかどうかが問題です。胸の痛みが出た夜に、いつもの発作時の薬を使いたくなる場面こそ慎重な判断が必要です。

ED(勃起不全・勃起障害)とは、満足な性行為に十分な勃起を得られない、または維持できない状態です。シアリスは有効成分タダラフィルを含むED治療薬で、性的刺激があるときの勃起を助けます。性欲そのものを高める薬ではなく、飲んだだけで勃起が起こる薬でもありません。[5]

本稿でいうED治療薬は、タダラフィルなどのPDE5阻害薬を指します。すべてのED治療法が硝酸剤・NO供与剤と併用禁忌という意味ではありません。

一方、硝酸剤・NO供与剤は、狭心症などで起こる胸痛を和らげるために使われる薬です。代表例には、ニトログリセリンや硝酸イソソルビドなどの硝酸剤、亜硝酸アミルやニコランジルなどのNO供与剤があります。飲み薬だけでなく、舌の下で使う薬、貼り薬、スプレーなども確認が必要です。[3]

「毎日飲んでいない硝酸剤・NO供与剤」でもシアリスと併用できない理由(シアリス 硝酸薬 併用禁忌)

硝酸剤・NO供与剤を「発作が出たときだけ」使っている場合、普段は薬を飲んでいないように感じやすいものです。しかし、狭心症の発作時に使うニトログリセリンも、ED治療薬との組み合わせでは重要な併用禁忌、つまり一緒に使ってはいけない組み合わせです。

タダラフィルを服用した後に胸痛が出た場合は、硝酸剤・NO供与剤を自己判断で使わず、医療者へ速やかに連絡してください。

タダラフィルを含むシアリスは、服用後約30分で効果が現れ、最大36時間まで効果が認められています。つまり、金曜日の夜に服用した場合、土曜日から日曜日にかけても薬の影響が残っている可能性があります。「翌朝になったから」「半日たったから」と自己判断で硝酸剤・NO供与剤を使うことは安全とはいえません。[5]

「最大36時間」とは、服用後最大36時間まで、性的刺激に対する勃起反応を助ける効果が認められたという意味です。36時間ずっと勃起する意味でも、36時間を過ぎれば硝酸剤・NO供与剤を安全に使えるという意味でもありません。使えるかどうかは、本人だけで判断せず医療者に確認してください。

医療用シアリスの添付文書でも、服用中だけでなく服用後も硝酸剤または一酸化窒素(NO)供与剤を投与しないよう、十分注意することが示されています。NO供与剤とは、体内で一酸化窒素を増やし、血管を広げる作用を持つ薬です。ニコランジルも、この注意が必要なNO供与剤に含まれます。[3]

臨床現場では、「貼り薬は薬として数えていなかった」「舌下錠は緊急用だから伝えなかった」といったケースに注意します。薬局でお薬手帳を見せていても、古い手帳にしか記録がない、循環器内科と泌尿器科で手帳を分けている、といった事情があるためです。薬の名前を覚えていなくても、狭心症、胸痛、心臓の薬、舌の下の薬、胸に貼る薬という情報だけでも必ず伝えてください。

硝酸剤・NO供与剤を使う可能性がある人は、ED治療薬を始める前に、胸痛の原因や心臓の状態を医師と確認する必要があります。性行為そのものも心臓に一定の負担をかけます。心臓や血管の病気がある人では、薬どうしの影響だけでなく、性行為に耐えられる状態かという視点も欠かせません。[3]

たとえば、軽い運動でも胸が締め付けられる、階段で強い息切れが出る、最近胸痛が増えた、といった場合は、ED治療薬を試す前に受診を優先してください。ED治療薬を使うために、硝酸剤・NO供与剤を自己判断で休薬・中止してはいけません。MogiMed編集部の見解では、発作時だけ薬を使う人ほど、「使わない日」ではなく「いざ使う日」を想定して相談することが重要です。

