
9月でもインフルエンザ?かぜとの見分け方と受診の目安
【結論】季節でなく症状経過で判断
9月でも高熱・全身症状があればインフルエンザの可能性を否定できない
- 発熱等の症状は4〜5日で軽快が多いが、抗インフル薬は発症48時間以内開始で発熱期間1〜2日短縮と報告される
- 薬剤師は発症時刻・併用薬・重複成分を確認し、市販薬使用可否と受診優先度を一緒に整理できる
- 発症時刻・体温変化・呼吸や尿の状態を記録し、息苦しさや反応低下があれば救急相談を検討する
「まだ9月だから、これは夏かぜだろう」と考えていたのに、夕方から急に熱が上がり、体の節々まで痛い。夜中に目が覚めてもだるくて水を取りに行けず、翌朝にはせきも出てきた。このようなとき、季節だけで原因を決めるのは危険です。インフルエンザを季節だけで否定することはできません。学校、職場、家庭で同じような症状の人がいる場合は、その状況も受診時に伝えましょう。
しかも、インフルエンザや一般的なかぜでは、のどの痛み、鼻水、せき、発熱といった症状が重なります。強い症状があればインフルエンザとは限らず、軽い症状だから違うとも言い切れません。大切なのは、病名を急いで当てることではなく、危険な状態を見逃さず、適切な時期に相談や受診をすることです。
9月の発熱はインフルエンザ?かぜとの違いと見分けにくい理由
インフルエンザは、インフルエンザウイルスへの感染によって起こる急性の呼吸器感染症です。急性呼吸器感染症とは、ウイルスや細菌などにより、鼻、のど、気管支、肺などに急な炎症が起こる病気のまとまりを指します。インフルエンザでは、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感が比較的急速に現れることが特徴です。のどの痛み、鼻水、せきも起こります。[1]
一方、一般的なかぜでも、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、せき、微熱から発熱が起こります。鼻やのどの症状から始まり、少しずつ悪化することもあります。ただし、これはあくまで傾向です。「鼻水があるからかぜ」「関節痛があるからインフルエンザ」といった、一つの症状だけで判断することはできません。年齢、体質、予防接種の有無、感染後の時間によっても、症状の現れ方は変わります。
ほかの呼吸器感染症でも、発熱、せき、のどの痛み、倦怠感が起こることがあります。そのため、家庭で感じる症状だけで原因を完全に見分けることは難しいのが実際です。厚生労働省の資料でも、インフルエンザと普通のかぜを鑑別する決め手となる症状の組み合わせは示されていません。[1] 「急な高熱と全身痛」は受診を考える大切な手がかりですが、診断そのものではありません。
臨床現場では、熱の高さだけでなく、「何時ごろから急に具合が悪くなったか」「同居家族や学校、職場に同じような症状の人がいるか」「息苦しさがあるか」「水分を取れているか」といった経過が重視されます。特に抗インフルエンザ薬の使用を検討する際は、発症からの時間が重要になるため、最初に寒気、発熱、だるさを感じた時刻をメモしておくと役立ちます。
インフルエンザは、多くの場合、発熱などの症状が4~5日ほど続いた後に自然に軽快します。[1]しかし、「多くの場合は治る」ことと、「誰でも様子見でよい」ことは別です。高齢者、小児、免疫不全者、基礎疾患などにより重症化リスクを指摘されている人は、個別に注意が必要です。免疫不全とは、病原体から体を守る免疫の働きが弱くなっている状態です。
9月の発熱で迷うときは、季節感よりも症状の現れ方の速さと強さに注目してください。午前中は何とか動けたのに午後から急に寝込んだ、寒気が強くて震える、筋肉痛で階段がつらい、といった変化は、相談のきっかけになります。MogiMed編集部の見解では、「何の感染症か」を自分だけで確定しようとするより、「発症時刻」「体温の変化」「呼吸と水分の状態」を整理する方が、受診先でより安全な判断につながります。
なお、黄色や緑色の鼻水だけで細菌感染と決めることもできません。急性鼻副鼻腔炎では、鼻水の色や性状の変化は細菌感染に特有の所見ではないとされています。[13]抗菌薬を希望する理由としてよく聞かれる症状ですが、色だけを理由に自己判断で抗菌薬を求めるのは適切ではありません。
症状が出たら今すぐ行う対処法と感染を広げない工夫
