
頭痛薬(NSAIDs)を飲むタイミング——空腹時服用の注意点と胃薬との併用
【結論】製品表示に従い、空腹時を避けるよう書かれた薬は軽食後などに飲む
食事は胃の不快感を和らげることがありますが、NSAIDsによる潰瘍や消化管出血を完全に防ぐものではありません。
- イブプロフェンなどのNSAIDsは、痛みを抑える一方で、胃粘膜を守るプロスタグランジンの働きにも影響します。
- 緊張型頭痛ではイブプロフェンは有効な選択肢ですが、胃腸出血や腎機能低下のリスクがある人では慎重な判断が必要です。[3]
- 胃薬を併用しても、NSAIDsの重ね飲み、用量超過、黒い便や吐血を放置することは避け、早めに医療者へ相談しましょう。
夜中に頭がズキズキして、何も食べていないまま頭痛薬を飲みたくなることはあるでしょう。しかし、「食後に飲む」という表示には理由があります。イブプロフェン、ロキソプロフェン、アスピリンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬。炎症や痛みを抑える薬)は、痛みを和らげる仕組みと同時に、胃を守る仕組みにも影響します。
空腹時に1回飲んだからといって、必ず胃潰瘍になるわけではありません。それでも、胃痛、むかつき、胸やけ、吐き気が起こりやすい人では、飲み方によって症状が強まることがあります。頭痛を早く止めたい気持ちと、胃をいたわることは両立できます。大切なのは、痛みの程度だけで薬を追加せず、「何を、いつ、どのくらい飲んだか」を確認することです。
空腹時のNSAIDsが胃に影響する理由
NSAIDsは、体内で作られるプロスタグランジン(胃の血流や粘液分泌などを保つ物質)を減らすことで、炎症や痛みを抑えます。けがや月経痛、頭痛に効く理由でもありますが、胃にとっては防御力を下げる方向に働くことがあります。
胃の内側は、胃酸だけでなく、粘液、血流、細胞の修復といった複数の仕組みで守られています。NSAIDsを使うと、この防御機能の一部が弱くなります。空腹時は胃の中に食べ物が少ないため、胃の不快感を自覚しやすくなることがあります。
食後や軽食後に飲むことで胃の不快感が軽くなる場合はありますが、食事を取れば潰瘍や消化管出血を防げるとは限りません。 食事で薬の吸収や効き始める時刻が遅くなることもあるため、製品の説明書や医師の指示を優先してください。
NSAIDsによる胃腸障害(胃や十二指腸の粘膜が傷つき、痛みや出血などが起こること)は、胃痛だけでは判断できません。症状がなくても潰瘍や出血が起こることがあります。黒い便、吐血、強い腹痛、ふらつきなどがあるときは、NSAIDsを追加せず、速やかに受診してください。
また、NSAIDsは胃だけに注意すればよい薬ではありません。腎臓の血流にも影響するため、脱水、腎機能低下、心不全などがある場合は慎重な判断が必要です。発熱、下痢、嘔吐で水分を取れていないときにNSAIDsを使うことも、自己判断では避けたい状況です。
頭痛には種類があります。緊張型頭痛(頭全体を締め付けられるように感じやすい頭痛)では、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどが使われます。成人の反復性緊張型頭痛を対象とした研究の統合解析では、アセトアミノフェンとイブプロフェンはいずれもプラセボより有効でしたが、両薬の効果に統計学的な明確な差は示されませんでした。[3]
一方、片頭痛(吐き気、光や音への敏感さを伴うことがある頭痛)では、薬を飲むタイミングや選ぶ薬が異なることがあります。頭痛薬を使った日を記録し、服用日数が増えている、以前より効きにくい、薬が切れるとまた痛む場合は、薬を増やす前に頭痛そのものを相談しましょう。
臨床現場では、「前に空腹で飲めたから今回も大丈夫」と考え、胃痛が出てからも服用を続ける場面があります。同じ薬でも、体調、飲酒、服用量、ほかの薬、年齢によって安全性は変わります。


頭痛がつらいときにできる服用タイミングと胃をいたわる工夫
頭痛薬は、痛みが強くなってから何度も追加するより、用法・用量の範囲内で適切な時点に使うことが基本です。ただし、「空腹だから我慢し続ける」必要が常にあるわけではありません。まずは製品の説明書を確認し、空腹時を避けるよう書かれている薬では、無理なく食べられるかを考えます。
吐き気が軽く、無理なく食べられる場合は、自分に合う軽食を少量取ってから服用する方法があります。 食べることで症状が悪化する場合や、繰り返し吐いて水分も取れない場合は、無理に食べて鎮痛薬を追加せず、医療機関へ相談してください。