ED治療薬と硝酸剤・NO供与剤で血圧が下がりすぎる仕組み

両方の薬を一緒に使えない理由は、血管を広げる経路が重なるためです。少し難しく見えますが、順に考えると理解できます。性的刺激を受けると、陰茎の血管では一酸化窒素が作られます。一酸化窒素は、血管の筋肉をゆるめる合図です。その結果、血液が流れ込みやすくなり、勃起が起こります。

この合図の中では、cGMP(環状グアノシン一リン酸:血管をゆるめる信号を伝える物質)が増えます。通常、PDE5(ホスホジエステラーゼ5:cGMPを分解する酵素)がcGMPを分解し、作用が必要以上に続かないよう調節しています。

シアリスのタダラフィルは、PDE5を抑えるPDE5阻害薬です。cGMPが分解されにくくなるため、性的刺激があるときに血管がゆるむ作用を助けます。タダラフィルは陰茎海綿体の平滑筋を弛緩させ、海綿体への血液量を増やすことで、勃起とその維持を助けます。[1]

硝酸剤・NO供与剤も、一酸化窒素を介してcGMPを増やし、血管を広げます。狭心症では、心臓へ戻る血液量や心臓の負担を減らし、胸痛を和らげる目的で使われます。ここでPDE5阻害薬が加わると、硝酸剤・NO供与剤が増やしたcGMPも分解されにくくなります。すると、血管を広げる信号が強くなりすぎ、血圧が過度に下がるおそれがあります。

タダラフィルなどのPDE5阻害薬と硝酸剤・NO供与剤を併用すると、降圧作用が増強し、血圧が過度に低下するおそれがあります。

血圧は、脳、心臓、腎臓などへ血液を届けるための力です。急に下がると、立ちくらみ、冷や汗、失神、意識がぼんやりするなどが起こることがあります。冠動脈(心臓の筋肉へ血液を送る血管)に狭窄がある人では、血圧低下によって心臓へ届く血液が減り、心筋虚血(心筋に酸素が足りない状態)につながる心配もあります。

医療用の添付文書では、硝酸剤またはNO供与剤との併用により降圧作用が増強し、血圧が過度に下がることがあるため、併用しないと明記されています。リオシグアトも併用禁忌です。リオシグアトは可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤(cGMPを作る酵素を刺激する薬)であり、同様に血圧低下の危険を高めるためです。[3]

「血圧の薬なら全部だめなのか」と不安になるかもしれません。答えは、すべてが硝酸剤・NO供与剤と同じ扱いになるわけではありません。ただし、α遮断薬(血管や前立腺の筋肉をゆるめる薬)やアムロジピンなどの降圧薬を使っている人は、服用前に医師または薬剤師へ相談する必要があります。血圧を下げる作用が重なり、めまいやふらつきが起こりやすくなる可能性があるためです。[5]

健康成人を対象とした反復投与試験では、アムロジピンとの併用によりタダラフィルの曝露量が増加しました。一方、健康成人で得られた忍容性の結果を、狭心症や心不全、腎機能低下のある患者へそのまま当てはめることはできません。[17]

MogiMed編集部の見解では、「硝酸剤ではないから大丈夫」と薬名だけで判断するのは危険です。薬剤師は成分、量、飲み方、心臓の病気の状態まで含めて確認します。市販薬、サプリメント、個人輸入品も含め、使っているものを隠さず伝えることが安全への近道です。

診察・薬局で確認される薬、服用時刻、胸痛の状況

診察室や薬局で質問される内容は、単なる形式ではありません。「その人がED治療薬を使えるか」「胸痛が起きたときに危険な組み合わせにならないか」を確認するための安全確認です。特にシアリスは効果が比較的長く続くため、最後に飲んだ時刻が重要です。

要指導医薬品としてのシアリス10mgは、2026年7月31日に発売予定で、同年8月31日に全国発売予定とされています。購入希望者本人がチェックシートに回答し、薬剤師が聞き取りと服薬情報を確認したうえで、その場で販売できるかを判断する仕組みです。取扱店舗でも薬剤師が不在の場合は購入できないことがあります。[11]