発熱、せき、のどの痛みが出たら、まず予定を減らし、できるだけ休養を取ってください。インフルエンザなどの急性呼吸器感染症では、安静、十分な睡眠、水分補給が基本です。飲み物は、お茶、湯冷まし、スープなど、飲めるものを少量ずつで構いません。[1] 食事が十分に取れなくても、水分が全く取れない状態を放置しないことが大切です。
「熱を下げれば出勤できるかもしれない」と考えることもあるでしょう。しかし、解熱薬で一時的に熱が下がっても、感染性や体の消耗がなくなるわけではありません。解熱薬とは、発熱や痛みを和らげる薬です。症状を抑えるために使う薬であり、感染症の原因そのものを治す薬とは限りません。無理をして学校や仕事に行くと、体への負担を増やし、回復を妨げるおそれがあります。また、周囲にうつす可能性もあります。
家庭内では、体調不良の人とほかの家族が近い距離で長時間過ごさない工夫が有効です。完全に部屋を分けられなくても、会話や世話をする時間を短くし、換気を行い、手洗いを丁寧にします。急性呼吸器感染症への対策として、手洗い、うがい、マスクの着用、換気が挙げられています。[1]
- せきやくしゃみがあるときは、不織布マスクなどで口と鼻を覆い、外した後は手を洗います。
- コップ、箸、タオルを共用しないようにし、特に飲み物の回し飲みを避けます。
- ドアノブ、蛇口、スマートフォンなど、手が触れやすい物を清潔に保ちます。ただし、物を拭くだけで十分とは考えず、換気や近い距離での接触を減らすことも意識します。
このような工夫は、家庭内での接触の機会を減らすためのものです。可能であれば主に看病する人を決め、接触する家族を不必要に増やさないようにします。ただし、看病する人に負担が集中しないよう、休息や交代方法もあらかじめ相談してください。小児や未成年者では、インフルエンザにかかった際に、急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、歩き回るといった異常行動がみられることがあります。治療開始後少なくとも2日間は、一人にしない配慮が必要です。[1]
臨床現場では、体温表よりも「尿が出ているか」が脱水の確認に役立つことがあります。脱水とは、体内の水分が不足した状態です。尿が普段より著しく少ない、長時間出ない、口が強く乾く、立つとふらつく、飲むたびに吐くといった場合は、脱水のおそれがあります。とくに乳幼児、高齢者、基礎疾患のある人は早めに医療機関へ相談してください。
また、抗菌薬、いわゆる抗生物質を、以前の残り薬で飲むことは避けましょう。抗菌薬は細菌に働く薬で、インフルエンザの原因であるウイルスには効きません。慢性肺疾患や免疫不全がない健康な成人の急性気管支炎では、肺炎が疑われない限り検査や抗菌薬治療を始めないこと、一般的なかぜには抗菌薬を処方しないことが推奨されています。[3]必要のない使用は、副作用や薬剤耐性につながります。薬剤耐性とは、細菌が薬に効きにくくなる性質です。臨床現場では、残り薬を自己判断で使わず、症状や経過を伝えて必要な薬を選ぶことが重要です。
検査や市販薬はどうする?薬局・薬剤師に相談できること
インフルエンザの検査を受けるか迷うとき、最初に確認したいのは「いつから症状が始まったか」です。検査の種類や行う時期は、症状、流行状況、医療機関の方針によって異なります。厚生労働省の資料では、症状出現後に検査を行う具体的な時期は示されていません。[1] 「発熱してすぐなら絶対に検査してはいけない」「翌日まで待てば必ず分かる」といった一律の情報だけで判断しないでください。
受診前に医療機関へ電話やウェブで連絡し、発熱やせきがあること、症状が始まった時刻、同居家族の感染状況を伝えるとスムーズです。医療機関によっては、待機場所や来院時間を分けています。連絡せずに待合室へ入るより、ほかの患者への感染を広げにくくなります。
薬局では、薬剤師に症状の経過と、現在飲んでいる薬を伝えてください。処方薬だけでなく、頭痛薬、花粉症薬、睡眠薬、サプリメントも含みます。市販薬には複数の成分が入った総合感冒薬も多く、同じ成分を重ねると過量服用につながることがあります。過量服用とは、必要な量を超えて薬を使うことです。
特に注意したいのは、解熱鎮痛薬を複数使う場面です。解熱鎮痛薬とは、熱と痛みを和らげる薬です。「昼に総合感冒薬を飲み、夜に別の頭痛薬を追加する」と、同じ成分が重なる場合があります。市販薬を選ぶ前に、商品名、成分名、服用時刻をスマートフォンのメモやお薬手帳に記録しましょう。お薬手帳は、使っている薬や副作用歴を記録する冊子・アプリです。