たとえば、クラッカー、パン、バナナなどを少量取れる人もいるでしょう。ただし、食物アレルギーや乳糖不耐症がある人は、ヨーグルトなどを無理に選ぶ必要はありません。これは胃への影響をゼロにする方法ではなく、胃の不快感を減らすための一般的な工夫です。
服用時には、コップ1杯程度の水またはぬるま湯で飲みます。アルコールで飲むことや、寝る直前に少量の水で流し込むことは避けましょう。飲酒は胃粘膜への刺激を増やす可能性があり、脱水も起こりやすくなるためです。薬を飲んだ直後に横になると、薬が食道にとどまり、胸やけのような症状を感じることもあります。
緊張型頭痛に対する市販鎮痛薬として、イブプロフェンは選択肢の一つです。成人の反復性緊張型頭痛を対象としたネットワークメタ解析(複数の研究結果を統計的に比較する方法)では、2時間後に痛みがない人の割合について、イブプロフェン400mgはプラセボより高い結果でした。[10] ただし、この結果は成人の反復性緊張型頭痛に関するものであり、すべての頭痛、すべての用量、すべての人にそのまま当てはまるわけではありません。
鎮痛薬を選ぶときは、「よく効くか」だけでなく、「自分が使ってよいか」を先に考えます。胃潰瘍や十二指腸潰瘍になったことがある人、消化管出血を起こしたことがある人、腎臓病がある人、抗凝固薬(血を固まりにくくする薬)を使っている人は、NSAIDsを自己判断で始めたり続けたりしないほうが安全です。
- 同じ成分や同じ種類のNSAIDsを重ねて飲まない。
- かぜ薬、月経痛薬、腰痛薬にもNSAIDsが含まれることがあるため、成分欄を確認する。
- 箱や説明書に書かれた1回量、服用間隔、1日の上限を超えない。
とくに見落としやすいのは、商品名が違っても成分が重なることです。「頭痛薬を飲んだ後に、かぜ薬も飲んだ」「ロキソプロフェンが効かないのでイブプロフェンを追加した」といった飲み方は、NSAIDsの量を増やすことにつながります。効き目が不十分でも、別のNSAIDsを追加することは安全な対処とはいえません。
MogiMed編集部の見解では、頭痛がある日に食事が取れないなら、薬を飲むことだけを急ぐより、吐き気や脱水、頭痛の性質を一度整理するほうが重要です。突然起きたこれまでにない激しい頭痛、手足の麻痺、ろれつが回らない、意識がおかしい、けいれん、発熱と首の強いこわばりがある場合は、救急要請を含めて直ちに医療機関へ相談してください。
胃薬との併用は可能?薬局・薬剤師に相談したいケース
「胃薬も一緒に飲めば、空腹でもNSAIDsを飲んでよい」とは言い切れません。胃薬にはいくつかの種類があり、働き方も目的も異なります。胃酸を抑える薬、胃粘膜を保護する薬、胃の運動に関わる薬などがあり、どれを使うかは症状や危険因子によって変わります。
市販の胃薬は種類によって目的が異なり、どの胃薬でもNSAIDsによる潰瘍や消化管出血を予防できるわけではありません。 胃薬を併用していても、NSAIDsによる腎臓への影響や血圧上昇などを防ぐことはできません。
NSAIDsを継続して使う人の胃腸障害を防ぐ方法は、潰瘍歴、年齢、併用薬などを踏まえて医師が判断します。手元にある市販胃薬を自己判断で追加することとは別に考えましょう。胃薬は「鎮痛薬を多く飲んでも安全にする薬」ではありません。
アセトアミノフェンとNSAIDsを組み合わせた鎮痛については、術後痛などを対象とした研究で、単独使用より鎮痛効果が高いとする研究が多く報告されています。一方で、すべての場面で追加の利益があるわけではなく、併用は投与量の間違いを増やし、有害性が高まる可能性も指摘されています。[20] 市販薬で組み合わせる場合も、「違う種類だから安全」とは考えず、薬剤師に確認してください。
胃薬との併用を考える前に、すでに胃症状があるかを確認しましょう。胸やけ程度でも、NSAIDsを飲むたびに繰り返すなら、その薬が合っていない可能性があります。胃痛を我慢して続けるより、薬の変更や受診の必要性を相談するほうが安全です。
薬局では、頭痛薬の箱だけでなく、普段飲んでいる処方薬、お薬手帳、サプリメントも見せると判断しやすくなります。相互作用(薬どうしが影響し合い、効き目や副作用が変わること)は、本人が「胃薬」と思っていない薬でも起こり得ます。血液を固まりにくくする薬、ステロイド薬、降圧薬、利尿薬などを使っている場合は、特に確認が必要です。
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、消化管出血の経験がある。
- 黒い便、血を吐く、強い胃痛、息切れ、めまいがある。