薬剤師による確認は病気の診断や安全性の保証ではなく、胸痛や運動時の息切れなどがある場合は、販売より受診が優先されます。

確認されやすい内容は、主に次の3つです。

  • 硝酸剤・NO供与剤、リオシグアト、ケトコナゾール経口剤、イトラコナゾール、クラリスロマイシンなど、現在使っている薬の名前と使用した時刻
  • 心筋梗塞、脳梗塞・脳出血、不安定狭心症、不整脈、低血圧、高血圧、肝臓や腎臓の病気の有無
  • 胸痛、息切れ、動悸、めまいの有無と、どの程度の運動で症状が起こるか

硝酸剤・NO供与剤では、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、亜硝酸アミル、ニコランジルなどの使用が確認対象です。タダラフィル10mgの要指導医薬品では、ケトコナゾール経口剤、イトラコナゾール、クラリスロマイシンも併用できない薬として示されています。すべての抗真菌薬や抗菌薬が該当するわけではないため、薬を自己判断で中止せず、薬剤師へ薬名を伝えて確認してください。[5]

薬の名前が分からないときは、薬袋、薬の写真、お薬手帳、スマートフォンの服薬記録を見せてください。「白い小さい錠剤」「胸が痛いときに舌の下に置く薬」といった断片的な情報でも役立ちます。自己判断で「たぶん胃薬」「昔の薬」と分類せず、持参して確認する方が確実です。

服用時刻については、「昨日の夜」「今朝」ではなく、できるだけ具体的に伝えることが大切です。たとえば「土曜日の午後10時にタダラフィル10mgを飲んだ」「日曜日の午前9時に胸痛が出た」のように、時計の時刻まで示せると判断しやすくなります。タダラフィルの効果は最大36時間認められているため、時刻の情報は緊急時の治療にも関わります。[5]

夜中に胸が痛くなり、「いつものニトロを使えばよいのか」「救急車を呼ぶほどなのか」と迷う場面を想像してください。このとき、ED治療薬を飲んだ事実を恥ずかしく感じて伏せると、医療者は硝酸剤・NO供与剤を安全に使えるか判断できません。救急要請時や救急隊、救急外来では、ED治療薬の種類、量、最後の服用時刻を最初に伝えてください。

タダラフィルなどのPDE5阻害薬を服用した後に胸痛が生じた場合は、性行為や運動を中止して安静にし、硝酸剤・NO供与剤を自己判断で使わず、救急相談や救急要請を含めて速やかに医療者へ連絡してください。

胸痛が軽く感じられても、服用歴を伏せて様子を見ることは避けてください。受診先では、飲んだED治療薬の名称、量、服用時刻を必ず申告してください。

また、勃起が4時間以上続く、急な視力低下や視力喪失がある場合も、速やかな受診が必要です。持続勃起(勃起が長時間続く状態)は、処置が遅れると陰茎組織の損傷や、勃起機能への長期的な影響につながるおそれがあります。[3]

EDは性生活だけの問題とは限りません。EDと心血管疾患には関連があり、EDのある人では将来の心血管イベントのリスクが高いことが、複数の研究を統合したメタ解析(複数の研究結果をまとめて検討する方法)で示されています。この解析では、EDがない男性と比べ、EDがある人では心血管疾患、冠動脈疾患、脳卒中、全死亡のリスク上昇が報告されました。[18]

これは「EDなら必ず心臓病がある」という意味ではありません。しかし、血圧、血糖、脂質、喫煙、運動習慣などを見直すきっかけになります。国際的な合意文書でも、EDがある男性では心血管イベントのリスクがある可能性を考え、心血管の評価を行う重要性が示されています。[16]

臨床現場では、ED治療薬を希望したことをきっかけに、これまで聞けなかった胸痛や息切れが見つかることがあります。薬を「もらえるか、もらえないか」だけで終わらせず、体全体の状態を確認する機会にすることが大切です。