薬剤師は、年齢、妊娠・授乳の有無、持病、アレルギー歴、服用中の薬を踏まえ、市販薬を使えるか、受診を優先すべきかを一緒に整理できます。相互作用とは、薬どうしが影響し合い、効き目や副作用が変わることです。持病の薬を飲んでいる人ほど、「かぜ薬なら何でも同じ」と考えず、購入前に相談する意味があります。
のどが痛いと「抗菌薬があれば早く治る」と思うかもしれません。しかし、急性ののどの痛みすべてに抗菌薬が必要なわけではありません。抗菌薬は、A群溶血性レンサ球菌という細菌による咽頭炎が確認された場合などに使われます。慢性肺疾患や免疫不全のない健康な成人では、のどの症状からこの細菌感染が疑われる場合、迅速抗原検査や培養検査で確認した上で抗菌薬を使うことが推奨されています。[3]
迅速抗原検査とは、のどなどから採った検体で、特定の病原体の成分を短時間で調べる検査です。培養検査とは、採取した検体に含まれる細菌を増やして調べる方法です。見た目だけで細菌感染を断定することは難しいため、検査結果と診察所見を合わせて判断します。のど痛みに対する抗菌薬の利益は一律ではなく、系統的レビューでは症状全体の期間を平均約16時間短縮したと報告されています。[6]これは複数の試験をまとめた平均値であり、A群溶血性レンサ球菌の有無や患者背景によって利益は異なります。
抗インフルエンザ薬は、発症から48時間以内に開始すると、発熱期間を通常1~2日短縮し、鼻やのどからのウイルス排出量も減少するとされています。48時間を過ぎてから始めた場合は、十分な効果が期待できないとされています。[1]ただし、すべての人に必須の薬ではありません。高齢者、免疫不全者、小児など重症化リスクが高い人では重症化予防効果があるとされる一方、それ以外の人への重症化予防効果は限定的とされています。[1]48時間は受診を打ち切る期限ではなく、症状が強い人や悪化している人は、過ぎていても受診して治療の必要性を個別に判断します。
MogiMed編集部の見解では、薬局相談の価値は「市販薬を買うこと」だけではありません。発症時刻をもとに受診の緊急度を考え、重複しない薬を選び、危険な症状を確認することにあります。医師に聞けなかったことがあっても、薬剤師には「この薬を飲んだ後に熱が上がった」「家族に乳児がいる」といった生活上の不安まで具体的に伝えてください。



インフルエンザが疑われるときの受診目安
受診の目安は、体温が何度かだけでは決まりません。呼吸、水分、意識、症状の悪化、本人の重症化リスクを合わせて見ます。インフルエンザでは、高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど、具合が悪い場合は早めに医療機関を受診するよう案内されています。[1]
「少し息がしづらいけれど、熱のせいだろう」「呼びかけには答えるから大丈夫」と迷うことがあります。しかし、呼吸の苦しさや反応の鈍さは、自宅で薬を追加して様子を見るより先に相談したい症状です。 会話が続かないほどの息苦しさ、唇の色の異常、強い胸痛、呼びかけへの反応が鈍い状態は、薬局への相談より救急対応を優先し、直ちに救急要請を検討してください。緊急性が判断できない場合は、地域の救急相談窓口を利用します。
早めの受診を検討したいのは、急な高熱と強い全身症状があり、発症から48時間以内である場合です。抗インフルエンザ薬の効果は開始時期に影響されるためです。[1]ただし、48時間を過ぎたら相談してはいけないわけではありません。熱が下がらない、いったん軽くなった後に悪化した、呼吸症状が強くなった場合は、時間にかかわらず受診の必要性を考えます。
鼻や顔の痛みが続く場合も、経過が大切です。急性鼻副鼻腔炎では、症状が10日を超えて改善しない場合や、いったん良くなった後に悪化する場合は、細菌感染の可能性を考える目安になります。[13]これは診断を確定するものではありません。自己判断で抗菌薬を使うのではなく、症状が始まった日、良くなった時期、再び悪化した日を医師へ伝えてください。
子どもでは、大人よりも「飲めているか」「おしっこが出ているか」「普段どおりに反応するか」が重要です。高齢者では、高熱が目立たなくても、急に食べられない、動けない、受け答えがおかしいという形で悪化が表れることがあります。妊娠中の人、呼吸器や心臓の病気、糖尿病などがある人、免疫を抑える治療中の人も、症状が軽く見えても早めに主治医や医療機関へ連絡する方が安全です。