- 腎臓病、心不全、高血圧があり、脱水時にもNSAIDsを使おうとしている。
- NSAIDsやアスピリンで、喘息発作、じんましん、呼吸困難が起きたことがある。
- 妊娠中、特に妊娠後半である、または妊娠の可能性がある。
- 頭痛薬を使う日が増え、以前より効きにくいと感じる。
これらは代表例であり、注意が必要な人をすべて示したものではありません。妊娠中は時期でNSAIDsの使い方が異なり、とくに妊娠後半は自己判断で使用しないことが大切です。授乳中も使える薬や飲み方は一律ではないため、医師または薬剤師に確認してください。
黒い便は、消化管からの出血で便が黒く見えることがあります。鉄剤や一部の食品で黒くなる場合もありますが、のり状・タール状の黒い便や吐血があれば、見た目だけで自己判断せず、NSAIDsの追加服用を止めて速やかに受診してください。
臨床現場では、胃薬を「胃の痛みが出てから飲む薬」と考える人も少なくありません。しかし、NSAIDsを継続して必要とする人では、胃腸障害の危険度をあらかじめ評価し、薬の選び方や胃を守る薬の必要性を医師が判断します。市販薬を短期間使う場合でも、症状が続くなら同じ考え方が必要です。
なお、頭痛薬を使った後に胃が痛くなった場合は、胃薬だけで対処してNSAIDsを続けるのではなく、いったん追加服用を止めて相談してください。痛みを抑えたいときに選択肢となる薬はありますが、アセトアミノフェンにも肝臓への負担など別の注意点があります。飲酒量が多い人、肝臓病がある人、ほかのアセトアミノフェン配合薬を使用中の人は、こちらも自己判断で増量してはいけません。
まとめ:頭痛薬は表示に従い、胃症状があれば早めに相談を
頭痛がつらいと、空腹かどうかを気にする余裕がなくなります。それでもNSAIDsは、痛みを抑える薬であると同時に、胃の防御機能に影響する薬です。空腹時を避けるよう書かれた製品では、無理なく食べられる場合に軽食後などに水で服用することを考えましょう。
食事や胃薬でNSAIDsによる潰瘍・出血を完全に防げるわけではないため、用法・用量を守り、重ね飲みをしないことが大切です。 食事ができないほど具合が悪い、胃痛や胸やけが毎回出る、黒い便や吐血がある、頭痛薬を使う日が増えている場合は、薬を追加する前に相談してください。
MogiMed編集部の見解では、頭痛薬は我慢の限界まで耐えてから飲む薬でも、効かないからと重ね飲みする薬でもありません。用法・用量を守り、自分の体調と持病に合う薬を選ぶことが大切です。頭痛薬(NSAIDs)を飲むタイミングに迷ったら、製品表示を確認し、空腹時の服用や胃症状に不安があれば薬局・薬剤師や医療機関へ早めに相談しましょう。
- [3] Alnasser A. et al. (2023). Paracetamol versus ibuprofen in treating episodic tension-type headache: a systematic review and network meta-analysis. Scientific Reports. Available from: https://doi.org/10.1038/s41598-023-48910-y (Accessed: 2026-07-27)
- [10] Xie R. et al. (2024). Efficacy and safety of simple analgesics for acute treatment of episodic tension-type headache in adults: a network meta-analysis. Annals of medicine. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38813682/ (Accessed: 2026-07-27)
- [20] Tena-Garitaonaindia M. et al. (2025). Pharmacological bases of combining nonsteroidal antiinflammatory drugs and paracetamol. Biomedicine & pharmacotherapy = Biomedecine & pharmacotherapie. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40306178/ (Accessed: 2026-07-27)