まとめ:硝酸剤・NO供与剤の使用中は自己判断せず代替治療を相談する

タダラフィルなどのPDE5阻害薬と硝酸剤・NO供与剤が併用禁忌なのは、降圧作用が増強し、血圧が過度に低下するおそれがあるためです。ニトログリセリンなどを毎日使っていなくても、発作時に使う可能性があるなら、タダラフィルを含むED治療薬を自己判断で使ってはいけません。[3]

シアリスは最大36時間効果が認められるため、服用した翌日以降の胸痛にも注意が必要です。ただし、36時間は硝酸剤・NO供与剤を安全に使えるまでの時間を示すものではありません。胸が痛くなったときは、性行為を中止して安静にし、ED治療薬を飲んだ事実と、薬の名前、量、服用時刻を医療者に伝えてください。[5]

代替治療とは、単に別のED治療薬へ変えることではありません。心臓の状態、狭心症の治療内容、性生活での症状、血圧、ほかの薬をまとめて確認し、その人に合う対応を医師と考えることです。硝酸剤・NO供与剤を中止すればED治療薬を使える、と考えるのも危険です。狭心症の薬を勝手にやめると、胸痛や心臓の状態が悪化するおそれがあります。

タイトルの問いへの答えは明確です。タダラフィルなどのPDE5阻害薬と狭心症の硝酸剤・NO供与剤は、血圧が過度に下がるおそれがあるため、一緒に飲めません。お薬手帳を一つにまとめ、発作時の薬や貼り薬も含めて伝えることが、安全な治療の第一歩になります。MogiMed編集部の見解では、胸痛時に迷わないためにも、ED治療薬を使う前から主治医や薬剤師へ相談しておくことが大切です。

  1. [1] 医薬品医療機器総合機構(PMDA) (2026). シアリス(タダラフィル)患者向医薬品ガイド——ED治療薬の使い方・してはいけないこと(PMDA). Available from: https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/GUI/530263_2590016F5026_1_01G.pdf (Accessed: 2026-09-16)
  2. [3] 医薬品医療機器総合機構(PMDA)/日本新薬株式会社 (2024). シアリス錠5mg/10mg/20mg(タダラフィル)医療用医薬品 添付文書——警告・禁忌・硝酸剤との併用. Available from: https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/530263_2590016F5026_1_05.pdf (Accessed: 2026-09-16)
  3. [5] 医薬品医療機器総合機構(PMDA)/エスエス製薬株式会社 (2026). シアリス(タダラフィル10mg)要指導医薬品 添付文書——してはいけないこと・相談すること・用法用量. Available from: https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/otc/PDF/K2607000005_01_A.pdf (Accessed: 2026-09-16)
  4. [11] エスエス製薬株式会社 (2026). 要指導医薬品シアリス(タダラフィル)の発売について——エスエス製薬ニュースリリース. Available from: https://www.ssp.co.jp/news/2026/2026061001/ (Accessed: 2026-09-16)
  5. [16] Köhler T. et al. (2024). The Princeton IV Consensus Recommendations for the Management of Erectile Dysfunction and Cardiovascular Disease. Mayo Clinic Proceedings. Available from: https://doi.org/10.1016/j.mayocp.2024.06.002 (Accessed: 2026-09-16)
  6. [17] Kim H. et al. (2022). Pharmacokinetic Drug Interaction Between Amlodipine and Tadalafil: An Open-Label, Randomized, Multiple-Dose Crossover Study in Healthy Male Volunteers. Drug Design, Development and Therapy. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35221673/ (Accessed: 2026-09-16)
  7. [18] Zhao B. et al. (2019). Erectile Dysfunction Predicts Cardiovascular Events as an Independent Risk Factor: A Systematic Review and Meta-Analysis. The Journal of Sexual Medicine. Available from: https://doi.org/10.1016/j.jsxm.2019.04.004 (Accessed: 2026-09-16)

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