受診時には、症状の開始時刻、最高体温、せきやのどの痛みの程度、息苦しさ、水分と尿の量、使用した市販薬、周囲の流行状況を伝えます。情報がそろうと、医療者は検査や治療の必要性を判断しやすくなります。反対に、「熱がある」だけでは、発症からの時間や危険度をつかみにくいことがあります。
咽頭に異常所見のある4歳以上の患者を対象とした英国の試験では、抗菌薬をすぐ処方する方法、処方しない方法、症状が続いた場合に使用する方法の間で、3日目までに改善した割合や病気の期間に明確な差は認められませんでした。[8]この結果は、つらい症状を我慢すべきという意味ではありません。必要な検査と診察を受け、原因に合わない薬を急いで求めないことが、回復と薬の安全の両方に役立つということです。
臨床現場では、「受診するほどではないかもしれない」と我慢した結果、水分も取れず、夜になってから苦しくなる例が問題になります。救急性が高い症状がなければ、迷った段階で薬局や地域の相談窓口に連絡し、今ある症状を具体的に伝えてください。相談の段階で緊急性が低いと分かれば安心につながり、受診が必要なら早く動けます。
9月の発熱でも、季節だけを理由にインフルエンザを否定することはできません。急な高熱や強い全身症状は手がかりになりますが、症状だけで病名を確定することは困難です。休養と水分補給を行い、呼吸が苦しい、反応がおかしい、水分が取れない、症状が悪化するといった場合は早めに受診してください。MogiMed編集部の見解では、発症時刻、体温の経過、呼吸や水分の状態を記録しておくことが、安全な判断につながります。
- [1] 厚生労働省 (2026). 令和8年度夏期 急性呼吸器感染症(ARI)等への対策に関するQ&A——インフルエンザの特徴・かぜとの違い・抗インフルエンザ薬(厚生労働省). Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001715376.pdf (Accessed: 2026-09-15)
- [3] Harris A. et al. (2016). Appropriate Antibiotic Use for Acute Respiratory Tract Infection in Adults: Advice for High-Value Care From the American College of Physicians and the Centers for Disease Control and Prevention. Annals of Internal Medicine. Available from: https://doi.org/10.7326/m15-1840 (Accessed: 2026-09-15)
- [6] Spinks A. et al. (2013). Antibiotics for sore throat. The Cochrane Database of Systematic Reviews. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24190439/ (Accessed: 2026-09-15)
- [8] Little P. et al. (1997). Open randomised trial of prescribing strategies in managing sore throat. BMJ (Clinical Research Ed.). Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9116551/ (Accessed: 2026-09-15)
- [13] Anon J. et al. (2004). Antimicrobial treatment guidelines for acute bacterial rhinosinusitis. Otolaryngology--Head and Neck Surgery. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14726904/ (Accessed: 2026-09-15)










